ナタリー PowerPush - 野沢雅子×「ROCKMAN HOLIC ~the 25th Anniversary~」
「ロックマン」25周年盤にまさかの大御所! キャラクターソングと女優人生
「野沢雅子伝説」の真実
──女優というお仕事、さらには声優というお仕事が、ここまで長くご自身の人生にかかわるものになるとは、当時はさすがに考えていなかったですよね。
そうね。でも今は、どこまで続けたい、何歳までやりたいという目標はなくて、私はいつも「ギネスブックに載るまで続ける」って思ってるんです。それは声優としてというよりも、ひとりの女優として、役者としてですね。それが目標でずっとここまで続けてきたんです。……今も思い出すのがね、学芸会の舞台に立った小学生のときに姿見の前に立って「私は女優で行く!」ってつぶやいたの(笑)。何を思ってそう言ったのかわからないけど、あの頃からずっと「お芝居は楽しい!」という気持ちは変わらないですね。
──本当に楽しくお仕事されていますよね。以前噂で聞いたのですが、自宅が大火事に遭われたときも何事もなく収録現場に向かったというのは本当ですか?
あはは(笑)。それはねー、あるとき家が丸焼けになっちゃったんですよ。もらい火で16軒焼けちゃったんです。朝から警察にいろいろ事情を聞かれるんだけど、その日は朝早くから「タイガーマスク」の収録で。とにかく早く事情聴取を終わらせてもらったんだけど、今度は着ていく服がないの(笑)。そしたら娘のお友達のママが代わりを持ってきてくれてね。ただ、そのママがとっても体格のいい方で……。
──ははははは(笑)。
サイズが全然合わないから、ズボンを履いて手を離すとストンと落ちちゃう(笑)。慌てて腰ヒモで縛って飛び出したんだけど、結局5分ほど遅刻しちゃったんです……。事情は話さずとにかく「すみませんでした」と謝って、すぐに収録をして。なんとか無事収録を終えたところで「実は今日お家が火事になって……。だからお洋服もこんなにブカブカで」ってお話したらビックリされちゃいましたけど。
──「野沢雅子さんは遅刻をしない」というのも有名なエピソードですが、火事のときまで! すみません、もうひとつこの機会にぜひ検証しておきたい噂がありまして。「いなかっぺ大将」の風大左衛門くんの声でゴリラのノイローゼが治ったというのは……。
あっはっは(笑)。それは私が直接ゴリラに会ったんじゃないんですよ。上野動物園のゴリラがノイローゼになっちゃって、飼育員さんがいろんな治療をしたんだけど治らなかったの。そのゴリラは元々テレビが大好きで、なぜか「いなかっぺ大将」をやってるとじーっと観てたんですって(笑)。だから「大左衛門くんを見せたら治るんじゃないか」って。それで試してみたら治ったらしいんですよ。
──へえー(笑)。なぜなんでしょうね? 声の周波数が良かったとか。
なんなんでしょう。音やテンポの波長が合ったんですかね。あと大左衛門くんはグルグルーッって回ったりするじゃない? それがゴリラにとっても楽しいのかも。
今は“ガヤ”をやるのがすっごく楽しい
──今まで声を当ててきた役で、これは難しかったという役柄はありますか?
きっとその都度感じているとは思っているんだけど、作品として完成したときの喜びが大きいから印象として残らないんですよ。易しいと思ってやってはいないですよ? でもキャラクターが動き出したら、もう楽しさしか残らない。どんな役だって楽しいんですよ。たとえ一言だって。今は“ガヤ”をやるのがすっごく楽しくて(笑)。
──「その他大勢」みたいな役どころですね。
「ガヤ録りまーす」って言われるとすぐに立つんですよ。すると怒られるの。「野沢さんやめてください、目立つから」って(笑)。それでも後ろ向きで、ガラスに写った画面を観ながらやるんです。
──実はガヤの中にこっそり野沢さんがいる(笑)。
気付いたよって人も多いんですよ。「えー、そう? ダメダメ、ガヤなんだからわかっちゃダメ」って反省するんです。
──野沢さんクラスになると、制作サイドだってどうしても主役級の役でお願いしたくなるでしょうけど、ご本人としては脇役のほうを演じたいということもあるでしょうね。
そうなんです! 主役というのはひとつの物語の中で、ある一定の枠からはみ出せないものなんですよ。はみ出しちゃいけない。それを脇から思いっきり盛り上げるのが脇役ですから、いろんなことができるんです。面白いですよー。
──今日お話を聞いてますます感じたのですが、野沢さんは誰もが認めるトップであるにもかかわらず、非常に軽やかに活動されているイメージがあるんですね。今回のアルバムへの参加もそうですが、大御所さんなのになんてフットワークの軽い方だと。
ずっとお仕事してるからみんなの先輩ですし、言われてたら確かに「大御所」かもしれないですけど、そんなに意識したことはないんですよ。だって、みんな自然と歳は取るわけでしょう? 大御所なんてとてもじゃないですよ(笑)。
何事も一生懸命な人が好き
──それでは最後に、野沢さんの最新の役柄であるカットマンくんとして「カットマンブルース」のおすすめポイントを教えてもらえますか?
