ナタリー PowerPush - OBLIVION DUST
KEN LLOYD & RIKIJIが全アルバムを振り返る
プロデューサーにベースで殴りかかりそうだった
──続いてRIKIJIさんが初参加した、1998年7月発売の2ndアルバム「misery days」。前作の色を残しつつバンド感が強く出た内容で、この作品の頃からバンドが少しずつ注目されるようになった印象があります。歌詞は全編英語詞でしたが、これは最初からそうしようと決めていたんですか?
KEN いや、多分日本語詞がハマらなかったんじゃないですか? あと、この頃はほとんどアメリカにいたのも大きいかったのかも。RIKIJIが入って、THE PRODIGYの前座をやって、そのままロスに行って曲作りをして。
RIKIJI 1年の半分くらいは向こうにいましたね。
KEN それくらいいたね。3カ月くらいロスにいて、たまに戻って日本でライブして、またロスに戻る。とにかく一緒に過ごす時間が長かったから、バンドとしてもまとまりが出てきたのかな。メンバーとは仕事だけじゃなくて、よく一緒に遊びに行ったりもしてたし、ライブも観に行ったし、友達ではないけど友達に近いような存在になった。それで完成したのが「misery days」なんです。
──じゃあレコーディングは順調だった?
RIKIJI このときは、曲の構成をプロデューサーのレイがその場で変えちゃってたよね。
KEN まあメチャクチャなことを言うプロデューサーだったんで。とにかくその場その場で構成をガラッと変えるんだけど、RIKIJIはオブリの初レコーディングでレイにブチ切れて。
RIKIJI ベースで殴りかかりそうだった(笑)。
──そんなに大きく変えちゃうんですか?
KEN うん。完全に海外のやり方なんですよ。日本とは全然違う。それって向こうで作業してみないとわからないことだと思うんですけど。
RIKIJI プリプロである程度完成してるにもかかわらず、変えちゃいますからね。別に悪くしようと思ってやってるわけじゃないんだけど、もっと言い方や言うタイミングを考えろと。上からバカにしてるような言い方をするから、それでよく怒ったりしました。ひどかったのは、ドラムを録音する前に、クリックを聴いてベースを弾けって言われて。
──ええっ!?
RIKIJI 「あとでなんとかする」とか言って。
KEN 結局なんとかできてないんだけどね。よく聴くとうちら3人(KEN、K.A.Z、RIKIJI)は合っててドラムがズレてる曲があるんだよ。まあいい思い出です(笑)。
RIKIJI あれをやったから、何も怖くなくなりましたからね。
やってる側も「もっと行けるんじゃねえの?」って勢いは感じてた
──1999年12月に3rdアルバム「REBORN」をリリース。この時期になるとシングルには再び日本語詞が採用されて、「YOU」や「GOODBYE」などキャッチーな曲が続きます。アルバム全体は前作「misery days」よりヘビーで、より独自の色が出てきた印象があります。
KEN 「misery days」の時期はそんなに売れてなかったのに、hideとかLUNA SEAとか周りのミュージシャンから好きって言われるようになって。個人的にも歌がだんだん上達してるのがわかったし、バンドとしても個性が固まってきたし、K.A.Zはhideのバンド(hide with Spread Beaver)をやってたし、RIKIJIも「このバンドはこういう感じだ」っていうのがわかってきたし、それら全部が自信につながって形として表れたのが「REBORN」かな。
──リスナーとしても、1stアルバムの頃はこのバンドをどう形容していいのか伝えにくいところがあったけど、2nd、3rdと作品を重ねるごとに「このバンドはこういうバンドで、こんなライブをするんだよ」って伝えやすくなった記憶があります。
RIKIJI スタッフもメンバーも、歯車が合ってきたっていうか、呼吸が合ってきた。で、ドラムも変わって新しい風が吹いたし、やってる側も「もっと行けるんじゃねえの?」って勢いは感じてました。
KEN 結果的には行けなかったけどね(笑)。
RIKIJI 調子に乗っちゃったっていう。
KEN めっちゃ調子に乗ってた頃ですよ、バンドとしては。
「REBORN」の頃はバンド内に膿が少なかった
