音楽ナタリー PowerPush - OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

TOSHI-LOW×ハナレグミ対談

アコースティックはお互いの距離や余韻が大事

──ところで今回のアルバムなんですが、制作はどんな感じで進行したんでしょう。

TOSHI-LOW 今年に入って、作ろうかって。それまで2曲ぐらいしかなかったけど、作り出したらわりとあっという間。そうしてるうちにBRAHMANのツアーが始まっちゃったけど、さっきも言った通り、それまでは別個のものだと思ってたものが根っこは同じだと気付いたら同時にできるようになって。みんな10年間アコースティックな音楽をやり続けて、アコースティックな音楽の形態とか楽器の鳴らし方がわかってきたみたいで。各個人がすごく変わって……うまくなったっていうより、わかってきたっていうか。時間かかったけどね。でも今みんなでやっていてすごく楽しい。

永積 へえ。OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDはBRAHMANと同じぐらいの時期に始めたの?

TOSHI-LOW いや、2005年ぐらいに始めたのかな。最初はマーティンって外人のやつと2人でやるつもりだったんだけどうまくいかなくて。じゃあバンドにするかってことでミュージシャンの仲間を集めたら、BRAHMANのメンバーだったっていう。

──交友関係が狭い(笑)。

TOSHI-LOW

TOSHI-LOW 狭すぎる(笑)。あれ、同じ人だっていう(笑)。みんなプレイヤーとしてはアコースティックな音楽に興味はあるんだけど、ラウドな音楽しかやったことなかったから、初めは何もわからなくて、みんなフルショットでやっちゃう。マーティンは3歳ぐらいからバイオリンやってて、アコースティックの世界から来たから、全然合わなくて最初は大ゲンカで(笑)。「何も聞こえねえ!」「うるせえバカ!」みたいな(笑)。そこから始まったからね。今は面白いねえ。みんなやりやすそうにやってるし。

永積 へえー、なるほどねえ。

──アコースティックな音楽はアンサンブルが固まるまで時間がかかるんですかね。

TOSHI-LOW うん。衝動でガーッとやってよくなるもんじゃないしね。

永積 余韻とかで完成するもののような気がするよね、アコースティックな音楽は。エレキは瞬発的なぶつかり合いで完成するけど、アコースティックってお互いの距離とか余韻が大事で、みんなの出した音が混ざり合って、ここらへん(宙の一点を指して)で鳴ってる感じだよね。

TOSHI-LOW 鳴りみたいなものがわかってくると、こんな気持ちいいんだなって。自分でやりながら勝手に癒やされてたりしてね。バンドのストレスがOAUをやることですーっと抜けていくし、こっちをやってると、ムラムラしてきてもっとガーンといきたくなる。そこでうまく循環できてて。今まで自分をミュージシャンとして見てなかったけど、弾き語りやセッションもやるようになったから、今はすごく楽しいね。

──アウトプットがBRAHMANだけじゃなくていっぱいあるから、楽しみが増えたという感じでしょうか。

TOSHI-LOW うん。毎日音楽に触れてることも楽しいし。もともと自分の声とか好きじゃなかったし、歌もうまくねえからってあきらめてた部分はあったけど、そうじゃなくて声が自分の楽器なんだって気付いてから、トレーニングとか努力じゃなくて、自然に楽しいことができるようになれればいいなと素直に思えるようになったし。それが日々少しずつできているっていうのは、すごく楽しいよね。……ダメ?(笑) らしくねえかなあ……(笑)。

永積 わはははは!(笑) でもすごくわかるよ。

事務的なフェスなんて面白くない

──永積さんは「New Acoustic Camp」は今回初めてのご出演なんですね。

永積 そう。去年富山のライブで一緒になって、そのときTOSHI-LOWくんと話して、誘ってもらって。ぜひ!と。

TOSHI-LOW 直接話したら快諾してくれて。返事早かったなー(笑)。うれしかった。

永積 場所が楽しみだよね。前から興味があったし、どういうことやってるのかなって。単純に客としても楽しみです。もう5年目だっけ?

