≠ME「アンチコンフィチュール」インタビュー|甘いラブソングの次は“二面性”見せるダンスナンバー

≠MEの8thシングル「アンチコンフィチュール」がリリースされた。

シングルごとに異なるコンセプトの楽曲に挑戦し、多彩な表現力でファンを魅了している≠ME。前作「想わせぶりっこ」は愛をストレートに表現した“あまあまラブソング”だったが、センターに冨田菜々風を据えた今作では180°異なるテイストのダンスナンバーに挑み、果物と砂糖を煮詰めて作るコンフィチュールをモチーフに“甘いだけが私じゃない”という力強いメッセージが表現している。音楽ナタリーでは尾木波菜、蟹沢萌子、河口夏音、冨田の4人にインタビューし、楽曲の注目ポイント、静と動の緩急が印象的な振付に関するエピソードなどを語ってもらった。

取材・文 / 近藤隼人撮影 / 梁瀬玉実

「天使は何処へ」を乗り越えたからこそできる振付

──ガールクラッシュ感あふれるハードなダンスナンバーの6thシングル「天使は何処へ」、ストレートな愛情を描いた“あまあまラブソング”の7thシングル「想わせぶりっこ」と来て、8thシングル「アンチコンフィチュール」は再びクールなダンスナンバーに仕上がっています。1つのジャンルやコンセプトに縛られないのがアイドルの利点だと思いますが、ここまで極端に聴き手の感性を揺さぶってくるグループも珍しいと思います。

冨田菜々風 私としても、前作からのギャップにかなり驚きました(笑)。「天使は何処へ」でカッコいい姿を印象付けて、そのあと「想わせぶりっこ」でキュートな方向に行って、次はどうなるんだろうと思っていました。2023年はギャップの1年だったと思います。

蟹沢萌子 同じダンスナンバーでも、「天使は何処へ」が激しい音で曲が始まるのに対し、「アンチコンフィチュール」は静かな雰囲気の中からどんどん展開が広がっていきます。「想わせぶりっこ」はセリフで始まりますし、どんな曲でも初めて聴くときは、特に、始まり方の印象がすごく大事だと思うんです。「アンチコンフィチュール」は曲の世界観に一気に引き込んでいく感じなので、これをどうパフォーマンスで表現しようとドキドキしました。

尾木波菜 私は初めて聴いたときに歌詞が印象に残りました。いろいろな解釈ができる曲だなって。誰しもが心の中に秘めていますが、素直に言葉には出せない感情。それを指原さん(≠MEのプロデューサーを務める指原莉乃)が歌詞で表現されていて、この曲をパフォーマンスすることで私たちの表現力がさらに広がると思いましたし、新しいことに挑戦できるワクワク感を覚えました。

尾木波菜

尾木波菜

蟹沢 「アンチコンフィチュール」には「自分を信じて正直に生きる」というメッセージが込められていて。指原さんから楽曲についてのコメントを直接いただくことはあまりないのですが、曲自体が私たちへのメッセージになっていると思っています。今の私たちにこの曲、この歌詞をくださるということは、つまりそれが指原さんが私たちに伝えたいことなのかなって、毎回どのシングルでも感じます。

河口夏音 私は最初にこの曲を聴いたときに、「もしかして、『天使は何処へ』と同じRuu先生の振付かな」と予想していたんですよ。そうしたら本当にRuu先生の振付だったので、「ダンスをたくさんがんばろう……!」とより強く思いました。

尾木 私は≠MEとしての活動を始めるまでダンスをした経験がなかったのですが、今回の振付はダンスの基礎となる要素がいろいろ組み込まれているので、改めて勉強になりました。それと同時に私たちにとって新しい分野とも言えるダンスで、「天使は何処へ」のレッスンを乗り越えたからこそできる振付になっていると思います。「天使は何処へ」のときは約1カ月ほどかけてみっちり練習したので、その期間も合わせて「アンチコンフィチュール」の振付ができあがっているのかなって。今回もすごく難しい振付ですが、前回よりもイメージをつかみやすいように感じられて、自分の成長を実感することができました。

──「天使は何処へ」を経て、グループ全体のスキルが上がったんでしょうか。

尾木 そうですね。ファンの皆さんにもそう感じていただけるように、がんばってパフォーマンスしていきたいです。

蟹沢 「アンチコンフィチュール」のダンスはメンバー1人ひとりに着目しても、グループ全体を“絵”として捉えても、楽曲の世界観が伝わってくると思います。踊っているときの感情の動きも、「天使は何処へ」と比べるとまた違うんですよ。どちらもダンスナンバーではありますが、「アンチコンフィチュール」にしかない世界が感じられる。女性らしさ、カッコよさのニュアンスが違うというか。前作の「想わせぶりっこ」では“甘い≠ME”に振り切っていましたが、甘さだけではないし、苦さだけがあるわけでもない、「アンチコンフィチュール」ならではの魅せ方があると思います。

蟹沢萌子

蟹沢萌子

──「アンチコンフィチュール」に込められた「甘いだけが私じゃない」というメッセージは「想わせぶりっこ」の世界観を踏まえたもので、前作が今作への伏線になっていると解釈することもできますね。