──「REBORN」の頃になると、ライブもより激しくなってきましたよね。
RIKIJI 野音でライブやったのもこの頃かな(1999年4月3日の「LIVE THERAPY -VIDEO SHOOTING BUZZ-」)。天狗になってたな(笑)。
KEN ただ、振り返って思うことは、バンドは天狗じゃないとダメだなと。昔のバンドのほうが天狗の人がいっぱいいたじゃないですか。俺、「新しいシングルが出ました、ぜひ聴いてください」みたいなの、いまだに好きじゃないんだよね。最近はもう年取ったから言うけどさ(笑)。
RIKIJI 確かにそうなんだよね。
KEN なんかね、「聴きたきゃ聴きゃあいいじゃん」っていう精神は残しておかないと、ロックバンドとして危なさが足りなくなると思うんだよね。真面目なMOTLEY CRUEなんて観たくないでしょ? そういう意味では、この頃のOBLIVION DUSTは危なっかしさがあっていいバンドだったなって思うけど。
RIKIJI バンドとしては「REBORN」の頃が一番もめてなかった時代じゃないかな。
KEN そうね。でもほかのバンドに比べたら、仲良しこよしって感じじゃなかったけど。
RIKIJI ケンカとかじゃないんだけど、ぶつかる頻度は少なかったなあ。バンド内に膿が少なかったというか。
──「REBORN」から「BUTTERFLY HEAD」の頃って、ライブを観てるとバンドとして危うい部分を感じることが増えて。そこがロックバンドとして魅力的に映ったんですが、それと同時に「このバンドは長続きするタイプじゃないな」とも思っていました。長く活動してほしいんだけど、いつ解散すると言っても驚かないというか、そういう危険なものを内包していたのかなって。
KEN そういうことって、外から見てるほうがわかりやすそうですよね。病気になってる人が自分で病気だと気付いてなくて、他人から見るとかなりやつれてたり。それと一緒だと思うんですよね。こっちは自信満々で天狗になっていて、ライブじゃ誰にも負けねえ、アルバムも誰にも負けねえって言っていて。しかも仲が良くて、売れているバンドからリスペクトを受けていたから勘違いもしてたし。なのに思ったほど売れてなくて、「どうせお前らにはわかんねえだろ?」みたいにケンカ腰なところもあったし。
RIKIJI 「わかる奴だけわかればいい」みたいに反発してたし。そういうところから精神的に崩れていった時期でもありますね。今思えばみんな、ちょっとおかしかったもんな(笑)。
OBLIVION DUST Live 2012“6IX”
- 2012年8月2日(木)
- 東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
OPEN 19:30 / START 20:00 - 2012年8月3日(金)
- 東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
OPEN 19:30 / START 20:00
※ソールドアウト
料金:全立見 5000円(ドリンク代別)
「9 Gates For Bipolar」 / 2012年4月14日発売 / 3150円 / NAYUTAWAVE RECORDS / UPCH-20277
収録曲
- Gateway
- Tune
- Sail Away feat. 土屋アンナ
- Syndrome
- All I Need
- Devil's Game
- Ghost That Bleeds
- In My Rainy Field
- Sink The God
- Baby, It's All Good
OBLIVION DUST(おぶりゔぃおんだすと)
1997年にシングル「SUCKER」でデビューした、オルタナティブロックバンド。曲によって日本語詞と英詞を巧みに使い分け、生音と打ち込みを活かした独特なサウンドで人気を博す。2001年に一度解散するが、2007年にKEN LLOYD(Vo)、K.A.Z(G)、RIKIJI(B)により突然の活動再開。2008年には約7年ぶりのアルバム「OBLIVION DUST」をリリースし、ファンを喜ばせた。2009年に活動が再び停滞するが、2011年2月からライブ活動が活発化。2012年4月に通算6枚目のオリジナルアルバム「9 Gates For Bipolar」をリリースした。