Ochunism|“自分以外の何かのために”2ndアルバムに込められた、新たに芽生えた使命と葛藤

Ochunismが10月6日に2ndアルバム「Leave The Gate Open」をリリースした。

Ochunismは、凪渡(なぎと / Vo)、ちゅーそん(G)、kakeru(B)、イクミン(Dr)、たいち(Key)、okada(Sampler)からなる、2019年結成の“ジャンル不特定6人組バンド”。2019年11月に開催された学生バンド日本一を決めるイベント「Next Age Music Award2019」にてグランプリを獲得後、翌2020年3月に1stアルバム「Gate of Ochunism」、同年11月にミニアルバム「INSIDE」をリリースするなど、ジャンルレスなサウンドを武器に、関西を拠点として活動を続けている。

音楽ナタリーは、2ndアルバムの発売を受けて、楽曲制作の中心を担う凪渡(Vo)とちゅーそん(G)にインタビュー。2人の音楽的なルーツや、デビューから約1年半を経て変化を遂げているというバンドのモードが語られた。

取材・文 / 天野史彬

正反対の音楽ルーツ

──Ochunismは6人中5人が同じ大学のサークルに所属していたんですよね。バンドはどのようにして結成されたんですか?

凪渡 僕とちゅーそんはサークルだけじゃなくて、ゼミや学科も一緒で。授業中も2人でよく音楽の話をしていたんですけど(笑)、ちゅーそんが当時、組んでいたバンドの音楽性で悩んでいたので、「じゃあ、俺と組まへん?」と僕から誘いました。

──凪渡さんとちゅーそんさんは、音楽の趣味が合っていたんですか?

凪渡 好きなジャンルとか、そういう部分で趣味が完全に一致しているわけではなかったんですけど、「この曲はここがカッコいいよね」っていうツボの部分が合っていたんだと思います。

ちゅーそん そうね。同じ曲を1曲通して一緒に好きになるというよりは、例えば、サビに入る前に音が増えたり減ったりするタイミングみたいな、曲の中で何かが変わる瞬間に惹かれたり。そういう部分でツボが合っていたという感じでしたね。

──そもそも、お二人はどんな音楽を聴いてきたんですか?

凪渡 僕は特定のジャンルというよりも、浅く広くいろいろと音楽を聴いてきた人間で。その中でも、小学生の頃から今までずっと聴いているのは宇多田ヒカルさんです。あと親が音楽好きで、昔から家でずっと海外のヒットチャート系の音楽が流れていたんです。Queenとかビリー・ジョエルとか。あまりにもバラバラに聴いてきたので、何が自分のルーツかっていうのも自分でよくわかっていないんですけど、ただ1つ自分で思うのは、僕は楽器がメインの音楽よりもデジタルな感じの音楽が好きなのかなということで。音楽の歴史や時代性を深く調べたりするタイプじゃないので曖昧なんですけど、1980年代くらいの音楽が好きなのかなと思いますね。電子音が入ってきた頃のディスコ系とか、デジタルサウンドと楽器の音が混じり始めた時期の音楽。

──それは、どういう部分に惹かれているのだと思いますか?

凪渡 勝手なイメージですけど、デジタルな音が混ざっている音楽って、ボーカルに重きが置かれているような気がするのかもしれないです。楽器主体の音楽って、楽器の音を聴かせる曲が多いと感じるんですよ。リフやサウンドを中心にしていて、ボーカルはそこまでうまくなくてもいいというものが多いのかなと思うんですけど、僕は昔から歌が好きで、歌を中心に音楽を聴いてきたんですよね。そういう意味で、デジタルな要素のある音楽のほうが、歌が聴きやすかったのかもしれない。

──今のOchunismも、メンバーにサンプラーがいるし、エレクトロニックな要素も多分に入ってきていますもんね。ちゅーそんさんはどんな音楽を聴いてきたんですか?

