私を作るのは私でしかない
──5曲目の「きらきらきら」は、以前にもコラボしたことのあるいきものがかりの水野良樹さんが作詞・作曲したラブソングですね。
サビで始まり、ドラマチックに展開していきながら切なく終わる流れは水野さんっぽいですよね。実はこの曲、2017年に水野さんに作っていただいた「さよなら」のタイミングでいただいていたものなんです。最初のイメージではもうちょっとかわいい曲になるのかなと思ってたんですけど、このタイミングで新たに歌詞が付いたことでとても壮大なラブソングになりました。すごく好きな曲ですね。
──この曲で描かれている大きな愛は、24歳になった大原さんだからこそ説得力を持って伝えられるものだと思いました。
そう受け取っていただけたらうれしいです。水野さんは私の声質をちゃんと理解したうえで作ってくださっているのですごく歌いやすいんですよね。儚さを感じさせつつ、でもまっすぐに感情を込めて歌うことができたと思います。
──「きらきらきら」から次の「コントラスト」へつながる流れも素敵でした。作詞を永山マキさん、作曲を川口大輔さんが手がけたバラードです。
これはピアノと歌のみの曲ですね。歌詞に関しては、「目に見えない何かを歌った曲にしたいです」というオーダーをさせていただきました。結果、誰しもの心の中にある光と影を描いた歌詞にしてくださいました。光と影、そのコントラストによって私たちは生かされているんだよという。サウンドも含め、普遍的なバラードになったと思います。ちなみに初回限定盤Aに付くDVDには、ピアノと一緒に「せーの」で録った映像も収録されているので、そちらもぜひ観ていただけたらうれしいです。
──今回のアルバムには「私は私」というキーワードがたくさんちりばめられていますよね。「コントラスト」にも「私は私」というフレーズがありますし、ズバリ「I am I」という曲もありますし。
意図的ではなく偶然だとは思うんです。でも、今の自分はそういうことを思っているのかもしれないなって、アルバムが完成してみて思ったりはしました。私にできることは私にしかできない、だから何をするにも他人を頼らず自分でやれという(笑)。
──戒め的な。
そうそう(笑)。私を作るのは私でしかないわけですからね。そういう思いは今、すごく強いのかもしれないです。
──その裏には、ここまで大原櫻子として活動したことで自分らしさが明確になったことも影響しているのでは? 「私は私なんだ」と言い切れるようになったというか
んー、そこに関してはまだ言い切れる感じではないかなあ。でも自分を守るのは自分しかないというのはすごく思います。別に何かがあってそう思うようになったわけではないんですけど、なんとなくそういう気持ちになっているかも。それをすくい取っていただいたことで、歌詞にそういうフレーズがたくさん出てきたのかもしれないですね。
ドキッとしてくれたら
──10曲目の「By Your Side」は大原さんにとって初のハワイアンソングです。こちらも歌詞は永山さんですね。
もともと、「のり巻きおにぎり」や「いとしのギーモ」のようなちょっとコミカルなものをまた作ろうと思ってたんですよ。そうしたら、ものすごくいい曲ができちゃったっていう(笑)。なので笑える系ではない歌詞を永山さんにお願いして。恋愛を描いた内容ではあるけど、そこまでラブソングラブソングしていない世界観がすごく気に入ってますね。ハワイアンはメロディが上がったり下がったりけっこう動くから、歌うのはなかなか大変でした。
──そしてアルバムラストには問題作とも言える「電話出て」が。一青窈さんが作詞を手がけたシリアスな1曲ですね。
今までここまでシリアスな曲はなかったですね。一青さんとは一度お会いして、今の私が思っていることとか最近聴いている音楽のことなんかをお話しさせていただきました。そこで話したことがそのまんま反映されているところはほとんどないんですけど、でも出会いと別れ、人間同士の距離感みたいな部分への私の思いは全体的に込めてくださったと思います。
──聴き手の胸に鋭く突き刺さってくる歌声も今までになかったものだなと。
歌はね、ものすごくエネルギーが必要とされましたけど(笑)、でも誰にも経験があるような気持ちを描いた曲になったので、不思議と歌いにくさはなかったです。情熱的なニュアンスを本気で出そうとがんばったので、これがどんな印象で皆さんに届くのが楽しみです。ドキッとしてくれたらいいですね(笑)。
──本作のリリース後、5月にはミュージカル「ミス・サイゴン」の上演が始まりますね。
はい。「ミス・サイゴン」は私にとってかなり大きな舞台になると思うので、今は不安しかない感じ(笑)。でも思い入れの強い作品だし、それを乗り越えたときには音楽的なスキルもきっとさらに上がることになるんだろうなと期待しています。今回のアルバム「Passion」にはノリのいい曲、ダンスしたくなる曲をたくさん詰め込むこともできたので、ライブをやりたい気持ちも高まっていますが……今は目の前のミュージカルに全力を注ぎたいと思います!