ナタリー PowerPush - ALL OFF

プロデューサーにオブリRIKIJI迎え リスペクトインタビュー

2008年末に行われた「COUNTDOWN JAPAN 08/09」への出演を機に、着実に注目を集めている5人組バンドALL OFF。彼らが約2年ぶりとなる最新ミニアルバム「Start Breathing」を8月1日にリリースする。本作にはドラマ「QP」のトリビュートアルバムに提供した「Nothing」をはじめとする全7曲を収録。中にはOBLIVION DUST / MEGA8BALLのRIKIJI(B)がプロデュースを手掛けた話題曲「Let It Shine」も含まれている。

今回ナタリーでは、メンバーの松浦奏平(Vo)と越本兼瑛(B)、そして「Let It Shine」のプロデューサーでもあるRIKIJIにインタビューを実施。2組の出会いからコラボレーションまでの流れ、そして先輩アーティストのRIKIJIから見たALL OFF、若いALL OFFのメンバーから見たRIKIJIなど、興味深い話をたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 高田梓

ALL OFFは若いっていうか青いなっていう感じ

──聞くところによると、ALL OFFの皆さんは元々OBLIVION DUSTのことが好きだったそうですが。

松浦奏平(Vo) はい。特にベースのコッシー(越本)がね。

松浦奏平(Vo)

越本兼瑛(B) 自分は高校生のとき、活動休止前のOBLIVION DUSTを聴いていた世代なので。

──いつ頃から聴いていたんですか?

越本 RIKIJIさんがバンドを辞める直前のシングル「DESIGNER FETUS」(2000年9月発売)かな。アルバムはベスト(2001年8月発売の「RADIO SONGS~Best of Oblivion Dust」)を持ってます。

RIKIJI ファンならアルバム全部持ってろよ(笑)。

越本 すみません(笑)。

──RIKIJIさんと初めて会ったのはいつ頃でしたか?

越本 去年の12月、Shibuya O-EASTでOBLIVION DUSTのライブを観たあとに挨拶させていただきました。

RIKIJI そのときは普通に礼儀正しい子だなっていう感じで。全然喋らなかったもんね。

松浦 そうですね。で、ちゃんとお話したのは、そのあとの打ち合わせのときです。

──RIKIJIさんは最初にALL OFFのサウンドを聴いたとき、どう思いました?

RIKIJI 若いなって。

一同 (笑)。

RIKIJI 若いっていうか、青いなっていう感じですかね。メンバーが向かっていこうとする方向が全員バラバラで、照準が合ってない感じがしてたけど、彼らのやりたいことがわかってきてからはやりやすかったですよ。逆にもう固まっちゃってるバンドだと崩すのが難しいし、そこから始めなきゃいけないですから。

今回はバンドの勢いや荒さを前に出したかった

──今回の、RIKIJIさんがALL OFFの楽曲をプロデュースすることになったのは、どういう経緯だったんですか?

松浦 最初はうちらで新作のデモを作ってたときに、スタッフから「勉強も兼ねて、第三者の力を借りていろんな幅を広げてみてはどうだろう?」って言われて。それで、じゃあ誰かプロデュースしてくれる人を探してみようという話になったんですけど、最初はそんな有名な人に頼むつもりがなかったので(笑)、逆にRIKIJIさんの名前が挙がったときはビックリしました。

──なるほど。RIKIJIさんはほかのバンドのプロデュースって、これまでしたことはありましたか?

RIKIJI 後輩バンドのアレンジを手伝ったりすることはちょこちょこありましたけど、ちゃんとした形でプロデュースを担当するのは初めてでしたね。

──実際にはどういった形で制作を進めていったんですか?

松浦 僕らはプロデューサーと一緒に仕事をしたことがなかったので、それまでは出来上がったものを聴いてもらって「あ、ここ、こうしてこうして」って指示されるような作業が待ってるのかなと思ってたんです。でも、RIKIJIさんはレコーディングの早い段階からスタジオ入りして、「ここ、こうしちゃおうぜ」「こっちのほうがカッコいいよ」みたいに一緒に曲作りに参加してくれて。あれはちょっと忘れ難い経験だし、今回の制作過程で一番の刺激でしたね。

──じゃあRIKIJIさんと一緒に仕事をした影響は、その後作った曲にも反映されている?

