ナタリー PowerPush - NOVELS

米たにヨシトモ×田村一彦と語る映画OP曲「アースダイバー」

NOVELSの曲は映像が浮かんでくる

──映像面についても訊かせてください。アニメのオープニング映像を作る作業というのは、実際どんな感じなんでしょうか?

竹内 それ僕も気になってました。頭から順番にやっていくのか、フレーズごとに当てて、その間をつないでいく感じなのか……。

米たに 難しい質問ですねえ。人によってやり方はさまざまだと思うんですけど、自分はまず右脳を使って感覚でやりたい絵を作って、で「左脳くんあとよろしく」みたいな。

映画「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」のワンシーン。(c)SUNRISE/T&B MOVIE PARTNERS

竹内 あとから辻褄を合わせていくんですね。

米たに 1秒を24分割したコマ単位で音楽を合わせていくんですけど、アニメは膨大な量のコマがあるので、それがハマるとすごい気持ちいいんですよ。今回だとイントロの「デデデデデデ♪」という出だしに合わせてヒーローが次々出てくる絵がガチッとハマったときはホントに気持ちよかった。

吉田 僕らも作りながら「このフレーズにはこんな絵を当てたいな」とか勝手に想像したりしてましたね。サビの直前に「ダダッ」っていうドラムの音が入るんですけど、そこに合わせてロックバイソン(※ヒーローの1人)が登場したときは「やっぱそうきたよね」と(笑)。絶対パンチの効いた絵を合わせてくるだろうなと思ってたので、予想が的中してうれしかったです。

田村 オープニングってたった数分ですけど、かなり大変な作業なんですよ。曲に合わせて作るのは当然なんですけど、主要キャラクターの登場時間は均等に見せないといけなかったり、サビの部分にたどり着くまでにひと通りのキャラ紹介を終わらせないといけなかったり。あとこれは「タイバニ」ならではの悩みごとですが、「オープニングでしっかりスポンサーロゴを見せる」というルールがありまして。

竹内 全部のスポンサーロゴをちゃんと見せないといけないんですよね。

田村 そうなんです。描くべきシーンっていうのがかなり細かくあるんですよ。

米たに NOVELSさんにも無理難題を押し付けたよね(笑)。

竹内 確かに(笑)。僕ら本録りの前に、映画のオープニング用バージョンを録ったんですよ。1番のAメロ、Bメロ、サビまでの短いバージョンを。で、最初は「Bメロは半分に」っていう話だったので、Bメロを短くして録ったんですけど、そしたら「企業ロゴを見せる時間が足りないからBメロフルでください」って言われて(笑)。

米たに お手数おかけしまして(笑)。いやでも、NOVELSさんの曲は「ミッシングリンク」のときもそうでしたけども、聴いてて映像が浮かんでくるというか、イメージが湧きやすくて作りやすいですよ。

映画「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」のワンシーン。(c)SUNRISE/T&B MOVIE PARTNERS

竹内 ありがとうございます。

田村 米たにさんは「ミッシングリンク」の絵コンテも担当でしたしね。

米たに 自慢ですよ。NOVELSさんの「TIGER & BUNNY」絵コンテは宇宙で俺しか描いてない!って。

竹内 光栄です(笑)。

──次回作も楽しみですね。

竹内 次回作はテレビシリーズの続きを描くんですよね?

田村 はい、25話以降の話です。どんな内容になるかはまだ言えませんが、ポスターも解禁されましたし、まずはあの絵から想像してもらえたらうれしいですね。

吉田 勝手に想像してみます(笑)。

自分にとっての“ヒーロー”とは?

──最後に「TIGER & BUNNY」はヒーローの活躍を描く作品ということで、皆さんが考えるヒーロー像はどんなものか訊かせてください。

映画「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」のワンシーン。(c)SUNRISE/T&B MOVIE PARTNERS

竹内 ヒーローか……難しいなあ。ミュージシャンの僕にとってのヒーローは音楽を始めるきっかけになったカート・コバーンで。でも父親も僕にとってはヒーローだし、デビュー曲「ミッシングリンク」を「TIGER & BUNNY」のオープニングに起用してくださったサンライズさんもヒーローですし。普遍的で自分にとって活動源になるものがヒーローかな。

吉田 僕も形があるものというよりは考え方みたいなものかなと。そのときの状況や立場で何に魅力を感じるかは変わってくると思いますし。今の僕にとっては、やっぱりお客さんがヒーローかな。「WORLD PREMIERE」のステージもそうでしたし、普段のライブもそうですけど、お客さんありきなんですよね。観に来てくれるから、応援してくれるから僕らはやっていけるので。生かされるっていうのは言い過ぎかもしれないですけど、それに近いものがあると思いますね。音楽活動を始めてからずっと、ファンの方は僕らのヒーローですね。って……いいこと言ったよね?(笑)

竹内 うん(笑)。

田村 素晴らしいです(笑)。僕にとってはこの「TIGER & BUNNY」に関わってくださる人たちがヒーローです。スタッフたちはつらい中でも緻密な映像を作ってくれていて、楽曲を提供してくださるアーティストさんも「タイバニ」のために作ってくださって、そういう中で作品が生まれていく。関わっている方々1人ひとりの努力が作品を生み出していると思っているので。

米たに 本当に応援してくれる人のパワーによって我々は戦えるというところがありますよ。出来上がった作品を観てお客さんが「自分もがんばろう」と思ってもらえれば、作っている私たちも力になるし。回り回って最終的にはみんながヒーローなんだよね。

NOVELS 『アースダイバー』Music Video

LIVE INFORMATION
Dive at 終わらない瞬間捜索ツアー

2012年10月26日(金)
大阪府 福島LIVE SQUARE 2nd LINE

2012年10月30日(火)
愛知県 名古屋 APOLLO THEATER

プロフィール画像

NOVELS(のべるず)

竹内真央(Vo, G)、楠本正明(G)、山田裕起(B)、吉田翔人(Dr)の4人からなるロックバンド。全員、現在も出身地である愛知県在住。2007年10月に結成され、インディーズでシングル「鏡の国の二人e.p.」「Wiz e.p.」、アルバム「From the bad lands for Mrs. Witherspoon」「My blood is Your blood.」をリリースし、歌詞の深遠な世界観と確かな演奏力で徐々に人気を博す。2011年8月に、テレビアニメ「TIGER & BUNNY」のオープニングテーマ曲「ミッシングリンク」にてトイズファクトリー / muff toneよりメジャーデビュー。同年10月にメジャー1stアルバム「cardioid」を発表する。2012年9月に映画「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」のオープニングテーマとして書き下ろした「アースダイバー」をシングルとしてリリース。

米たにヨシトモ(よねたによしとも)

東京出身のアニメーション監督および演出家。代表作として「勇者王ガオガイガー」「笑ゥせぇるすまん」「Dororonえん魔くん メ~ラめら」など。「TIGER & BUNNY」シリーズにおいては、テレビ版では絵コンテを、映画版「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」では監督を務めている。

田村一彦(たむらかずひこ)

アニメーション制作会社サンライズ所属のプロデューサー。過去にアニメ「THE ビッグオー second season」「ケロロ軍曹」「機動戦士ガンダムUC #1」などの作品を手がけている。「TIGER & BUNNY」シリーズではテレビ版、映画版ともにプロデューサーとして携わっている。