ちゅーそん 僕は凪渡と真逆で、中学からベースとギターをやっていたので、Red Hot Chili PeppersやRage Against the Machineみたいな、リフやギターのフレーズがメインの音楽をずっと聴いてきました。でもそれと同時に、中学生ぐらいから聴き始めたフジファブリックなんかを通して、メロディの儚さとか、J-POP的なもののよさも感じるようになって。最近はそれらが両立されている音楽が好きですね。

「人から認められたい」という行動原理

──Ochunism結成以前から2人は仲がよかったということですが、お互いのことをどういうふうに見ていたんですか?

ちゅーそん 凪渡は、基本的にはイヤなやつです(笑)。

凪渡 なんやそれ(笑)。

──(笑)。

ちゅーそん でも、なんか憎めないというか、かわいい部分があるんです。凪渡は、思っていることを全部言っちゃうんですよ。毒々しいことも言ってくるし、曝け出しちゃう。そういうところが「イヤな奴だな」と思う部分でもあり(笑)、憎たらしいけど、なんだか憎めない部分でもありますね。根本はいいやつなんやろうなって思います。

──凪渡さんはどう思いますか?

凪渡 僕とちゅーそんはどちらも根本的に承認欲求が強くて、「人から認められたい」と思って行動することが多々あるんですけど、僕はどちらかと言うと、自分をよく見せるために自分を曲げてしまうタイプなんです。でも、ちゅーそんはどこにいても、誰としゃべっていても、変わらない。計算やずる賢さがないんです。今「イヤなやつ」と言われましたけど、確かに僕はちょっとスネ夫っぽいんですよね(笑)。ただ、自分で言うのもなんですけど、同じものを渡されて、それをうまくプレゼンできるのは僕だと思う。ちゅーそんはそういうことが下手やと思います。ちゅーそんは、自分が好きじゃないものは人に薦めないし、自分に嘘をつけないから。

ちゅーそん うん。

凪渡 僕は自分に嘘をつけてしまうので、そこはお互い全然違うなと思います。でも、だからこそ一緒にいて安心できるんですよね。曲作りのときもセトリを決めるときも最終的にちゅーそんに意見を聞いちゃうんですけど、それは彼がブレないでいてくれるからで。アーティストとしても愚直に努力する真面目さがあるし、OchunismがOchunismであるために、ちゅーそんは必要不可欠な存在です。バンドの芯のような存在だと思います。

──「バンドの芯」と言われていますが、ご自分ではどうですか。

ちゅーそん まさに、その通りです。

凪渡 自分で納得すんな(笑)。

──(笑)。お互い、音楽家としてはどうですか?

凪渡 さっきも少し言いましたけど、ちゅーそんはアーティストとして自分のやるべきことに向き合いながら努力していくタイプやと思います。ちゅーそんのほうが人間的に変わっていると思われがちなんですけど、案外僕の方が奇天烈な発想の曲を作りがちで。僕の作る曲のほうがアングラ寄りになったりしますね。ちゅーそんはリフやフレーズを思い付くのがうまいし、音階やメロディラインに関してはちゅーそんのほうがマニアックなんですけど、展開や曲全体の方向性に関しては、僕のほうが暗いものが好きだったり、マニアックな方向に行っちゃうんですよね。

ちゅーそん そうやね。「INSIDE」(2020年11月リリース)というミニアルバムに入っている「shinsou」という曲があるんですけど、あの曲は、最初は僕がベースラインやコード進行を作って凪渡に送ったんです。その時点でマニアックな方向性の曲だと自分でも思っていたんですけど、凪渡がその100億倍くらいマニアックな曲にして返してきたんですよね。「これ、サビがどこにあるの?」みたいな。そういうふうに、凪渡と一緒に作っていると曲がどんどん難解な方向にいくことが多いです。もし凪渡が1人で音楽活動をやっていたら、めちゃくちゃ難解なものを作っていると思います。