ナタリー PowerPush - OBLIVION DUST
KEN LLOYD & RIKIJIが全アルバムを振り返る
空中分解せずに頑張って着地したのが「BUTTERFLY HEAD」
──そして2000年11月に、活動休止前最後のオリジナルアルバム「BUTTERFLY HEAD」が発売。結果的には、それまでの活動の集大成的な内容だったと思います。
KEN OBLIVION DUSTがあのときに行けた最後の地点だったというか、もうこれが限界みたいな。俺は一番好きなアルバムなんですけどね。曲はキャッチーだし音もいいし、メンバーみんなの腕も磨かれていて。「どうせ売れないんでしょ?」みたいな感覚もあったけど、そのときのOBLIVION DUSTの一番いいところが出てると思う。
RIKIJI このときから、各曲の作曲者が個々で作業するようになってきたね。
KEN 初めてのセルフプロデュースですね。
RIKIJI この頃からK.A.ZさんがPro Toolsを使って、しっかり仕上げたデモテープを作ってくるようになって。「REBORN」まではみんなの意見をまとめるのがレイの役目で、あれこれ曲の構成を変えてたんだけど、Pro Toolsがあればその場で曲の構成も簡単に変えられるからプロデューサーがいらなくなったんだよね。
──より個々のカラーがストレートに表れるようになったと。
RIKIJI でも、内側はどんどん崩壊し始めていて、そんな中で空中分解せずに頑張って着地したのが「BUTTERFLY HEAD」です。
──このアルバムが出た1カ月後にRIKIJIさんが脱退して。リリース後もライブってそんなに本数はやってなくて、あの当時「BUTTERFLY HEAD」の曲をライブでもっと聴きたいなとよく思ってました。すごくライブ向きの曲が多いですし。
RIKIJI 確かに。どの曲もしっかり芯があるっていうか、よくまとまってるんですよね。俺も結構好きなアルバムかな。
K.A.Zの変化が強く表れた復活作「OBLIVION DUST」
──OBLIVION DUSTは2001年9月のラストライブをもって解散。そこから6年後の2007年9月に復活ライブを行い、2008年1月に5thアルバム「OBLIVION DUST」をリリースします。当時のインタビューでも言いましたが、このアルバムは以前と比べてすごくシンプルでストレートなサウンドに立ち返ったなという印象でした。
KEN まず、解散からの6年でK.A.Zがミュージシャンとしてすごく変わったんだよね。RIKIJIは昔からずっと一緒で、俺はちょっと自分ではわかんないけど、あまり変わってないような気がする。
──K.A.Zさんはどう変わったんですか?
KEN ほかのアーティストをプロデュースしたり、自分でバンドをやったりして、以前よりもポップな楽曲を作るようになったっていうか。解散前はPro Toolsで緻密なサウンドを作ってたのに、再結成してからはベーシックでシンプル、わかりやすいっていう方向の曲を作るようになったよね。昔と比べれば歌メロが乗せやすいし。
──確かにこのアルバムのメロディって、以前と比べたら伝わりやすいというか、わかりやすいですね。
KEN 昔はインストを作ってるようなもので、歌が乗ってなくても響いてくるような曲が多かった。でも今のK.A.Zは、ちゃんと歌メロが乗るスペースを考えてるっていうか、完全にプロデューサー的な作り方ができる人なんです。それが強く表れてるのが、「OBLIVION DUST」ってアルバムな気がします。
──なるほど。
KEN バンドとしては6~7年のブランクがあって、自分らもOBLIVION DUSTがどういうバンドなのかっていうのを忘れちゃってる部分もあった。昔は水泳が上手だった人が怪我して6~7年泳げなくて、久しぶりにプールに戻ったときにちょっとぎこちない泳ぎ方をするような。ちょっと例えがヘタだったね(笑)。そういう探り探りなところもあるし、お互いを気遣い合ってる部分もあるし、そういうところがちょっと音に出てるかな。でもその反面、すごくわかりやすいサウンドだし、ポップでキャッチーだと思う。良いアルバムだとは思うんだけど、果たしてそれがOBLIVION DUSTなのかは個人的には「?」って思うところもあるんだよね。
バンドとして探り探りな部分がポップさに表れた
──今振り返ってみて、なぜここまでポップな作品になったんだと思いますか?
KEN 「BUTTERFLY HEAD」のときはバンドの状態はボロボロながら、自信だけで作ってたようなもので。で、そこから時間が経ってもう1回OBLIVION DUSTをやろうってなったとき、バンドとしてあの頃みたいな自信を取り戻せてなかったのかもしれないですね。3人とも1人のアーティストとしての自信はあるけど、バンドとしてはまだ探り探り。それがポップさっていう部分に表れたのかもしれない。
RIKIJI そういう意味じゃ、このアルバムが一番ライブ向きじゃないっていうか、ライブを想定して作ってないし。
──でも、ここ最近のライブには欠かせない曲が多く含まれてますよね。
KEN お客さん側としては受け入れやすい曲が多いんじゃないかな。
──確かに過去の作品の中で一番ポップな作品だけど、K.A.Zさんが中心になって曲を書いて、この3人で音を出せばそれがOBLIVION DUSTになるんだということは、改めて感じました。
KEN それは俺たちもすごく感じた。でも、新しい自転車を買って乗るとちょっとぎこちないのと一緒で、本当はもっと試運転してから作ったほうが良かったんだろうね。
OBLIVION DUST Live 2012“6IX”
- 2012年8月2日(木)
- 東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
OPEN 19:30 / START 20:00 - 2012年8月3日(金)
- 東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
OPEN 19:30 / START 20:00
※ソールドアウト
料金:全立見 5000円(ドリンク代別)
「9 Gates For Bipolar」 / 2012年4月14日発売 / 3150円 / NAYUTAWAVE RECORDS / UPCH-20277
収録曲
- Gateway
- Tune
- Sail Away feat. 土屋アンナ
- Syndrome
- All I Need
- Devil's Game
- Ghost That Bleeds
- In My Rainy Field
- Sink The God
- Baby, It's All Good
OBLIVION DUST(おぶりゔぃおんだすと)
1997年にシングル「SUCKER」でデビューした、オルタナティブロックバンド。曲によって日本語詞と英詞を巧みに使い分け、生音と打ち込みを活かした独特なサウンドで人気を博す。2001年に一度解散するが、2007年にKEN LLOYD(Vo)、K.A.Z(G)、RIKIJI(B)により突然の活動再開。2008年には約7年ぶりのアルバム「OBLIVION DUST」をリリースし、ファンを喜ばせた。2009年に活動が再び停滞するが、2011年2月からライブ活動が活発化。2012年4月に通算6枚目のオリジナルアルバム「9 Gates For Bipolar」をリリースした。