TOSHI-LOW うん。場所変えて3年目かな。

──全員でキャンプするんですよね。

TOSHI-LOW そう。やっぱり不確定なフェスが楽しいから、自分たちで自分たちの面倒を見て楽しむことができる人だけ来てくださいと。セキュリティも今のところ俺しかいないからさ(笑)。

永積 わはははは!(笑)

TOSHI-LOW 俺すごく忙しいんだ、夜。バット持って見回りしなきゃいけないから(笑)。

──始めたきっかけは、いろんなフェスに出られて、不満みたいなものを感じたからということですか?

TOSHI-LOW 何もかもシステム化された事務的なフェスなんて面白くないじゃない? (永積に向かって)フェスはけっこう昔から出てたよね?

ハナレグミ

永積 10年ぐらい前からかな。バタードッグが解散したぐらいのタイミングで、フジロックにハナレグミで初めて出させてもらって。

TOSHI-LOW 90年代のフェスとかめちゃくちゃだったからさ。「AIR JAM」とかね。俺らがフジロックに初めて出たのは、まだFIELD OF HEAVENまでしかなかった頃で。あの頃はいろいろめちゃくちゃで楽しかったなあ(笑)。今は食券みたいなの渡されて、「お疲れさまでしたー」みたいな。楽しかったあのときの感じはなくなっちゃったなあ。

──規模が大きくなって出演アーティストの数が増えると、ある程度システマチックに回していかないとやっていけないっていうのはあるだろうけど。

TOSHI-LOW そうだし、集客うんぬんって話になってくると、やれあれも出そうこれも出そうって話になって。アイドルも出して。アイドル出したはいいがサイリウム振らないでくださいみたいな話になるし。ダイブしないでくださいとかさ(笑)。こんなに規制するんだ!ってぐらい規制するから。何がイヤだって、確かに危険な行為うんぬんって言われたらそういう考えもあるけどさ、人の踊り方まで規制することねえだろうっていうのがあるからさ。俺らライブハウス出身だから、もちろんケガもするし、ふと気付くと上からベンチが降ってきたりとかさ(笑)。それでも楽しかったし、裁判沙汰になることなんてなかったし……だから根本は、フィールドがあって、そこでは自由に何をしてもいいけど、その代わり自分がすることにはちゃんと誇りと責任を持ってくれればいい、と思ってて。だから今年はけっこう勝負だなと思ってる。ていうのは、ソールドアウトしてしまって。そんなつもりなかったんだよ。小規模でこそっとやってるはずだったのが、人数が増えてそれを維持できるかどうか。

永積 ああ、来てくれる人の数が増えたときに。

TOSHI-LOW そう。そこで、それまでのユルい雰囲気のままでやれるのかどうか。はみ出る人も現れる可能性はあるだろうし。でも来た人がみんなそれぞれ意識を持ってくれたら、最高だなと思うんだよね。俺は音楽が好きなやつはそれぞれ自由の意味や責任をちゃんと理解してるって信じてるからさ。そういう人たちが来てくれて、音楽を楽しむ最高の環境をそれぞれが作ってくれて、つつがなく終わってくれれば最高だなって思う。

──昔は山の中の小規模なレイブパーティってよくあったけど、最近はあまり聞かないですよね。いろいろ世間の目もあって、規制も厳しくなってますからね。

TOSHI-LOW ねえ。なんか社会自体の閉塞感が急激に強まってるでしょ。ダンス規制法だったり。「えーっ、70年前ぐらいの法律引っ張り出して、なんで今踊れないの?」とかさ。ビーチでも音を出しちゃダメとか。その閉塞感に対して、自分が大切にしたい、自由でありたいっていう表現方法に奇しくもなってしまったってのが、「New Acoustic Camp」でもあるっていう。

