小倉唯|みんなと心でつながりたい、愛とこだわりが詰まったライブを解説

小倉唯 LIVE 2021
#Re♥LOVEcall

愛情を再確認するようなライブにしたい

──今年の7月にパシフィコ横浜で開催された有観客ライブ「#Re♥LOVEcall」は、「LOVE」をテーマにした、キュートでラブリーな世界観が詰まった公演でした。もともと小倉さんは2020年5月、6月にライブツアー「LIVE TOUR 2020『#LOVEcall』」を行う予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響でツアーが中止になってしまったという背景があって……。

そうなんです。それもあって、今回は「#Re♥LOVEcall」という形にして、改めて「LOVE」の世界観を表現しようということになりました。

──小倉さんだからこそ作れる世界観を突き詰めた、原点回帰感のあるライブだったような印象を受けました。1つ前のライブツアー「小倉唯 LIVE TOUR 2019『Step Apple』」が「白く咲く花」でしなやかに始まるようなライブだったので、そこからのギャップみたいなものもあって。

確かに、そういった意味では原点回帰感がありましたね。今回はとにかく甘くかわいく、みんなにキュンとしてもらうライブを目指していました。衣装もそうですが、セットリストや舞台セットまで、とにかく甘々な世界観になっています。ここまでかわいらしいコンセプトに振り切って愛を伝えるライブって、今までに意外となかったんですよね。

──2020年に行われるはずだった「#LOVEcall」ツアーは、コロナが流行する前から準備されていたんですよね?

はい。ただ、当時はもちろんあんな状況になることは想定せずに曲を組んでいたので、セットリストはまったく違うものでした。そもそも「#LOVEcall」の“call”はコール&レスポンスの“コール”から取っていたんです。コール&レスポンスが難しい状況になってしまって、そこでフィーチャーしたのが、コール=“電話”という意味。距離はあるけど、線と線でつながっているイメージで、改めて愛情を再確認するようなライブにしたいと思ったんです。セットリストも皆さんがコールしたくなるような曲はあえて外し、かわいさの余韻に浸れる楽曲や、「LOVE」「愛」というキーワードがタイトルや歌詞に入っている曲を積極的にセレクトしました。

小倉唯

“かわいい”を詰め込もう

──ひさしぶりの有観客ライブという点ではいかがでしたか?

お客さんを入れられるのかがわからない状態でリハーサルを進めていたので、当日舞台に上がるまで、自分もどこかまだ有観客ライブをやるというのが信じきれない気持ちで……。

──当日のMCでも「実感がない」とおっしゃっていましたよね。

はい。まるで夢の中にいるかのように、ふわふわした心地でライブが始まって。だけど、幕が開いたときにいつもの熱気とは違う、皆さんの温かい愛情に包まれているような感覚があったんです。皆さんからの安心感のある愛が、空気を介して伝わってきて。まるで実家に帰ってきたかのような居心地でした。

──パシフィコ横浜は小倉さんが2015年に初めてワンマンライブを行った場所で、思い入れのある会場かと思います。

1stライブを行った場所で、そのあとも何度かステージに立たせていただいているので、よりホーム感があるというか。自分の原点という感覚になる会場ですね。

──そのステージに建てられた今回のセット、すごかったですね。小倉さんのラブリーな世界観が視覚的に体現されていて。

ステージセットの一番のポイントは、ハート型の大きなスクリーン。とにかく“かわいい”を詰め込もうということで、扉の上にリボンがあったり、壁の色味にもこだわってパステルトーンで統一していただいたり。デザインを見たときから、舞台監督さんの愛情を感じました。舞台監督さんが「これは唯ちゃんのライブでいつか絶対にやりたいと思っていました」と言ってくださったのがうれしかったです。

ずっと「好きだよ」って告白しているような感じ

──「愛」「LOVE」「恋」というワードで調べると、映像作品になっている夜公演は18曲中12曲にこのワードのいずれかが入ってるんですね。

リハーサルをしていて、ずっと少女マンガの女の子のような歌詞を歌っているなと思いました(笑)。いつもだったらロックナンバーが入ってきたりもするんですが、今回はずっと“かわいい”を表現し続けていたから、少し照れくさい気持ちもありましたね。

──最近は「雨の森はウソつき」のようなシリアスな曲もありましたからね。

はい。当初はラストナンバーの「I・LOVE・YOU!!」に向けてどんどんハートのボルテージを高めていくようなセットリストにする予定だったんですが、蓋を開けたらずっと最初から「好きだよ」と告白しているような感じになってしまって(笑)。皆さんにたくさん“LOVE”を届けられたんじゃないかなと思います。

