「ONE in a Billion」特集|審査委員長・清水翔太が語る 新時代のオーディションと参加者への向き合い方

すべての苦しみが成仏する瞬間

──オーディションのテーマが「新時代のエンタテインメントグループ」ですけど、この“新時代”というキーワードを翔太さんはどのように解釈されてますか?

常に「若い人たちの発想やクリエイティブが時代を作る」と言い続けているし、ずっと思い続けているので……僕はもうそれを言葉にできないんですよね。彼らが僕にできない発想であったり、僕にできないクリエイティブをするプロフェッショナルとして一人前になったときに「新時代のグループ」とは何かわかるんじゃないんですかね。あくまで僕は、その子たちにそれができるかできないかを一生懸命見抜こうとするだけです。

──グループを結成することはゴールでもあり、始まりでもありますよね。今後、「ワンビリ」から生まれたグループがどうなっていくことが成功なのでしょうか。

清水翔太

コロナでみんながしんどい思いをしているこの時代に、彼ら彼女らが作り出すもの、演じるもの、表現しようとするものが微かでもいいから、国民に元気や光を与えること。それがなるべく大きな規模でできれば成功ですよね。

──去年の11月、翔太さんの武道館公演(「SHOTA SHIMIZU BUDOKAN LIVE 2020」)を観たときに、それこそ今お話しされた希望や光を感じたんですよ。それが何かを自分の中で言語化できていないんですけど、ご本人は何が要因だと思いますか?

僕がたくさん苦しんできたし、苦しむ職種だからかなと思います。孤独や理解されない苦しみ、制作の生みの苦しみなどが、ステージで歌うことによってすべて成仏する。その瞬間がライブなんです。例えば、アルバムだったら1年くらいかけてずっと苦しんで作るわけで、それをステージに立って歌う瞬間にバーンってすべて浄化されるっていう、溜めて溜めて放つことに輝きがあるんだと思います。ライブ自体は2時間とか3時間のものじゃないですか。1年溜めた思いを、その限られた時間の中で全部成仏させるわけだから、花火みたいなものなんですよね。一生懸命、時間をかけてアルバムを作るけど打ち上げるのは一瞬。そういう輝きと儚さが人は好きだと思うんです。

──苦労に苦労を重ねて、やっと形になるのは一瞬。でも、その一瞬にすべてが詰まっている、と。

音楽だけに限らないと思うんですよ。例えばサーカスだって血の滲むような努力や怪我や死のリスクと向き合って、ステージではその苦労を一切見せずにすごいパフォーマンスを見せるところに輝きがあるはずで。すべてのエンタテインメントは、長い鍛錬の時間や、クリエイティブの悩みや迷いを経た結果、輝くステージがある。総じてそういうものですよね。というか、エンタメに限らず華やかな場所って全部そうじゃないですか? ごはん屋さんにしたって、人気があって評価されているお店は下準備から時間をかけていたり、食材を集める時点から戦争があったりとか、そういうのを全部苦しんで勝ち抜いて、やっと出てくるのが一級料理だったりするわけで。そこに輝きが詰まっているんですよね。

──「ワンビリ」での翔太さんの発言1つひとつが今の話につながりますね。

そうなんですよね。その覚悟があるのか?ってことを僕は直接的に言わないまでも、オーディションに参加している人たちには常に問いかけているつもりでいます。だから僕がしゃべっているときや参加している人たちがしゃべっているときにも、常に目の奥に「その覚悟があるのか」を見ていますね。

仲良しこよしでやっていける世界ではない

──今回の「ワンビリ」を通して、翔太さん自身が気付いたことはありますか?

一番感じたのは「水曜日のダウンタウン」のクロちゃんはすごいなって(笑)。

──アイドルグループを作るということで、安田大サーカスのクロちゃんがプロデューサーを務めた「MONSTER IDOL」のことですよね。でも、どうして?

