音楽ナタリー PowerPush - OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

TOSHI-LOW×ハナレグミ対談

「場所」とつながりたい

──永積さんはいろんなフェスに出られて、何か思うところはありますか?

ハナレグミ

永積 やっぱりどこの会場も似てきてるなあ、とはすごい思う。日本のミュージシャンって皆同じようなところでやるじゃないですか。新幹線に乗って2時間ぐらいで会場に着いて、ライブやってまた次の日移動して……ってやってると、ずっと同じ場所にいるような感覚に一瞬なっちゃうっていうか(笑)。でもフェスってものが始まった頃は、それとは別の気持ちよさがそれぞれの場所から感じられたんだよね。でも今は……まあ自分が慣れたっていうのもあるし、同じ業者が設営を手伝ってることもあって、どこも会場の雰囲気が似てるなあって。

TOSHI-LOW そうねえ。

永積 また逆に、カフェみたいなところでも音楽がやれる状況にもなってるから。料理作ってる音の横で歌うこととか、面白かったりしますからね。

──カフェみたいなミニマムな場所でやるときと、フェスでやるときの気持ちや姿勢は変わってきます?

永積 いや……変わらないかな。まあカフェとかだと単純にバンドで演奏できないから弾き語りになって、アレンジも音量感も変わってくるから歌うときの気持ちも少し違うと思うけど、大事な部分はどこも変わらない気がしますね。自分はやはり、その「場所」とつながりたいってすごく思ってて。オーディエンスの感じとか……その日の客席からくる何か……あるよね? なんか1個気持ちみたいなのが。その気持ちに対してつながっていきたい。そこがうまくぴったりあうと、ものすごい感動が生まれるんですよね。客席とステージが一体になって、でっかい1個みたいになって。客席からも、聴いてるんだけど一緒に歌ってるみたいなバイブレーションが来て、それに対してこっちも歌い返す、みたいな。こういう関係性ができるときがあるんですよ。

──それは会場の広さに関わりなく。

永積 関わりなく、起きるときは起きて。いつもそういうものを目指したいと思ってるんですけど。そこが歌う上で一番大きいですね。

──どういう条件がそろったときにそれは起きるんですか?

永積 やっぱり……自分の言葉や曲と、その場所の空気感で奇跡的にタイミングが合ったときじゃないですかねえ。同じようにやればいっつも同じように反応が返ってくるかっていえば、なかなかそうではなくて。今日もうまくいかなかったなあと思うことも多いし。

──同じフェスで同じようにやったから、今回もうまくいくかといえば……。

永積 そうでもないという。

TOSHI-LOW あと自分がさ、「あれー、うまくいかなかったなあ」と思ってたら、すごいワーッときたりすることがあるじゃない? 

永積 あるある(笑)。

TOSHI-LOW あれなんだろうね? 逆に「今日はやったぜ!」みたいな手応えがあったのに、あとで「調子悪かったですか?」って言われたり(笑)。「えーっ! 100点満点だと思ってたのに」みたいな。

──ミュージシャンの感覚と観客の受け取り方って微妙にずれたりするみたいですね。

TOSHI-LOW 体調悪いときにいいって言われることも多いね。必死になるからじゃねえかなって思うけど。

──余計な力が抜けるからなのかもしれないですね。じゃあ今まで幸福な一体感みたいなものを味わった印象的なライブというと……。

永積 覚えてるのは……代々木の第二体育館。360度お客さんがいて、ライブを2時間半ぐらいやったんだけど、最初から全力でいったからアンコールになるともう頭が真っ白になっちゃって。そのときに、今話に出たように力が抜けて。「家族の風景」って曲を歌ってたんだけど、歌っているという意識もなくなってふわーっとして……なんか、“気”みたいなものなのかな。自分の歌の抑揚に合わせて会場が稲穂みたいに揺れてるような感じがしたんですよ。みんな静かに聴いてるんだけど。「あ、この感じなら俺、あと何時間でも歌える気がする」という状態になって。

──それは意図して出せるものじゃなさそうですね。

永積 いやあ、なんかギフトみたいに、ふとした瞬間にさりげなく訪れる感じ。

罵声と投石が拍手に変わった中国公演

──BRAHMANではどうですか。

TOSHI-LOW 中国でやったとき(2003年)、5000人の罵声と投石を受けて。

永積 ええーっ!

