ちょっとした変化を加えるクリエイティビティは絶対に必要

──「傷だらけの僕ら」のサウンドはどんなイメージで作っていきましたか？

前作「それでも僕は生きている」（テレビアニメ「EVIL OR LIVE」オープニングテーマ）はアニメの世界観にグッと寄ったシンフォニックなサウンドだったんですけど、今回は洋楽のプログレやオルタナロックにちょっとだけ近付けたくて。なので、そういった要望をアレンジャーさんに伝えて、キャッチボールをしながら作り上げていきました。

──プログレやオルタナのエッセンスを盛り込もうと思ったのはどうしてですか？

まだシングルは2作目なので前回とまったく違うことをするのは道理じゃないなとは思ったんですけど、ちょっとした変化を加えてリスナーに「お！」と思ってもらえるようなクリエイティビティは絶対に必要だなと。海外のオルタナは普段よく聴いているものでもあるので、今回はそれをポイントにしてみたんです。

──結果、稀有な編成を持つNormCoreのさらなる可能性が見えるサウンドになっていると思います。

ありがとうございます。ユニットとしての枠組みはどんどん広げていきたいと思うので、今回は無理なく半歩前へ進めたかなという感覚です。ボーカル、バイオリン、クラシックギターという珍しい編成にいい意味でとらわれつつ、いい意味ではみ出していけたらなって。

──そのさじ加減は2作目にして明確に見えてきましたか？

いやあ、まだまだ難しいです（笑）。でも、ある種の縛りを楽しみながらやっていければなと思っています。僕もメンバー2人も考え方は非常に柔軟だし、好奇心旺盛なので。

オペラとJ-POPを融合させた歌唱法

──Fümiさんのボーカルは今回も強力な魅力になっていますね。ファルセットを使ったハイトーンと地声が交互に現れるサビのインパクトがものすごい。

試練でした（笑）。自分で作ってはみたものの、いざ歌う段階になって「こんなメロにしなきゃよかった」って思うこともたまにあります。ただ、そこを乗り越えたときの達成感はすごく気持ちいいんですけど。

──自分に対してあえて高めのハードルを課すこともあります？

そういう場合もあるんですけど、今回は短期間で一気に作ったからこそ予測不可能ないいものにもなったと。もしたっぷり時間をかけて作れていたとしたら、安パイなメロディになっていたかもしれないです。

──Fümiさんは音大の声楽科出身ですけど、そこで学んだ歌唱法とJ-POPとしての歌唱法はまったく違うものですよね。その使い分けって難しくはないですか？

すごく難しいです。在学中はオペラの先生について学びつつ、大学とは別にポップスのボイトレにも通っていたんですよ。それでも、未だに使い分けの感覚はマスターできていないです。

──でも、声楽とポップス両方の歌唱法が影響し合うことはFümiさんならではの個性にもなりそうですよね。

そうですね。そこをポジティブなものとして昇華できるように現在進行形で練習中です。声楽のカラーが出たJ-POPがあっても面白いと思いますし、そこも柔軟にやっていけたらいいなって。

体中の糖質をすべて消費した感じ

──「傷だらけの僕ら」のミュージックビデオには中国語バージョンも存在しています。言語が違うとまた発声方法も変わりそうだなと思いながら拝見したのですが、いかがでした？

おっしゃる通りで、めちゃくちゃ大変でした。中国には一度ライブで行ったことがあって、中国語で簡単な挨拶をした経験はあるんですけど、それくらいで。歌詞を覚えて歌うのは相当大変で、体中の糖質をすべて消費した感じでした（笑）。日本語と比べて母音の種類が圧倒的に多いから、歌い方も必然的に変わってくるんですよね。ただ「一人之下」は中国発の作品なので、そういうところでもアニメに寄り添えたのはよかったなと思います。

──MV自体、すごくカッコいい仕上がりですからね。必見だと思います。

今回はサウンドにオルタナロックの要素を入れたので、映像的にもドラムやギター、ベースを加えて、よりロックバンド感のあるものにしてみました。そこが前作のMVとは大きく違うところだと思います。さらにアニメの内容に合わせたバトル感も表現したいと思ったので、細かい部分まで映像ディレクターさんと一緒にアイデアを練っていきました。