蟹沢 そうかもしれませんね。でも甘い部分も、そうじゃない部分もあるという二面性は私たちだけに当てはまるものではなく、どんな人にも重なる普遍的なテーマだと思います。

河口 今回は細かい振りにも緩急をつけることを目標にしていて。その1つひとつの振りがたくさん重なることで、曲全体に柔らかいところと力強いところの強弱をつけられたらと思っています。あと、私は「天使は何処へ」のときに、髪の毛の使い方にすごく苦戦したんですよ。私は髪を下ろして踊っているので、髪の毛が顔に被ってしまうことが多くて。「天使は何処へ」を通してパフォーマンス中の髪の使い方を学んで、今では髪の毛を操れるようになったと思います。

河口夏音

河口夏音

──体の動きで髪の毛のなびき方をコントロールできるんですか?

河口 首の動きの強さで、髪の毛を操っています(笑)。顔に被らないようにしつつ、きれいになびくように。ふわっとなびくとよりカッコよく見えると思います。


蟹沢 「アンチコンフィチュール」は静と動のコントラストが際立つ振付で、Ruu先生はオルゴールの中にいる人形が踊り出すイメージで振りを作ってくださったんです。

冨田 振付が歌詞の内容とリンクしているんですよね。例えば、感情が強く表れているパートは激しい動きで、ミュージックビデオの画面から飛び出てきてしまうような勢いがあったり。逆にMVでオルゴールのように踊っているシーンは、まさに人形になったように、感情を消して表現しています。その振り幅が踊っていて楽しいです。

冨田菜々風

冨田菜々風

尾木 最初と最後のゆっくりな動きの振りからは、人形が少しずつ動き出す様子がイメージできますし、パフォーマンス全体を通して1つの物語を感じられると思います。

蟹沢 二面性というテーマが、振付にわかりやすく込められていますね。

マンツーマンのレッスンスタイル

──「天使は何処へ」は間奏にダンスブレイクがあり、それが≠ME史上最高難度のダンスと謳われていましたが、今回も技術的な難易度が高い振付なんでしょうか?

冨田 手の動きなど、繊細な表現がたくさんあって、それが難しかったですね。そういう細かい振りに女性らしさが表れています。今回、Ruu先生は「天使は何処へ」のときとはまた違ったやり方でレッスンしてくださったんですよ。1人のメンバーにそれぞれ違う先生が1人つくという、マンツーマンのスタイルでダンスを教えていただいて。

蟹沢 メンバー1人ひとりに先生がつきっきりになって教えてくださったうえで、Ruu先生が作品全体でどういうふうに表現したらいいのか、みんなを導いてくださいました。

冨田 まず振り入れが始まる前に、「アンチコンフィチュール」の振付を先生たち全員で踊ってくださったんです。もう、そのときの迫力が忘れられなくて、メンバーみんな感動しつつ、心に火が点きました。

──振付の完成形をお手本として見せてくれたんですね。ある意味ではレッスンの最初に高い目標を設定されたとも言えるわけで、そこで尻込みしてしまうことはなかったですか?

冨田 逆に燃えちゃいました。先生たちが見せてくださったものを超えたいと思うくらい、それはもうメラメラと(笑)。

河口 先生たちはメンバーそれぞれに合わせたやり方で振りを教えてくださったんです。例えば、私は音に合わせて踊るほうが振りを覚えやすいので、常に曲を流しながらレッスンしていただきました。

尾木 やっぱり、メンバーそれぞれに得意不得意があるんですよ。私は振りを覚えるのに毎回時間がかかってしまうのですが、一部MV撮影の当日に振り入れをしたパートもあったので、そこはすごく苦戦しました。昔に比べたら振り覚えは早くなったものの、なかなか簡単に克服できるものないですし。でも、これも私が成長する機会だと思ってがんばりました。

蟹沢 Ruu先生もほかの先生方もとても親身になって私たちを教えてくださって、モチベーションをさらに高めてくれました。

左上から時計回りに尾木波菜、河口夏音、冨田菜々風、蟹沢萌子。

左上から時計回りに尾木波菜、河口夏音、冨田菜々風、蟹沢萌子。

──「天使は何処へ」のときは約1カ月間にわたって練習を重ねたそうですが、今回はMV撮影の当日にも振り入れをしたということで、もっと短期間でのレッスンだったんでしょうか?

冨田 そうですね。短期間でやり込む感じでした。その中でも、先生たちは「今の動きがよかった」とか、その場で細かく指導してくださったので、いろいろな発見がありましたし、やっぱり「天使は何処へ」のレッスン期間で基礎的なことを学ぶことができたことも大きかったと思います。

蟹沢 濃密な時間だったと思います。ちなみに、MVには映ってないのですが、私はなっちゃん(河口)と振付の中であることをやってるんですよ。


──あること?

蟹沢 はい(笑)。最初に先生が見せてくださったお手本が本当にきれいで……それがどんなことかは、今後のお楽しみです。けっこうこだわって練習を重ねました。

河口 その振りにはももきゅん(櫻井もも)も関わっているんですよ。

蟹沢 少し説明が難しくて(笑)、コツが必要な動きなんです。最初はきれいに見せることにかなり苦戦したのですが、ももきゅんはさすがでした!