私ね、この「三角跳びだ!」ってのが大好きなんです。これがこの子の一番やりたいことなんですよ。子供だったら子供らしく生きようよって思うんですね(笑)。
──野沢さんの「三角跳びだーい!!」っていうやんちゃな歌い方がまたぴったりなんですよね(笑)。
カットマンくんはロックマンくんのことを尊敬してるけど、「尊敬」って言葉は大人から見たものであって、カットマンくんにとってはただ「大好き!」っていう気持ちだけで動いてるんですよね。「とことんやるだけッス」とかね、そういう言葉がカットマンくんにはぴったり。ただし憧れ、すばらしさ……は心の中に常に定着しているカットマンくん。
──一直線で、前のめりで走っていくみたいな。
一生懸命なところが出ていますよね、子供なりに。何事も一生懸命な人が私は好きなんです。勉強であっても遊びであっても一生懸命。遊びだから適当になんてイヤじゃない? そういうカットマンくんが大好きです。
──この曲を機会に、幅広い世代のファンが「歌手・野沢雅子」により注目するのではないかと思いますが……。
しないでください! 本当に(笑)。
- SOUND HOLIC ニューアルバム「ROCKMAN HOLIC ~the 25th Anniversary~」/ 2012年12月19日発売 / 1980円 / FlyingDog / VTCL-60322
- SOUND HOLIC ニューアルバム「ROCKMAN HOLIC ~the 25th Anniversary~」
収録曲
- GAME START
[ロックマン2より:OPENING / TITLE / STAGE SELECT / GAME START / METALMAN STAGE / STAFF ROLL] - X-Buster
[ロックマンX5より:X vs Zero / Zero Stage 1 / Opening Theme] - Shooting Star
[ロックマン10より:NITRO RIDER(NITRO MAN STAGE)] - 黄昏ロンリネス
[ロックマン5より:DARKMAN STAGE] - NAPALM JAZZ
[ロックマン5より:NAPALMMAN STAGE] - BLIZZARD
[ロックマン6より:BLIZZARDMAN STAGE] - We're The Robots
[ロックマン9より:WE'RE THE ROBOTS(DR.WILY STAGE2)] - GALAXY FANTASY
[ロックマン9より:GALAXY FANTASY(GALAXY MAN STAGE)] - カットマンブルース
[ロックマン1より:CUTMAN STAGE] - Dr.Wily Numbers 022
[ロックマン3より:TITLE / SNAKEMAN STAGE / BOSS / GET A WEAPON] - Flash in the Dark
[ロックマン9より:FLASH IN THE DARK(DR.WILY STAGE 1)] - Together As One
[ロックマン2より:Dr.WILY STAGE 1] - THE LAST BATTLE
[ロックマン5より:Dr.WILY STAGE/LAST BOSS] - エアーマンが倒せない(SOUND HOLIC Ver.)
[「エアーマンが倒せない」リアレンジ] - 太陽はいつも君のそばに
[ロックマンX3より:Ending / Cast Roll] - RELOADED
[SOUND HOLIC オリジナル]
野沢雅子 (のざわまさこ)
10月25日生まれの女優、声優。3歳で映画デビューを果たし、中学生時代に劇団に入団。高校卒業後より本格的に女優業を行い、テレビ放送の洋画吹替を機に声優としての活動もスタートさせた。国内アニメ第1作「鉄腕アトム」よりさまざまなアニメに出演し、1968年放送の「ゲゲゲの鬼太郎」でアニメ初主演。「いなかっぺ大将」風大左衛門や「ど根性ガエル」ひろし、「あらいぐまラスカル」ラスカルなど数多くの人気アニメで主要キャラクターを担当した。1978年には「銀河鉄道999」の星野鉄郎、1980年には「怪物くん」怪物太郎を熱演。1986年からは「ドラゴンボール」シリーズで主人公の孫悟空と、その子孫である孫悟飯、孫悟天を長きにわたり演じ、代表作のひとつとなった。「いなかっぺ大将」や「怪物くん」「ドラゴンボール」では主題歌、キャラクターソングも担当。2012年12月19日リリースの人気ゲーム「ロックマン」25周年記念アルバム「ROCKMAN HOLIC ~the 25th Anniversary~」ではSOUND HOLICのプロデュースのもと、収録曲「カットマンブルース」でボーカルを務めている。