清水翔太

あんなふうに厳しくできないですね、やっぱり。どうしても優しくしちゃうし、いい人でいたくなっちゃいます。若い子たちを育成するという意味でもそうだし、初めて長い時間をかけて見守ってきたんですけど、思っていたよりもかわいく思えてくるというか。僕は、番組が始まる前のインタビューで「嫌われる覚悟をがんばってしている途中です」という発言をしたんです。なぜ、そんな発言をしたのかというと、あくまで僕は番組のために審査委員長という立場を引き受けた。話を受けたときはオーディションに参加する子たちのクオリティも顔も何も知らないので、あくまで「アーティスト・清水翔太がオーディションをやる」ということで少しでも興味を持つ人がいたり、「どういうふうに審査をするんだろう」と面白がってもらえたりする中で、番組として少しでも面白くなればという気持ちがありました。なので、番組のエンタメ性を考えたときにめっちゃ怒ったりするべきだなと思ったんですよね。

──番組としての見せ場を作ると。

それこそナメているやつがいたら、即帰らせるとか自分が帰っちゃうとか、それぐらいのことをしたほうが観ている側は面白いじゃないですか。ただ、それをすると「なんだよ、あの人」と思われるわけで。そういう意味で、審査は参加者からも視聴者からも嫌われる覚悟がないとできないことだから、「番組のために嫌われる覚悟をするつもり」という意味で言ったんです。だけど、実際にオーディションをやってみると、みんながかわいくなってきちゃって。嫌われるようなことができなくなってくるんですよ。それを考えると、あれだけ無茶苦茶できるクロちゃんってすごいんだなと。それこそ「アメリカズ・ゴット・タレント」のサイモンもそうだし、かつていろんなオーディションや素人さんが参加するような番組で嫌われ役を演じてきた人たちはすごいなと思いましたね。僕にはできなかったです(笑)。

──イチから審査をしていたら、参加者に愛着が湧くのは当然ですよ。

というか、あんまり問題児がいないんですよね。みんな素直でいい子ばかりなんですよ。……でもまあ、それはある意味であの子たちのいいところでもあり弱点でもあると思っているんですけど。この業界は恐ろしい世界ですから、他人を蹴落としてでも自分が前に出ようとする精神やハングリーさも必要なんです。仲良しこよしだけでやっていける世界ではない。個人的に言えば、あの子たちにはいつまでも純粋な絆や思いを大事にしていてほしいと思う反面、「それじゃ食い殺されるぞ」という気持ちもある。でも、そういう部分に関して僕は見守るだけなので、これからどう変わっていくのか楽しみです。

清水翔太

清水翔太ライブ情報

「Family Fes 2020 "Shota Shimizu Birthday" 延期公演」
  • 2021年8月18日(水)大阪府 Zepp Namba
  • 2021年8月19日(木)大阪府 Zepp Namba
  • 2021年8月20日(金)大阪府 Zepp Namba

<出演者>
清水翔太 / 加藤ミリヤ / 青山テルマ / 當山みれい

「Family Fes 2021 追加公演」
  • 2021年8月25日(水)東京都 Zepp Tokyo
  • 2021年8月26日(木)東京都 Zepp Tokyo

<出演者>
清水翔太 / 加藤ミリヤ / 青山テルマ / 當山みれい

※8月26日公演の模様はTikTokにて独占配信

清水翔太(シミズショウタ)
清水翔太
1989年生まれ。作詞、作曲、アレンジまでを手がけるシンガーソングライター。地元大阪のスクールで学び、ソウルミュージックに魅せられたことをきっかけに、感情豊かな歌唱からラップまで幅広くこなすマルチな才能を発揮する。2008年にシングル「HOME」でデビュー。2016年にリリースした楽曲「My Boo」がサブスクリプションを中心に若年層にヒットを記録する。2017年にアルバム「FLY」、翌2018年にアルバム「WHITE」を発表。2019年1月には、V6のシングル「Super Powers / Right Now」に恋愛ソング「Right Now」を提供した。2020年11月にキャリア初のミニアルバム「period」を発表。2021年7月に9枚目のオリジナルアルバム「HOPE」をリリースした。