「ワンス・アポン・ア・塊魂」特集|個性全開の「素敵ソング」解説&クリエイターコメント (2/2)

「ワンス・アポン・ア・塊魂」音楽クリエイターコメント

──「塊魂」はインストのBGMではなく、洗練された歌モノのJ-POPに乗せて遊べることが2004年の初代発売当時大きな話題になりました。そのスタイルは最新作まで継承されていますが、「ワンス・アポン・ア・塊魂」の音楽はどのように作られたのでしょうか。

みすみゆり 今作の音楽に関わる初動の流れからお伝えさせていただくと、プロデューサーの佐竹伸也くん(「ワンス・アポン・ア・塊魂」のチーフプロデューサー)から、みすみにオファーをいただきました。

お話を伺ったうえで、まずは佐竹くんからBNS(バンダイナムコスタジオ)さん経由で矢野に加わってもらって打合せを始めていきました。

今作は、初代からの世界観はそのままに、世界各地で時代を超えてタイムスリップ!という構成がテーマにありましたし、初代~「みんな大好き塊魂」の方向性で原点回帰しつつ……という総意もあったので、やっぱり三宅にはいてもらわないといけない!と思い、オファーしました。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

みすみゆり 作品の全体像として、初代以来のファンの方々から、初めて知って遊んでくださる方々まで、まさに世界各国世代を超えて楽しんでいただけるように、令和というか今ドキな空気感も存分にまとうべく再構築するコンセプトで話し合いを重ねました。

三宅いわく「全編にわたって歌モノを、ゲーム中に流すというのは、ある意味禁じ手。なので、人によっては不要に思う人もいるかも知れません。でもいい曲だからいいか!(^^)と思ってもらうために、洗練されたものである必要がある、というのは歴代のコンセプトとして存在するのかもしれません」というように、音楽制作の根本の方針自体は終始一貫していたと思います。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

──その楽曲の魅力はもちろん、歌唱アーティストの顔ぶれも毎シリーズ驚かされます。人選の基準はどのように考えているのでしょうか。音楽制作において「必ずこうする」「これはやらない」といった明確なルールがありましたら教えてください。

みすみゆり アーティストさんを選び始めるときは、非現実的でもスケッチ的に壮大なところから攻めていきます。今回も、とある国の大統領が候補に挙がったりしました。

冗談はさておき、各所の若い世代や、BNE海外支社の方々など、いろいろな方面にヒアリングして、参考にしたりもしました。

そうこうしながら、実装したい音楽を私たち3人でまずは闇雲に案を出し合って列挙していきます。同時に、歌ってほしいアーティストさんも並べていきます。

そんなブレストを重ねて、三宅に、楽曲の方向性を16タイプ設定してもらいました。例えば、男性か女性か、声の太さ、歌い方の方向性、訛り可能かなど、なるべくバラけるように、バリエーション豊かなボーカルをちりばめるべく、絞り、固めていき、16タイプそれぞれの枠に対し複数名アーティストを当てて音楽プランを作っていってもらいました。これらの作業は塊魂の音楽にとって最も重要なステップで、三宅は丁寧に時間をかけて練りに練ってくれました。それらを経ながら、順に実際にアーティストさんに依頼をかけていきます。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

「ワンス・アポン・ア・塊魂」アナウンスメントトレイラーより。

「ワンス・アポン・ア・塊魂」アナウンスメントトレイラーより。

みすみゆり 一方、並行して決めていった各作曲家たちには、できること、得意なこと、やりたいことをヒアリングしておき、三宅とでそれぞれ話し合って、今このゲームで、どういう方向性で、どのアーティストさんならうまくハネるかを考えて、プランをさらに細かく形作っていきます。

三宅の中では、担当する作曲家とジャンルの決定は、なるべくそのままアーティストさんのモチベーションに影響するように設計する、という意図があります。

基本的には、こちらで音楽プランを固めて進行する方もいましたが、アーティストさんによっては、発注の際に、この作曲家でこんな方向性ではいかがですか?というアプローチで依頼をかけていくケースもありました。

目標では14タイプいけたら満点という想定でしたが、結果、14組のボーカリストの起用に至ることができました(祝)。

「ワンス・アポン・ア・塊魂」素敵ソングMV、こっちのけんと「ええじゃええじゃないか」より。

「ワンス・アポン・ア・塊魂」素敵ソングMV、こっちのけんと「ええじゃええじゃないか」より。

「ワンス・アポン・ア・塊魂」素敵ソングMV、こっちのけんと「ええじゃええじゃないか」より。

「ワンス・アポン・ア・塊魂」素敵ソングMV、こっちのけんと「ええじゃええじゃないか」より。

──最新作「ワンス・アポン・ア・塊魂」の歌唱アーティスト一覧を見たときの第一印象は「うわ、塊魂っぽい!」でした。驚きもありつつなぜか納得できる人選、ジャンルの幅広さ、新人のフックアップ……その「塊魂らしさ」を制作陣の皆様はどのように考えていますか? もし明確に「塊魂の音楽は◯◯である」という明確な指針があれば教えてください。

