osageインタビュー|変化を楽しんだ5年間を経て立つ、親密な4人の現在地 (2/3)

自分たちの曲を客観的に捉えることは大事

──ライブができず、4人でスタジオに入ることすらできない期間が続いたかと思いますが、その時期はどう過ごしていましたか?

山口 正直なところ、金廣はたぶんゲームしかしてないし、僕も家でラーメンを作っていたんですけど……(笑)。

田中 (笑)。でも制作のやり方が変わりましたね。今までは山口からデモをもらってからスタジオで実際に叩いて「こんな感じでやろう」と考えていたんですけど、一度自分のパートを打ち込んでからフレーズを考えるようになって。頭の中でイメージしているものと実際にできたものの違いを知ること、自分たちの曲を客観的に捉えることは大事なんだなと実感しました。

山口 それに、より時間をかけて1曲を作り込めるようになったよね。歌詞を書くときも、言葉の意味や漢字の表記を調べてみたり、そのうえでちょっと言い方を変えてみたりすることが増えて。言葉というものにより意識を向けられるようになりました。

クサマ あと、外出自粛期間中は、金廣とたなぴーと僕の3人で毎日夜中に4時間くらい電話していました。

──そんなに話が尽きなかったんですか?

クサマ 尽きなかったんですよね。そこがまた不思議だなーと思って。

田中 メンバーが1人減ったことで焦りもあったから、3人になったばかりの頃はバンドの空気が少し変わってしまったように感じていました。だけどクサマがサポートとして一緒に行動してくれるようになってから、いらない焦りがなくなっていったと自分たちでも感じていて。

金廣 クサマはベースの技術はもちろんあるんですけど、遠征中の車の中での空気感とか、そういうものも含めてosageにすごく合っていて。

田中 だから僕ら的には「入りたい」と言われたらいつでもOKみたいな、アクセスフリーの状態が続いていました。

山口 「いつ入ってくれるの?」みたいなことは話していたよね。

クサマ うん。さっき話していたように、osageは同じ学校の同級生で始まったバンドだから、ほかの人が入ってくることに抵抗があるみたいだというのは僕も知っていたんですけど、ある日ポロッと「クサマだったらいいと思っているよ」と言ってくれたんです。だけど「発表するんだったら、クアトロ(渋谷CLUB QUATTRO)みたいな大きなところで発表したいよね」とも言われていたので、「そっか」と思いながら時が経って。

ヒロクサマ(B, Cho)

ヒロクサマ(B, Cho)

イメージを打破していきたい

──そうして2021年9月の正式加入、ツアーファイナルの渋谷CLUB QUATTRO公演での発表に至るわけですね。今回の5週連続リリースがクサマさん加入後初のリリースとなりますが、結成5周年にちなんだ企画なんですよね。

田中 正確に言うと、外に向けてちゃんと活動するようになってから5年経ったという感じですね。

山口 ふわっと始まったバンドだから何周年というのを意識したことが全然なかったし、本当の結成日がいつなのか自分たちでもわかっていません(笑)。だけどせっかくだからこの1年間はいろいろな企画を打って動いていきたいなと思いまして。もともと曲はいろいろとできていて「どうやってリリースしようか」という段階だったので、「やったことのないことをやってみよう」ということで5週連続でリリースをすることに決めました。

金廣 お祭りみたいでいいよね。

田中 うん。1カ月間ずっとワクワクしていられるんじゃないかなって。

──その第1弾楽曲として、1月3日に「ニューロマンス」がリリースされましたね。今までのosageにはない曲調で、かなり新鮮味がありました。

山口 5周年のお祭りなので、イントロダクションはハッとするものじゃなければと。1曲目から「あ、osageっぽいな」という曲を出すのは誰しも予想できることだと思うので、「いかにそれを裏切るか」という考えで一番飛び道具的な曲を最初にリリースすることにしました。曲作り自体も「新しいことをやりたい」というところから始まっていて。僕らはオルタナが根底にあるので、ギターが全力で鳴っているような、ドライブ感のある音像が好きなんですけど、「一旦そこから離れて、ミッドテンポで横揺れの曲をやってみたいよね」という話を前々からしていたんです。

──「こんな曲もできますよ」というのをリスナーに提示したい、バンドを一面だけで捉えてほしくないという気持ちはありますか?

山口 ありますね。「osageってこうだよね」とひと言で言い切られちゃうとちょっと寂しい。「実はこんな一面もあるんですよ」と言いたいがために、今までも両A面シングルをリリースしたり、アルバムの中に突飛な曲を入れたりしてきました。自分たちのイメージを打破していきたいという気持ちは常にありますね。それは、バンドとして前に進んでいきたいというハングリー精神とは別のものなんですけど……。

──でも新しい曲調に挑戦すると、プレイヤーとしてそれぞれに求められることも増えてくると思うので、結果的にバンドとして前進することになるのでは?

山口 そうですね。「ニューロマンス」は打ち込みで作っていったんですけど、パラデータを出して、ドラムは全部たなぴーに打ち込みし直してもらって、そこからまた組み直して……というやりとりをしているうちに、僕ら自身すごく楽しくなってきて。街並みがどんどん広がっていくような、廃墟もあれば新しい建物も建っている異世界にどんどん入り込んでいくような感じがありました。

田中 そこからさらに、アレンジャーとして宮田‟レフティ”リョウさんに入っていただいたんです。「とはいえ、そんなに大きくは変わらないだろう」と思っていたんですけど、とんでもないアレンジが返ってきて。

山口 ベースとドラムはレコーディングでかなり苦しんでいたよね。

山口ケンタ(G, Vo)

山口ケンタ(G, Vo)

田中 自分では作らないようなフレージングがいっぱい入っていたので、相当苦しみました。シャワーを浴びているときもトイレに行っているときもずっと「どうしたら叩けるんだろう」と考えているような生活が2週間くらい続いて。

クサマ 遠征中、車で寝ていたときも夢の中で「ニューロマンス」の練習をしていました(笑)。だけどそれが苦だったかというと、そうではなかったんですよね。

田中 「ニューロマンス」に鍛え上げられたから、今はこの曲にすごく愛着があります。

クサマ それに、リョウさんはベーシストなので、戻ってきたアレンジを聴いたとき、自分のやりたかったことを汲み取ってもらえた感じがしてうれしかったんです。

──汲み取ってもらえた部分というのは?

クサマ 落ちサビのハイフレットで弾いている部分や、2番Aメロのウォーキングベースの部分ですね。そういうところを残してもらいつつ、全体的にカッコよくしてもらえました。

──ギターはどうですか? いろいろな音色を使っている印象がありましたが。

金廣 あ、実はそれ、ギターじゃないんですよ。バッキングは基本的に山口が考えているんですけど、それ以外に、オルガンやグロッケンを歪ませた音を宮田さんがオカズとして入れてくれて。僕らも「これギターで作っているのかな?」「え、違うんだ!」と驚いたくらいなので、みんなにもじっくり聴いてみてほしいですね。面白い感じになっていると思うので。