にゃんぞぬデシ|なめられがちな人へ送る応援歌

狛江さんの生きざまに涙

──新曲「勘違い心拍数」には「大人しい人と言われるが 言葉を留めてるだけなんだ」という歌詞があります。

大人しそうに見える人も絶対、心の中ではいろいろ考えてるはずだなって。あの、なめられることがときどきあって、見くびってくる奴にすっごい腹立つんですよね。そういうときは「実はこっちのほうが上手なのではないか」と思うようにしてるんです。相手は「口や態度には出さないけど本当はいろいろ考えてる人だ」なんて思いもしないから、なめてくるわけで。

──想像力の違いですね。今日は言葉を留めないで話してください。

かしこまりました(笑)。

──そのテーマにはドラマの内容も関係していますか?

はい。ムロツヨシさんが演じてらっしゃる狛江光雄さんっていう方が主人公で、広告会社に勤めるサラリーマンなんです。狛江さんは、上司が会社の偉い人の娘さんと結婚して昇進したのを、陰で「コネで出世したな」みたいに言ったんですよ。それを聞きつけた上司の怒りを買って、潰れる寸前の支社に左遷されて。荒んだ街でやる気のない同僚に囲まれて、それでもがんばろうとするんですけど、初めての仕事で印刷ミスをしてしまうんです。発注元もヤクザさん、間違えた電話番号も別のヤクザさんの店で、狛江さんは双方の板挟みになってしまって……。

──面白そう!

狛江さんは会社でもヘコヘコしてるし、家族にも冷遇されてるんですよ。転勤先に向かう飛行機で人生の勝ち組みたいな人と隣りになって、真ん中のひじ掛けを取り合って負けちゃうシーンがあるんですけど、台本を読みながら泣いてしまって(笑)。ちょうど私、すごく頭がいい子と友達になったばっかりだったんです。「同じ人間で、同い年なのに、どうしてこんなにできる人間とできない人間で差があるんだろう。」と思って落ち込んでたんですよ。そのときに台本を読んだから「私、狛江さんだ……」と思いがあふれてしまいました。

──ひじ掛け、隣の席との間に1つしかないですからね。

2つ欲しいですよね。

──あれを疑問なく堂々と占有できるのは、さっき言っていた「なめてくるやつ」みたいなタイプの人でしょう。デシさんは狛江さんに共感したんですね。

そうですね……いつもヘラヘラしている私のせいなんですけど。

──そんなことないですよ。

他人の気持ちを考えないで平気で攻撃できる人と、その人にやられてしまう人では、神経を使ってる量が全然違うと思うんです。同じ生き物だから、神経を使っているほうがより生きていることを実感できると思ったんですよ。そういう人たちを応援したいと思い、この曲を作りました。

──素晴らしい。「ドキュンドキュンバキュンバキュンさせて」の擬音もすごく印象に残ります。

ドラマのオープニングで流れるから、疾走感を持たせたかったんです。心が盛り上がると、すごくドキドキしますよね。いいときだけじゃなくて、嫌なときも動悸がするし。その心理を表現できる言葉がいいと思って。それこそなめてくる人から感じる圧って、拳銃で撃たれたように嫌なんですね。

──なるほど。「バキュンバキュン」は調子のいい音ってだけじゃなくて、ちゃんと意味があるんですね。

ここは最初にできたところですね。ドラマのイメージと自分の実体験が重なったんだと思います。けっこう歌詞と曲が同時にできることが多いんです。

柏倉さんは人間じゃないかも

にゃんぞぬデシ

──美濃隆章さんのアレンジも絶妙ですね。

曲ができたときは、歌詞もポップだからアレンジもポップなのがいいと思ってたんです。でも、スタッフの皆さんから「ポップにポップを重ねたらくどくなって、逆に耳に残らなくなっちゃう。もっとセンシティブなアレンジがいいんじゃないか」という話が出て、美濃さんに初めてアレンジをお願いしました。デモを聴いたときは「今までなかったものだ! 革命的!」と思いましたね。何回か聴いてるうちにクセになるというか、何回も聴きたくなるんですよ。アイゴン(會田茂一)さんや村田(シゲ)さん、柏倉(隆史)さん、中村(圭作)さんが演奏をしてくださったんです。打ち込みのデモから生音になると疾走感が全然違って。「速さとか同じなのに、こんなに変わるんだ!」とびっくりしました。

──どういうところが変わりましたか?

にゃんぞぬデシ

ドラムの柏倉(隆史)さんがゴーストノートという譜面上にはない音をたくさん入れてくださって。どうやって手を動かしてるんだろうと思ってマネしてみたんですけど、全然できないんですよ。柏倉さんは人間じゃないかもしれないです(笑)。皆さん演奏技術が本当にすごすぎて、最高の洋服を曲に着せてくださったなと思いました。これまでの曲は歌詞、メロディ、歌い方、アレンジが全部同じ方向に進んでいたんですけど、「勘違い心拍数」ではいろんな要素を別々の方向性にして組み合わせていったら大きな化学的な反応があるんだと思ったので、さまざまなアーティストの方々と曲作りをしてみたいです。

──ジャケット写真も可愛いですね。

アートディレクターの木村豊さんが撮ってくださったんです。私がスピッツさんにハマったきっかけが「花鳥風月」というアルバムを中学1年生のときにジャケ買いしたことをきっかけに、音楽をやりたいなと思うようになったんです。そのジャケットをデザインしていらした木村さんさんが……と思うと、めちゃめちゃうれしいです。

卒業文集に書いた3つの夢

──最後に今後の目標、将来の夢を伺ってもいいですか?

私、高校の卒業文集に夢を3つ書いたんです。「『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』のGRASS STAGEに7年連続で立つ」「楽曲を提供する」「音楽で稼いだお金で一軒家を建てる」って。そのうち楽曲提供は夢が叶ったんですよ。DISH//さんに「どういうことなんだい?」(2018年2月発売「勝手にMY SOUL」のカップリング)を提供させていただいたりしました。いつか、女性のアーティストに書きたいなっていう密かな夢があります。

──具体的にこのアーティストに、というのは?

(食い気味に)原田知世さん! あの、作詞はご自分でなさると思うので、曲をご一緒に作ってみたいです。

──「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の「7年」という数字はどこからきたんでしょう。

高3のときに「RO69JACK」(現在は「RO JACK」)っていうコンテストに応募したんです。優勝したら「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に出れるんですけど、入賞までしかいけなくて。そのとき「絶対に1回だけじゃなくて何年も出場するアーティストになる!」と決意したんです。ステージの規模も上がり下がりするシビアな世界なので、1回だけじゃなくて長く愛される音楽を作っていきたいですね。