松浦 それはめちゃくちゃあります。特に、楽器を弾く際や歌う際の気持ちの込め方で教わったことが一番大きくて。以前の作品では音を重ねていく中でアレンジを練っていく手法が多かったんですけど、今回はバンドの生の状態……勢いや荒さを前に出したかったんです。僕の歌い方ひとつにしても、今まではキレイに歌おうとする癖があったけど、それだけじゃ物足りないよとRIKIJIさんが言ってくれて。そのあと録った「Let It Shine」で歌い方がガラリと変わりました。その影響は本当にデカいと思います。

マイナスの美学をみんな意識するようになった

──ほかにRIKIJIさんから刺激を受けたことってありますか?

越本 RIKIJIさんと最初に打ち合わせをしたときに、マイナスの美学って話をしたじゃないですか。それを聞いてから、曲作りでもレコーディングでも、みんなすごく意識するようになりましたね。

──マイナスの美学?

越本 詰め込みすぎないっていうことですかね?

写真左から、RIKIJI、松浦奏平、越本兼瑛

RIKIJI うん。例えばギターを何本も重ねて、ボーカルもコーラスをバンバン重ねれば豪勢に聴こえる。でも、ぜい肉をどんどん削ぎ落として、少ない音をきっちり鳴らせるほうがプレイヤーとしてもアーティストとしても優れているんじゃないかという持論が俺の中にあって。そういう演奏って、プレイしてるアーティストの姿も美しいしカッコいいと思うんです。

越本 その話を聞いたときにハッとしたというか。

松浦 前作「From Midnight To Sunshine」がまさにそういう作品だったけど、今回はそことは違う音になってると思います。

──なるほど。RIKIJIさんは完成したアルバムを聴きましたか?

RIKIJI はい。いいと思います。俺、前作も悪いと思わないんですよね。それを聴いて、今回の仕事を受けたので。前作は前作ならではの勢いがあるけど、今作は演奏力や表現力がさらに上がって、すげえ成長したな、進化したなと。確かにアレンジの部分は今回のほうがよりシンプルになっていて、個人的には好みな感じですね……もっと良いこと言ったほうがいい?(笑)

越本 いえ、大丈夫です(笑)。

ALL OFF(おーるおふ)

松浦奏平(Vo)、内藤祐貴夫(G)、越本兼瑛(B)、大槻真一(Dr)、畑島岳(G)からなるラウドロックバンド。結成直後からMTVでレギュラー出演を果たしたほか、音源がない状態で新木場STUDIO COASTの舞台に立ち注目を集める。2008年に行われたRO69主催「COUNTDOWN JACK」でユーザー投票2位を獲得し、同年末に「COUNTDOWN JAPAN 08/09」に初出演。これを機にパンク / ラウドロックシーンで一気に知名度を高める。2010年6月に初のミニアルバム「From Midnight To Sunshine」をリリース。翌2011年10月にindiesmusic.comとライブ会場限定でシングル「Giving You Up」を発表した。パンクやエモ、ポップス、ラウドロックなどのジャンルを融合させた、疾走感あふれるサウンドが特徴。2012年3月に発売されたドラマ「QP」のトリビュートアルバムには、新曲「Nothing」を提供した。同年8月、2ndミニアルバム「Start Breathing」をリリース。

OBLIVION DUST(おぶりゔぃおんだすと)

1997年にシングル「SUCKER」でデビューした、オルタナティブロックバンド。曲によって日本語詞と英詞を巧みに使い分け、生音と打ち込みを活かした独特なサウンドで人気を博す。2001年に一度解散するが、2007年にKEN LLOYD(Vo)、K.A.Z(G)、RIKIJI(B)により突然の活動再開。2008年には約7年ぶりのアルバム「OBLIVION DUST」をリリースし、ファンを喜ばせた。2009年に活動が再び停滞するが、2011年2月からライブ活動が活発化。2012年4月に通算6枚目のオリジナルアルバム「9 Gates For Bipolar」をリリースした。