音楽ナタリー Power Push - 大森靖子×福岡晃子(チャットモンチー)対談

一つの故郷、二つの女心

ふるさとは遠きにありて思ふもの

──お2人とも上京して10年目だそうですが、東京に対してどんな思いを抱いていたんでしょうか。

大森 私はホントに「あまちゃん」に出てくるユイちゃんみたいな人間でしたよ。東京に行けばどうにかなる、みたいな。リリー・フランキーさんの「東京タワー」も当時流行ってたんで。

福岡 私も漠然と東京に来ないと話にならんってずっと思ってましたね。今の人だったら自分でCD出したり発信したりできるのでそんなことないと思うんですけどね。

左から大森靖子、福岡晃子(チャットモンチー)。

大森 東京って、なんかもう異国みたいなんですよね。東京近郊の人が持ってる執着とは全然違う。なんてったって四国は島ですから。

福岡 それ、すごくわかる。愛媛とか徳島でピンク色の服なんて、おばあちゃんになんか言われるもんね。

大森 確実に言われますね。「どうなっとんねーこれ」って(笑)。この間おばあちゃんの家に行ったらアイシャドウ見て「ゴミついとるでー」ってこすられました。

──大森さんもチャットモンチーも「東京にいる自分」を題材にして楽曲を歌ってますよね。

大森 私の場合は、チャットモンチーさんも含めてみんな東京の曲を作ってるから、「とりあえずロックする上で東京のことは歌わなければならない」みたいな気持ちからです。

──ああ、そういう感じなんですね。

福岡 実は私たちは全然作ろうと思ってなかったんですけど、ディレクターに「絶対今しか書けない歌詞になると思うから、上京した気持ちを書いてみなよ」って言われたんですよ。それをきっかけにできあがった内容(「東京ハチミツオーケストラ」)は、確かに今じゃ絶対に書けないものでしたね。あのとき書いてよかったなって思います。

全部いい

福岡 シングル、すごくよかったです。

大森 ありがとうございます。

──「マジックミラー」は自分の音楽を聴いてくれる人、リスナーと向き合った内容の曲ですよね。

大森 あー、これは自分が作ってきた“大森靖子”とそのリスナーっていうのがあって、「“大森靖子”にこれを歌わせたらみんなが幸せになれるな」っていうのを考えて作ったもので。そこへさらに売れる曲って要素も考えたら構成がぐちゃぐちゃになっちゃったんですよ(笑)。テクニカルなものを完全にはめる部分と完全に無視する部分、その2つをつなげるための部分とかが混在した、かなりおかしいことなっちゃったので「これどうにかしてください」って直枝(政広)さんに言った曲です(笑)。

福岡 ははは(笑)。

大森 今までライブはこう、音源はこうみたいに振っちゃってたのを全部やろうってがんばりました。

福岡 ミュージックビデオも観て、なんかいいなって思ったんですよ。あれゲリラ的にやったんですか?

大森 はい。さっき話したラブホの映画のラストに、新宿アルタ前で絶叫しながらアコギ弾いてるのに誰も聴いてないってシーンがあって、その部分が大好きだからそういう罰ゲーム的なことをさせてくれって監督に伝えてこうなりました。

福岡 「おおっ!?」て感じで観てました。シングル3曲ともよかったです。「さっちゃんのセクシーカレー」も「豚バラ」のくだりとか面白いって思って(笑)。

大森 ふふふ(笑)。

福岡 私には書けないからうらやましいって思う歌詞の表現がいっぱいある。直感的に作った部分がありそうで、でも実はそれもちゃんと考えた上でやってるんだなっていう。大森さんのそういうところも好きですね。

大森 ありがとうございます。歌詞をテクニカルに作ると使える日本語がすごく減るんですよ。この音を出すんだったらこの言葉で、とか決まりごとがたくさん出てきてしまうんで。それに当てはめようとすると自分の表現の幅が狭まるから無視してます。でも、ホントは売れるためにそこもバランスよくやらないといけないんだろうなって(笑)。難しいですね。

福岡 「カレー出てきた!」って思って。

左から大森靖子、福岡晃子(チャットモンチー)。

大森 これは“食べ物の曲”なんです。SMAPの「セロリ」とかaikoの「アスパラ」とか、ああいうノリにしてくれって編曲の人に頼んで作りました。

福岡 えーすごい。私、曲を聴いて広末涼子さんみたいな感じがするなって思いました。

大森 広末さん、高知……四国つながりですね(笑)。

大森靖子 ニューシングル「マジックミラー / さっちゃんのセクシーカレー」2015年7月15日発売 / avex trax
CD+DVD 3780円 / AVCD-83266/B
CD 1080円 / AVCD-83267
CD収録曲
  1. マジックミラー
  2. さっちゃんのセクシーカレー
  3. 私は悪くない
DVD収録内容
  • 大森靖子全国ツアー「♥爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー♥」全会場ライブ映像集
  • 「マジックミラー」Music Video
  • 「マジックミラー」Music Video(大森靖子新宿降臨ソロバージョン)
チャットモンチー アルバム「共鳴」2015年5月13日発売 / Ki/oon Music
「共鳴」
初回限定盤 [CD+DVD] 3672円 / KSCL-2610~1
通常盤 [CD] 3132円 / KSCL-2612
大森靖子(オオモリセイコ)
大森靖子

愛媛生まれのシンガーソングライター。弾き語りスタイルでの激情的な歌が耳の早い音楽ファンの間で話題を集め、2013年3月に1stフルアルバム「魔法が使えないなら死にたい」発表後、同年5月に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを実施。レーベルや事務所に所属しないままチケットをソールドアウトさせ大成功に収める。その後12月に2ndフルアルバム「絶対少女」をリリース。このツアーの最終公演を東京・LIQUIDROOMにて実施した。2014年9月にエイベックスからメジャーデビューし、同年12月にメジャー1stアルバム「洗脳」をリリース。2015年には大森靖子&THEピンクトカレフ名義でアルバム「トカレフ」をリリースし、同バンドを5月に解散させる。7月にはメジャー2ndシングル「マジックミラー / さっちゃんのセクシーカレー」を発表する。

チャットモンチー
チャットモンチー

2000年4月、橋本絵莉子を中心に徳島で結成。2002年3月、橋本の高校の同級生だった福岡晃子が、翌2004年4月に福岡の大学でサークルの先輩だった高橋久美子が加入し、以降はこの3人体制で地元徳島を中心に活動する。2005年11月、ミニアルバム「chatmonchy has come」でメジャーデビュー。2006年1月には初のフルアルバム「耳鳴り」をリリースした。2008年春、初の日本武道館ワンマンライブを2日間にわたって開催。その後も精力的な活動を繰り広げるが、2011年9月の徳島でのライブを最後に高橋が脱退。その後は橋本と福岡の2人体制で活動を継続する。そして2012年2月には初のベストアルバム「チャットモンチー BEST ~2005-2011~」を、同年10月にはフルアルバム「変身」をリリース。2015年5月にはニューアルバム「共鳴」を発表した。10月にライブハウスツアー「男女6人6ヶ所巡り」、11月11日のデビュー10周年記念日に東京・日本武道館公演「チャットモンチーのすごい10周年 in 日本武道館!!!!」を開催予定。2016年2月には地元徳島にて2DAYSイベント「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2016~みな、おいでなしてよ!~」を実施する。