TOSHI-LOW

TOSHI-LOW 俺(ステージの)真ん中だからバンバン投げられて。5000人いて、奥にしか出口がなくて。こっちはどん詰まりだから逃げ場がない。殺されるのかなあと思ったけど、まあいいやって。警察も2人ぐらいいたんだけど全然止めないし。中止になるのかと思ったらならないし(笑)。これはやるしかねえのかと。そのうち生卵を顔にバシャーンって投げられて、それでなんかスコーンと抜けた気がしたのね。それまでは、痛いなあとかこうやって威圧して歌おうとか、いろんなことを考えてたんだけど、卵が当たった瞬間にフーッと抜けて。もうとにかく歌おうと。もしかしたら初めて、歌だけに集中して。カッコつけるとかそういうことじゃなくて、ただただ歌って。7曲ぐらいしかやらなかったんだけど、パッと顔をあげたら、さっきまで罵声を上げてた連中が夢中になって拍手しててさ。なんのこっちゃわからなかったけど楽屋戻ったら中国人が50人ぐらいぶわーっと来て、とりあえず20人は殺そうと思って身構えたら(笑)、「すごいよかったよ」「これが中国だと思わないでくれ」「今日はほんとに悪かった」って。次の日に北京の街を歩いてても「昨日行ったよ、すげえよかったよ」ってすげえ優しくて。なんかわかんないところで、自分の意図していない何かが出て、それが音楽として一番いい形で客に伝わったんだなと。言語も人種も思想も超えられた。でもそれは狙ったわけじゃないから。

永積 すごい状況だね! それ。

TOSHI-LOW すごかった。だから俺も意識ないの。最後の曲の途中で気付いたら、わーっとなってて……。そういうライブ、たくさんできたらいいよね(笑)。

──今のお2人のお話、状況はまったく対照的ですけど、両方ともある意味で極限状態に追い込まれて、余計な自我が抜けて無意識のうちにいいライブができたっていう点で共通点がありますね。

TOSHI-LOW 歌そのものになってるっていう。自分がね。

──そういう状況になることって珍しいんですか?

TOSHI-LOW 俺はそのときしかたぶん、ないかな。気持ちいいなって思うときはあるけど、そこまでいけたことはない。

──ボーカリストは余計な自意識があると、なかなか最高のパフォーマンスにならないと思いますけど、めったにそうはならないと。

TOSHI-LOW ね。できるだけ歌だけに集中したいと思っても、なんか気になっちゃう……。

ハナレグミ

永積 いや、でもね、単純に人の前で歌を歌うって、それだけで大きいよね。そこでなんかを手放すとかさ、力を抜くっていうことは……すごい……。

TOSHI-LOW ……怖いよね(笑)。

──長年やっててもそうですか。

永積 そうですねえ。どうしたって「うまく歌おう」って意識はなかなか抜けないし……すぐ歌詞が飛んだりするから、飛ばないようにって(笑)。

TOSHI-LOW 飛ぶよねえ(笑)。ちゃんと歌えてるんだけど、飛ぶんじゃないかって気になって展開を間違えたりさ(笑)。

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDニューアルバム「FOLLOW THE DREAM」 / 2014年9月3日発売 / NOFRAMES
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「FOLLOW THE DREAM」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / TFCC-86487
通常盤 [CD] / 2800円 / TFCC-86488
CD収録曲
  1. Follow The Dream
  2. Broken Glass
  3. 夢の跡
  4. Blind Moonlight
  5. Making Time
  6. Pilgrimage~聖地巡礼~
  1. Ride Today
  2. N.A.C
  3. Treason Song
  4. Clumsy Queen “Isabella”
  5. 朝焼けの歌
  6. Question
初回限定盤DVD収録内容
  • 「New Acoustic Camp」のハイライトを集めたライブ&ダイジェスト映像
  • 未公開MVを含むMUSIC CLIPS
  • Making Time
  • 夢の跡
  • otherwhere
  • New Tale
  • all the way
  • Thank You
  • Dissonant Melody

