ナタリー PowerPush - NOVELS
米たにヨシトモ×田村一彦と語る映画OP曲「アースダイバー」
9月22日にアニメ「TIGER & BUNNY」の劇場作品「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」が公開された。「TIGER & BUNNY」、通称「タイバニ」は、子持ちのベテランヒーロー・ワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹と、新人イケメンヒーローのバーナビー・ブルックスJr.の活躍を描いた痛快バディアクション。この劇場版オープニングテーマを、テレビシリーズ2クール目に続きNOVELSが手がけている。
今回「タイバニ」のために書き下ろされた新曲「アースダイバー」は、NOVELSのフロントマン・竹内真央(Vo, G)が「タイバニ」の世界観やヒーローたちの心情を真正面から捉え、言葉と音で表現した意欲作。ナタリーではこの楽曲を多角的にひも解くべく、NOVELSの竹内と吉田翔人(Dr)、映画で監督を務めた米たにヨシトモ、プロデューサーの田村一彦の4名による座談会を実施した。
取材・文 / 増田桃子 撮影 / 佐藤類
オープニングは想像以上の映像
──竹内さんと吉田さんは、映画のオープニングで自分たちの曲が使われているのをご覧になっていかがでしたか?
竹内真央(Vo, G) もうめっちゃカッコよかったです。想像以上の映像で。とにかく桂(正和)先生のイラストがカッコいい!
米たにヨシトモ 上映中も桂先生の絵が出た瞬間は、お客さんの歓声がひと際すごかったよね。
竹内 オープニングだと一瞬なので、瞬きしてる間に見損ねますよ。オープニングを観るために何度も映画館に足を運ぶ人もいると思います。本編の映像もすごくキレイでしたしね。
米たに 映像もテレビよりバージョンアップしていますからね。「The Beginning」は前半がテレビシリーズの総集編で、中盤以降はオリジナルエピソードという構成なんですが、総集編もかなり細かく描き直しているんです。大画面なのでどうしても細かいところまで見えちゃうんですよ。見えちゃいけないものが(笑)。
竹内・吉田翔人(Dr) (笑)。
米たに 虎徹が指輪してないとかね(笑)。
竹内 「タイバニ」は戦闘シーン以外にも人間ドラマもあるから難しいですよね。よく2時間でまとまったなって。
米たに あれでもだいぶカットしましたよ。ついいろいろ盛りたくなっちゃうんで、やり過ぎないように削いで削いで。
子持ちのベテランヒーロー「虎徹」に共感
──「タイバニ」で好きなキャラクターやテレビシリーズを含めて印象に残ってるエピソードはありますか?
吉田 僕はテレビシリーズ17話の虎徹が実家に帰る話が好きですね。能力が減退して、田舎に久しぶりに帰って楓ちゃん(※虎徹の娘の鏑木楓。虎徹は自分がヒーローであることを隠している)と会うっていう。あの回で僕初めて泣きました(笑)。虎徹って、結婚して子供がいてベテランヒーローでおじさんでって、全然自分と共通項はないんですけど、なぜか共感してしまって。田舎に残した娘とのやるせない関係とか、ヒーローであることを隠してる感じとか……。「娘1人助けられないで、何がヒーローだ!」っていう虎徹のセリフでボロッときて。「HERO TV」(※劇中でヒーローの活躍を生中継する番組名)でドンパチやってる回ももちろんですけど、日常回というか、キャラクターそれぞれの素顔を見るたびに、ヒーローとしての虎徹も人間としての虎徹も、どんどん輪郭がはっきりしていく。そういう日常の描き方も含めて、僕はあの17話が一番好きでしたね。
田村一彦 ありがとうございます!
米たに 私も大好きですね、17話は。
竹内 ………このあと言うのが恥ずかしいな。
一同 (笑)。
田村 いやいやいや。お願いします(笑)。
竹内 ホント個人的な好みなんですけど、スカイハイ(※ヒーローの1人)の失恋の回が結構好きで。
田村 15話ですね。
竹内 実は敵だと思っていた相手が思い人で、それに気付かないまま自分がとどめを刺してるっていう、あの残酷な感じが良かったんですよね。
田村 切ない話ですよね。
竹内 しかも失恋した後のフォローがあるわけでもなく、ただ「いなくなった」でサラッと終わるじゃないですか。なんかスカイハイらしいエピソードだなと。あとはやっぱり僕も虎徹が好きなので、13話のジェイク(※テレビアニメ前半部のキーとなる凶悪犯)戦が印象に残ってます。ちょうどオープニングが入れ替わる直前の回だったのもありますけど、虎徹がバーナビーに向かって「お前が俺を信じてくれるって、信じてたからな」って言うセリフ。あのセリフにはヤラれましたね。
米たに 非常に虎徹らしいセリフですよね。
竹内 結局ジェイクを倒すのはバーナビーなんだけど、虎徹がいないと勝てなかったわけで。
米たに 2人は役割が違うんですよ。4番バッターはバーナビーなので虎徹はホームランを打っちゃいけない。バントしか打たせられない。でもちゃんと主役じゃなきゃいけないっていう。
竹内 確かに虎徹って主役だけど、戦いでも勝てないしわかりやすく目立つことがないですよね。
米たに いいところは全部バーナビーの役目だから。
竹内 それでも虎徹に目が行く。絶妙なバランスですよ。
収録曲
- アースダイバー
- 帆船の透明度
LIVE INFORMATION
Dive at 終わらない瞬間捜索ツアー
2012年10月26日(金)
大阪府 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
2012年10月30日(火)
愛知県 名古屋 APOLLO THEATER
NOVELS(のべるず)
竹内真央(Vo, G)、楠本正明(G)、山田裕起(B)、吉田翔人(Dr)の4人からなるロックバンド。全員、現在も出身地である愛知県在住。2007年10月に結成され、インディーズでシングル「鏡の国の二人e.p.」「Wiz e.p.」、アルバム「From the bad lands for Mrs. Witherspoon」「My blood is Your blood.」をリリースし、歌詞の深遠な世界観と確かな演奏力で徐々に人気を博す。2011年8月に、テレビアニメ「TIGER & BUNNY」のオープニングテーマ曲「ミッシングリンク」にてトイズファクトリー / muff toneよりメジャーデビュー。同年10月にメジャー1stアルバム「cardioid」を発表する。2012年9月に映画「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」のオープニングテーマとして書き下ろした「アースダイバー」をシングルとしてリリース。
米たにヨシトモ(よねたによしとも)
東京出身のアニメーション監督および演出家。代表作として「勇者王ガオガイガー」「笑ゥせぇるすまん」「Dororonえん魔くん メ~ラめら」など。「TIGER & BUNNY」シリーズにおいては、テレビ版では絵コンテを、映画版「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」では監督を務めている。
田村一彦(たむらかずひこ)
アニメーション制作会社サンライズ所属のプロデューサー。過去にアニメ「THE ビッグオー second season」「ケロロ軍曹」「機動戦士ガンダムUC #1」などの作品を手がけている。「TIGER & BUNNY」シリーズではテレビ版、映画版ともにプロデューサーとして携わっている。