みすみゆり そう感じていただけたならとてもうれしいです。塊魂で歌っていただきたいアーティストさんは、ご自身のスタイルが確固としてあって、生まれ変わっても絶対またその人にしかなり得ないような「強烈」な方をイメージしています。かつ、ユーモアにあふれていそうな方。それらは、作曲家陣にも共通しているかも。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

みすみゆり 三宅いわくですが、「初代からは20年も経っていますから、昔からのファンも、若いファンも、世代を超えたファン層がいると思います。ですので、双方が納得するような人選を心がけました。苦労する場面ももちろんありましたが、最終的には想定したゴールに到達したと思っています。人選や内容に、音楽的な何かを可能な限り入れる、ということは私たちの特色だとは思うのですが、ひょっとしたらそれ自体が『塊らしさ』になっているのかもしれません」。

また、今回サウンド実装も担当してくれた矢野は「いい化学変化が起きる、尊敬するアーティストさんという指針で動いておりました。ゲームを遊んでいて楽しくなり、感情豊かに揺さぶられるといいと思ったからです」というように、音楽を多面的に捉えて演出につなげる、というマインドが共通認識であるのかもしれません。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

──「ワンス・アポン・ア・塊魂」の楽曲制作で意識したことは? 制作中の興味深いエピソードがあれば教えてください。

みすみゆり 今回は本編中の歌もの楽曲のみならず、インスト楽曲の拡充も行いました。今作のタイムスリップ仕様に寄り沿って、その時代ごと・背景に合わせた音楽をインスト楽曲として7曲制作し演出しました。

三宅いわく「歌が強すぎて気が散ってしまうとき(笑)はこちらを選んでいただけたら、また違った雰囲気が味わえると思います」とのこと^^/。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

みすみゆり また、塊魂は歴代、本編中以外のシステム系BGMの充実ぶりも魅力なのですが、今作のそれら一連枠のディレクションを務めてくれたShogo Nomuraくんからコメントを預かっています。

「『塊魂』らしい『ちょっと変わっているけど、それがいい!』という不思議な魅力の要因の1つとして、各クリエイターの好きなことや興味のあること(音色だったり、リズムや和声の響きだったり……)を突き詰めた先に生まれる(いい意味での)洗練された歪さがあると思いました。ですので、楽曲制作時にはステージの仕様をクリアしたうえで、各々の得意分野を追求してもらう形でディレクションを行いました。結果として、歌唱楽曲とはまた違った魅力のある、塊魂らしい濃い楽曲が集まったと思います」

このように、歌もの楽曲とはひと味違った、独特な雰囲気の香るこだわりの曲たちになっていますので、聴きながら時空をも超える世界旅行気分も楽しんでもらえたらいいなと思っています。

そして、多くの曲で、国内外にわたりたくさんの凄腕ミュージシャンたちに演奏していただきました。ということは、素晴らしいレコーディングをしてくださったエンジニアさんたちの力も絶大なわけですが、魅惑の歌唱とともに、彼らの生命力あふれる色彩豊かな演奏もじっくり聴いていただけたらとても嬉しいです。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

ゲーム「ワンス・アポン・ア・塊魂」より。

──クリエイターから見た「ワンス・アポン・ア・塊魂」の注目ポイントを教えてください。

三宅優 ほかにも未発表の要素があります。頃合いを見て発表されると思いますので、お楽しみに!

Shogo Nomura 「ワンス・アポン・ア・塊魂」では、任意の楽曲をプレイリストに追加できる機能があるので、ぜひお気に入りの楽曲を見つけて楽しんでいただけたらと思います。

矢野義人 ゲーム中の叫び声や笑い声など、140人以上のバンダイナムコ社員が参加し、実演しています。さまざまな面白い声を楽しむことができます。歌唱アーティストさんも数名実演しているので、声を聴いて予想してみると楽しいですよ。

みすみゆり 初代から作り方も一変しました。当時の仲間が集結しつつ新しい息吹も吹き込まれ、文字通り新旧入り乱れまくりました^^。それでもやっぱり「塊魂」になった!と自信を持って言える作品です。

「『ワンス・アポン・ア・塊魂』オリジナルサウンドトラック‐かたまりのまにまに」パッケージの全体像。

「『ワンス・アポン・ア・塊魂』オリジナルサウンドトラック‐かたまりのまにまに」パッケージの全体像。

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