小倉唯

──1曲目の「pyu♥︎a purely」は、小倉さんがファンの人への気持ちをつづったナンバーです。中止になってしまったツアー「#LOVEcall」を意識して歌詞に「愛情(ラブコール)」というワードを入れたということも以前おっしゃっていたので、この曲でライブが始まるのはすごくグッときました(参照:小倉唯「Clear Morning」インタビュー)。

作詞をしていたときから、この曲は絶対に次のライブの1曲目に歌いたいなと思っていて。その景色を思い浮かべながら歌詞を書いていたんです。なので、このライブで1曲目に「pyu♥︎a purely」を披露して、やっとこの曲が完成したと言っても過言ではないくらい。自分が思い描いていた情景を、ようやく形にできた瞬間でした。

──「pyu♥︎a purely」は今年発表された新しい曲なので、「#LOVEcall」の時点ではなかったということですもんね。「#Re♥LOVEcall」ならではのオープニングでした。

作詞していたときに、きっとライブをやる頃にはお客さんが入っていたとしても、まだコールはできないんだろうな、と予想していて。なので、あえて声じゃなくて目と目でアイコンタクトを取り「思いが伝わっているよ」というテーマを描いたんです。そういった思いを、皆さんに直接お伝えすることができてうれしかったな。このライブではプロローグ的な曲かもしれないですね。

新たな敵を倒せるくらいの気持ちで

──小倉さんの中で、このライブで特に挑戦したなと思うポイントは?

どこも思い入れがあって一番は決められないですが、体力的なところで言うと、ダンスメドレーは特にがんばった部分です。

──「エンジョイ!」「ガーリッシュエイジ」「ドキドキラビリンス」のメドレーですね。2018年に行われた「Platinum Airline☆」のダンスメドレーでもこの3曲が選ばれていましたが、さらにパフォーマンスに磨きがかかっていて驚きました。

コロナ禍でライブができず、少しブランクがある中で不安を抱えながらのリハーサルでした。でも、ライブができなかった期間があったからこそ、パフォーマンスすることに正面から向き合えた気がしていて。自分は何かを表現するのがすごく好きなんだなと改めて感じたし、ステージの上で皆さんに思いを伝えられるのって、実はすごく貴重で大事な瞬間だったんだなと実感しました。そういった思いが、少なからずパフォーマンスに影響しているところもあると思います。

小倉唯

──最近小倉さんはダンスの振り付けだけではなくフォーメーションを考えたり、より深いところまでダンスの創作に携わっていると思うのですが、そういった経験もパフォーマンスに影響していますか?

あるかもしれないです。最近は視野が広くなって、客観的に自分のダンスを見られるようになった気がします。自分自身をプロデュースできるくらいの大きな気持ちで、パフォーマンスを分析できるようになりました。今回は、特にソロのダンスパートに気合いを入れています。直前まで練習して、自分が今まで少し苦手意識のあった、ダイナミックでメリハリのあるダンスをがんばったので、そこはぜひ観ていただきたいです。

──このダンスメドレー、トラックのつなぎもいいですよね。

実は、曲のつなぎも監修させていただいています。聴いていて盛り上がっていくようなつなぎ方をリクエストさせていただき、すごくこだわったところですね。そして、その激しいダンスメドレーのあとに新曲を披露するという……。

──8月にリリースされた「Fightin★Pose」ですね。

ダンスメドレーからの「Fightin★Pose」の披露は、もしかしたら今までで一番ハードなパフォーマンスだったかもしれないです。「Fightin★Pose」は今までの楽曲の中でも、一番ハードルの高いナンバーだったので。

──この曲には高速ラップ×高速ダンスのだいぶハードなパートもありますが、あそこで少しも音源を被せることなく完全生歌で貫き通すのが小倉さんのすごさですよね。

さすがにどうかしてるなって自分でも思いました。いい意味で(笑)。ダンスの振り入れをしていたときから、正直私は青ざめていましたよ。テンポが速いし、「待って待って! 歌うだけでも大変なのに、ここにこんなに難しい振りで、これどうしよう」って。無理なんじゃないかな、と最初は思っていました。でも、なんかここまでくると逆にワクワクしちゃうんですよね。自分にできなさそうなことがあると、闘志が燃え上がっちゃって(笑)。やってやるぜ!みたいな気持ちです。

──まさにいつでも「Fightin★Pose」ですよね(笑)。

ですね(笑)。