ナタリー PowerPush - OBLIVION DUST
KEN LLOYD & RIKIJIが全アルバムを振り返る
「9 Gates For Bipolar」は1stや2ndあたりの感覚に戻ってる
──最後は、今年4月に発売された約4年ぶりのニューアルバム「9 Gates For Bipolar」。このアルバムは「OBLIVION DUST」とは反対に、すごく自信に満ちた作品だと思いました。
KEN 自信ありますね。昔のアルバムで言ったら、「misery days」の頃の実験的な部分とかぶるところがあるし。それは内容っていうよりバンドの状態のことで、「BUTTERFLY HEAD」でのボロボロさがない感じですね。
──僕はこのアルバムを聴いたとき、ちょっと1stアルバム「LOOKING FOR ELVIS」の頃を彷彿とさせるなって思ったんですよ。明らかに新しいOBLIVION DUSTの音なんだけど、1周回って戻ってきた感があるというか。
KEN なるほど。でも自分的にはまだ新しすぎて、感想が言い難いんだよね。
──まだ客観的にはなれないと。
KEN なれてないけど、言ってることはわかります。1stや2ndあたりの感覚に戻ってやってる感じはありますね。K.A.Zも「OBLIVION DUST」のときよりもっと実験的な曲を持ってきたし、作っていて楽しかったです。
──「OBLIVION DUST」と比べると対極的な作品かもしれないですね。前作はストレートで瞬発力のある作品集だったけど、今作は聴く度に新たな発見があるし。
KEN あと、昨年何度かツアーをやって、OBLIVION DUSTがどういうバンドなのかっていうのを確認してから制作に挑んでるし。さらに、今回はレコード会社からのプレッシャーが全くなかったから、好きなことだけをやれて気持ちに余裕があった。前のアルバムは外側から観たOBLIVION DUSTを意識してたけど、今回のアルバムは「これがOBLIVION DUSTなんだ」ってバンド側から提示してる感じ。周りに合わせる必要なんてないじゃんって、そこに改めて気付けたのが大きいですね。
──そういう意味では初期の頃のマインドに近いんでしょうね。
RIKIJI 近いと思う。言い方は悪いけど、売れなくてもいいなっていう。
KEN それって結構デカいんですよ、ミュージシャンにとっては。解散前は「売れなきゃいけない」っていうプレッシャーをストレスに感じていたし。今回に関しては1stや2ndの頃……あの頃、俺は19歳とか20歳とかで、別に売れなくても楽しんでやれればいいやっていう気持ちだったし、今はそれに近い精神でやってるのかもしれない。なぜそう思えるようになったかというと、FAKE?とかATOM ON SPHEREとかほかにもバンドをやってるのが大きいのかな。別にしくじっても大丈夫だから、OBLIVION DUSTはOBLIVION DUSTらしくやってやろうっていう。
若さと引き換えに技術を手に入れた
──「9 Gates For Bipolar」は本当に濃いアルバムなので、もっとじっくり時間をかけて、いろんな人に届けたいですね。
KEN スルメ的なアルバムですよね。よくOBLIVION DUSTの1stと2ndはスルメ的だって言われていて、古くからのファンは2ndが一番好きだ、名盤だって言うんですよ。
RIKIJI 俺はレコーディングでしごかれた暗黒時代だから、いい思い出がないけどね(笑)。
──あはははは(笑)。
RIKIJI だから、そこまで入り込めないっていうか。そういう意味じゃ、今回のアルバムが一番楽しかったかな。自分やほかのメンバーの技術も上がってるから、1曲1曲への魂の入れ方が違うというか。以前はスタジオで何回か合わせて、そこで全員が感覚を掴みながら照準を合わせていったけど、今は1回弾けば大丈夫ってところまできてる。若さと引き換えに技術を手に入れたので、1stや2ndの頃の新鮮さはないかもしれないけどね。
──でもこの「9 Gates For Bipolar」ってアルバムは、今のOBLIVION DUSTじゃないと作れないものですし。間違いなく今のOBLIVION DUSTの音であって、今のOBLIVION DUSTが鳴らすから一番気持ち良く響くんだと思います。さて、ここまで6枚のアルバムを振り返ってみましたが、お話をいろいろ聞いて本当に8月のライブが楽しみになってきました。
KEN でもわかんないですよ、「BUTTERFLY HEAD」のところでライブを止めちゃうかもしれないし。
RIKIJI ちょっと劇みたいな感じに。
KEN で、少し休憩を挟んでから、「OBLIVION DUST」の曲からライブが再開する(笑)。ちょっとしたロックオペラですよ。
RIKIJI こうやって振り返ると、AEROSMITHやAC/DC、THE ROLLING STONESとは違って、毎回違ったことをやってるバンドだっていうことがわかると思うんです。個人的にはAC/DCみたいなバンドに憧れるんですけど、ただずっと同じことをやってると飽きちゃうから。
別にOBLIVION DUSTとしての活動を止めるわけじゃない
──そして、8月2日・3日のライブが終わったあとの、OBLIVION DUSTの活動状況も気になるわけですが。
KEN まあ間違いなく、K.A.ZはVAMPSをやると思いますよ。
──ああ(笑)。
KEN それを踏まえつつ、オフィシャルサイトのスケジュールをチェックしてください。としか言えないかな(笑)。
──でも良きタイミングに集まって、ライブなりレコーディングなりがあるかもしれないってことですよね。
KEN そうですね。別にOBLIVION DUSTとしての活動を止めるわけじゃないし。俺もずっと曲を作ってるし、そこからOBLIVION DUSTの曲もできればと。まあすぐにアルバムを作るかはわかんないけど。
──それぞれ別にバンドがあるわけで、解散前のように毎年アルバムを作っていた状況とは異なりますし。
KEN でもわかんないですよ。2カ月経ったらアルバムを作っちゃうかもしれないし。どの方向に進むか約束はできないけど、ライブはやると思います。「9 Gates For Bipolar」を出してから、まだツアーは1回しかやってないしね。
OBLIVION DUST Live 2012“6IX”
- 2012年8月2日(木)
- 東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
OPEN 19:30 / START 20:00 - 2012年8月3日(金)
- 東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
OPEN 19:30 / START 20:00
※ソールドアウト
料金:全立見 5000円(ドリンク代別)
「9 Gates For Bipolar」 / 2012年4月14日発売 / 3150円 / NAYUTAWAVE RECORDS / UPCH-20277
収録曲
- Gateway
- Tune
- Sail Away feat. 土屋アンナ
- Syndrome
- All I Need
- Devil's Game
- Ghost That Bleeds
- In My Rainy Field
- Sink The God
- Baby, It's All Good
OBLIVION DUST(おぶりゔぃおんだすと)
1997年にシングル「SUCKER」でデビューした、オルタナティブロックバンド。曲によって日本語詞と英詞を巧みに使い分け、生音と打ち込みを活かした独特なサウンドで人気を博す。2001年に一度解散するが、2007年にKEN LLOYD(Vo)、K.A.Z(G)、RIKIJI(B)により突然の活動再開。2008年には約7年ぶりのアルバム「OBLIVION DUST」をリリースし、ファンを喜ばせた。2009年に活動が再び停滞するが、2011年2月からライブ活動が活発化。2012年4月に通算6枚目のオリジナルアルバム「9 Gates For Bipolar」をリリースした。