負けたらどのツラ下げてももクロと踊るんだよ

──ももクロは第一線で活躍しているグループとしての風格がやはりあって。一方のエビ中は、ファンの間でも言われているように、好戦的なグループではない。逆に、しゃちはガンガン行く。で、たこ虹はしゃちとも近いけど、どこか大らかなムードがある。ばっしょーについてはなんでしょうね。あの不思議な感じ……。

荒神　そうですね（笑）。でも出順によっては優勝できるんじゃないか、という期待をしてくれていたファンもいたみたいです。僕としては先輩グループに胸を借りるつもりで、1曲で終わってしまってもしょうがないかと思っていたし、本人たちにもそういう話はしていました。でも負けるつもりでは行かないぞ、と。いつもと同じ気持ちで歌ってこい！って言って送り出したんですよね。

──さらにS★スパイシー、ときめき♡宣伝部もちょっと毛色が違う。そして今までのスタダにはいなかったタイプの大所帯チーム、3B juniorがいて。この日の各グループの戦いぶりを見て、スタダのグループってこんなにバラエティ豊かになったんだとよくわかりました。中でも総勢26名の3B juniorは、ほかのグループと見せ方も違うだろうし、やっぱり特殊ですね。

佐藤守道　特殊ですよね。スターダストプロモーションがこれまで取り組んでこなかった大人数アイドルグループをやるとどうなるか？っていう（笑）。かつてはスターダスト芸能3部に所属する高校生までの女の子たちを、大きな枠組みで「3B junior」としていて、その名前を引き継ぐ形でグループとしてよりアイドル活動に特化した「3B junior」を立ち上げたんです。大人数での見せ方はすでにやり尽くされた感がある中で、何か新しい打ち出し方があるかなと思ってやっているわけですけど、ももクロをはじめとする、いわゆるスタダの王道路線とも違う感じでやりたいなと思って試行錯誤しているところですね。

──それぞれのグループの個性って、どういうところから生まれるものなんですか？

藤井　完全にマネージャーや担当者の個性が反映されているんだと思いますよ。例えばこのイベントのことで言うと、エビ中陣営ってスケジュールがすごく細かいんですよ。何時に会場に入って、何時にボイトレやって……って、全部書き出してそれをメンバーに見せるんですけど、その項目がどこよりも一番多い。なんかアホっぽいなって（笑）。

一同　あははは（笑）。

藤井　「こんなに細かく決めないとダメなんだ」って思われるのはイヤだったんですけど、自分が細かく提示したいタイプなんですよね（笑）。

佐藤　偉いですね。

藤井　それが偉いかどうかはわからないけど、僕らはそういう方法でやりたいと思ってるので。……そう、長谷川（ミネヒコ / チームしゃちほこマネージャー）さんの話なんですけど、1日目の最後、ももクロのウィニングソングの「Chai Maxx」で出演者全員ステージに出たじゃないですか。あれ、本番前は長谷川さん「メンバーを出したくない」って言ってましたから（笑）。

一同　そう、そう！

佐々木　ウィニングソングはどのチームにも優勝したとき用に準備してもらっていて。曲を選んでおいて、演出としてやりたいことあれば言ってくださいとリクエストをしていたんですよ。ももクロは「Chai Maxx」を用意していて、「『Chai Maxx』を歌うんだったらみんな出て来てほしい」っていう提案をしていたから、出演者にはステージに上がってほしいとお願いしてたんです。そしたら裏で長谷川さんが「うちは出したくない」って（笑）。

藤井　「負けたらどのツラ下げてももクロと踊るんだよ」って言ってね。それなのに、最後には結局自分から「出ちゃえ、出ちゃえ！ ももクロだけにおいしい思いさせんな」って全員ステージに出してた（笑）。

佐々木　PA卓で見てて「出ないって言ってたのにやっぱり出るんだ！」って思いましたから（笑）。

──長谷川さんの体育会系な雰囲気がしゃちにはモロに反映されているような気がしますし、本当に各チーム、色があるなあと。特典映像の舞台裏風景にもそれは見え隠れしていて面白いですよね。親の顔が見える感じ（笑）。

荒神　場の空気を読んだ上でのフットワークの軽さは川上さんと長谷川さんがズバ抜けてる気がする。僕とか藤井くんは、わりと守りに入るタイプだったりするんですよね。

藤井　長谷川さんはいつもそう。やったもん勝ちっていう。

佐藤　しっかり準備して決めてきたことをちゃんとやる人と、常にその場での最良の選択を探して動いてる人がいるんですよ。

──本当に、思った以上の真剣勝負だったんですね。「負けたくない」っていう気持ちが、どこのチームにもあるんだなあと。

荒神　それはあるでしょうね。

──特典映像には、バックステージで悔し涙を流しているグループの姿も収められていて。表だけではわからないドラマが凝縮されてましたね。

荒神　お客さんも、「シナリオはもう決められているんだろう」って思ってた人がほとんどだったらしいです。

マネージャーたちがメンバー以上にヒリヒリしてんな

──流れが読めないから、舞台演出は相当大変だったと思うのですが。

佐々木　新しいものを作り上げるときっていうのは、常にストレスがあって胃が痛くなりますね（笑）。特に今回は、結果がどう転ぶのかわからなかった。演者もマネジメントサイドも、どこまでヒリヒリとした感じを出してくれるのか？ということもあったし、現場でジャッジしてくれるお客さんに関しても、自分がひいきにしているグループの雌雄が決するわけで、そこでどうこの戦いに乗ってくれるか。出る側と観る側、どちらの出方も読めなかったんですよ。ハマれば大きくスウィングするけど、ハマらなかったらヤバいなあと。本当に不安でした。ここ最近の出来事で一番不安だったかも。

佐藤　格闘技の演出とも違いますもんね。

佐々木　そう。それに、シナリオはないんだけどショーとしては成立させなきゃならないから、「こうなった場合のこの手、ああなった場合のあの手」っていういろんな想定をしておくわけだけど、それがキツかったですね。さっき話したラストの「Chai Maxx」も無事に終わったからよかったけど、読めないものが多すぎた。それに、裏でマネージャーたちがメンバー以上に真剣になってヒリヒリしてんなっていうのが伝わってきたから、彼らの気持ちを台無しにしないようにこっちもしっかりやらなきゃなあと。

──そのバチバチ感っていうのは、実際にあったんですか？

藤井　でもこれって、俺と長谷川さんだけじゃない？（笑）

一同　あはははは！（笑）

藤井　お互い言わないけど、そういうのが透けて見えるからさ（笑）。でも長谷川さんは余裕そうなオーラを出すんですよ。