「New Acoustic Camp 2014」

2014年9月13日(土)群馬県 水上高原リゾート200

<出演者>

Stage YONDER
SOIL & "PIMP" SESSIONS / the band apart / 安藤裕子 / Mini-Atus / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
Stage HERE
奇妙礼太郎 / 押尾コータロー / ハナレグミ with U-zhaan / Caravan(New Acoustic Candle) / 中納良恵(New Acoustic Candle)
Stage VIA
くもゆき / T字路s / つじあやの / 武藤昭平 with ウエノコウジ
2014年9月14日(日)群馬県 水上高原リゾート200

<出演者>

Stage YONDER
YOUR SONG IS GOOD / 片平里菜 / フラワーカンパニーズ / スガシカオ / EGO-WRAPPIN'
Stage HERE
Johnsons Motorcar / orange pekoe / salyu×salyu / 真心ブラザーズ
Stage VIA
石崎ひゅーい / mabanua with 関口シンゴ / Predawn
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
TOUR 2014 -FOLLOW THE DREAM-
2014年10月6日(月)沖縄県 島野菜カフェリハロウビーチ
2014年10月11日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
2014年10月12日(日)高崎県 高崎club FLEEZ
2014年10月17日(金)宮城県 darwin
2014年10月19日(日)福島県 AREA559
2014年10月23日(木)新潟県 ジョイアミーア
2014年10月24日(金)長野県 まつもと市民芸術館 小ホール
2014年10月31日(金)大阪府 Shangri-La
2014年11月1日(土)京都府 GROWLY
2014年11月2日(日)岡山県 ルネスホール
2014年11月4日(火)広島県 広島CLUB QUATTRO
2014年11月7日(金)福岡県 THE Voodoo Lounge
2014年11月9日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
2014年11月15日(土)愛知県 Tokuzo
2014年11月21日(金)東京都 EX THEATER ROPPONGI
2014年11月29日(土)宮城県 BLUE RESISTANCE
2014年11月30日(日)岩手県 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
(オーバーグラウンドアコースティックアンダーグラウンド)

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

BRAHMANのメンバー4人とスコットランド系アメリカ人のMARTIN(Vo, Violin, G)、KAKUEI(Per)の6人からなるアコースティックバンド。TOSHI-LOW(BRAHMAN)と MARTINの出会いをきっかけに、2005年6月に結成される。2005年にオムニバス盤「The Basement Tracks-10YEARS SOUND TRACK OF 7STARS」に初音源「Dissonant Melody」を提供し、2006年に1stアルバム「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND」にてデビュー。その後もBRAHMANや個々の活動と並行して定期的なライブツアーを行い、2010年からは野外フェス「New Acoustic Camp」のオーガナイザーを務める。2014年9月、約5年ぶりのフルアルバム「FOLLOW THE DREAM」をリリースした。

ハナレグミ

ハナレグミ

1974年東京生まれの永積 崇(ex. SUPER BUTTER DOG)によるソロユニット。2002年11月に1stアルバム「音タイム」をリリースし、そのおだやかな歌声が好評を得る。2005年9月には 東京・小金井公園でフリーライブ「hana-uta fes.」を開催し、台風に伴う大雨にもかかわらず約2万人の観客を集めた。2009年6月に4年半ぶりとなるアルバム「あいのわ」をリリースし、ツアーファイナルの日本武道館公演を成功させる。2011年9月には5thアルバム「オアシス」を発表。2013年5月リリースのカバーアルバム「だれそかれそ」では多くの名曲をさまざまなアプローチで歌い上げ、ボーカリストとしての力量を見せている。