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDニューアルバム「FOLLOW THE DREAM」 / 2014年9月3日発売 / NOFRAMES
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「FOLLOW THE DREAM」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / TFCC-86487
通常盤 [CD] / 2800円 / TFCC-86488
CD収録曲
  1. Follow The Dream
  2. Broken Glass
  3. 夢の跡
  4. Blind Moonlight
  5. Making Time
  6. Pilgrimage~聖地巡礼~
  1. Ride Today
  2. N.A.C
  3. Treason Song
  4. Clumsy Queen “Isabella”
  5. 朝焼けの歌
  6. Question
初回限定盤DVD収録内容
  • 「New Acoustic Camp」のハイライトを集めたライブ&ダイジェスト映像
  • 未公開MVを含むMUSIC CLIPS
  • Making Time
  • 夢の跡
  • otherwhere
  • New Tale
  • all the way
  • Thank You
  • Dissonant Melody

「New Acoustic Camp 2014」

2014年9月13日(土)群馬県 水上高原リゾート200

<出演者>

Stage YONDER
SOIL & "PIMP" SESSIONS / the band apart / 安藤裕子 / Mini-Atus / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
Stage HERE
奇妙礼太郎 / 押尾コータロー / ハナレグミ with U-zhaan / Caravan(New Acoustic Candle) / 中納良恵(New Acoustic Candle)
Stage VIA
くもゆき / T字路s / つじあやの / 武藤昭平 with ウエノコウジ
2014年9月14日(日)群馬県 水上高原リゾート200

<出演者>

Stage YONDER
YOUR SONG IS GOOD / 片平里菜 / フラワーカンパニーズ / スガシカオ / EGO-WRAPPIN'
Stage HERE
Johnsons Motorcar / orange pekoe / salyu×salyu / 真心ブラザーズ
Stage VIA
石崎ひゅーい / mabanua with 関口シンゴ / Predawn
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
TOUR 2014 -FOLLOW THE DREAM-
2014年10月6日(月)沖縄県 島野菜カフェリハロウビーチ
2014年10月11日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
2014年10月12日(日)高崎県 高崎club FLEEZ
2014年10月17日(金)宮城県 darwin
2014年10月19日(日)福島県 AREA559
2014年10月23日(木)新潟県 ジョイアミーア
2014年10月24日(金)長野県 まつもと市民芸術館 小ホール
2014年10月31日(金)大阪府 Shangri-La
2014年11月1日(土)京都府 GROWLY
2014年11月2日(日)岡山県 ルネスホール
2014年11月4日(火)広島県 広島CLUB QUATTRO
2014年11月7日(金)福岡県 THE Voodoo Lounge
2014年11月9日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
2014年11月15日(土)愛知県 Tokuzo
2014年11月21日(金)東京都 EX THEATER ROPPONGI
2014年11月29日(土)宮城県 BLUE RESISTANCE
2014年11月30日(日)岩手県 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
(オーバーグラウンドアコースティックアンダーグラウンド)

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

BRAHMANのメンバー4人とスコットランド系アメリカ人のMARTIN(Vo, Violin, G)、KAKUEI(Per)の6人からなるアコースティックバンド。TOSHI-LOW(BRAHMAN)と MARTINの出会いをきっかけに、2005年6月に結成される。2005年にオムニバス盤「The Basement Tracks-10YEARS SOUND TRACK OF 7STARS」に初音源「Dissonant Melody」を提供し、2006年に1stアルバム「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND」にてデビュー。その後もBRAHMANや個々の活動と並行して定期的なライブツアーを行い、2010年からは野外フェス「New Acoustic Camp」のオーガナイザーを務める。2014年9月、約5年ぶりのフルアルバム「FOLLOW THE DREAM」をリリースした。

ハナレグミ

ハナレグミ

1974年東京生まれの永積 崇(ex. SUPER BUTTER DOG)によるソロユニット。2002年11月に1stアルバム「音タイム」をリリースし、そのおだやかな歌声が好評を得る。2005年9月には 東京・小金井公園でフリーライブ「hana-uta fes.」を開催し、台風に伴う大雨にもかかわらず約2万人の観客を集めた。2009年6月に4年半ぶりとなるアルバム「あいのわ」をリリースし、ツアーファイナルの日本武道館公演を成功させる。2011年9月には5thアルバム「オアシス」を発表。2013年5月リリースのカバーアルバム「だれそかれそ」では多くの名曲をさまざまなアプローチで歌い上げ、ボーカリストとしての力量を見せている。