鍛え抜かれたバンドサウンド、攻撃性にあふれたステージングによって、ラウドロック / メタルコアのシーンで強烈な存在感を放ち続けるNOCTURNAL BLOODLUSTが、新作ミニアルバム「The Wasteland」をリリースした。2020年10月にYu-taro(G)、Valtz(G)の加入を発表し、ノクブラは新体制に移行。新作「The Wasteland」には、Yu-taro、Valtz、Masa(B)という作曲者3人の個性が発揮された楽曲、よりビルドアップされたサウンドが堪能できる充実作に仕上がっている。
音楽ナタリーではメンバー5人にインタビュー。新メンバー加入の経緯、本作の制作過程、12月20日に行われる初の配信ライブ、今後の展望などについて聞いた。
取材・文 / 森朋之
これまでのスタイルをぶっ壊す
──2020年10月に新ギタリストとしてYu-taroさん、Valtzさんが加入しました。昨年11月にギタリストを公募していましたよね?
Masa(B) はい。オーディションでして、何人かに候補を絞ったんですが、どうしても決めきれませんでした。Yu-taroとValtzは以前からの知り合いで、オーディションとは別に声をかけたんです。各々の活動もあったんだけど、タイミングが合って、加入に至ったという感じです。
Yu-taro(G) うれしかったですね。いいタイミングが重なったし、がんばってみようという気持ちになれて。
Valtz(G) もともとメンバーとは友達だったんですけど、まさか一緒にやるとは思ってなくて。加入が決まったときは感慨深かったです。
Yu-taro 知り合ったのは10年くらい前ですが、ノクブラはシーンの中でも飛び抜けていて。力があるバンドだなと。
──ノクブラとしても、Yu-taroさん、Valtzさんは求めていたギタリスト像に合致していたということですか?
Masa そうですね。スキルがあって、曲が作れて、キャラクターも知っているので。
尋(Vo) クリエイティブなギタリストというか。あとは人間性ですね。
Masa いくら知っているとはいえ、実際に音を合わせてみないと何とも言えないところはあったんですけど、5人でリハーサルしたときに大丈夫だということを確信しました。2人の加入が決まってから、すぐに曲作りに入りました。
Natsu(Dr) 2人ともうまいのは知っていたし、「大丈夫だろうな」と思ってたんですけど、リハーサルをしたら「やっぱり大丈夫だ」という感じでした(笑)。制作に入ってから、さらに「え、そんなにうまかったの?」と思うようになって。2人が作る曲もめちゃくちゃレベルが高かったし、「これでまたバンドが化ける」という手応えがありました。
尋 「どういう曲を作るのか?」が問題だったんですよね。ノクブラの既存の曲のようなものは求めてなくて、むしろこれまでのスタイルをぶっ壊すくらいでちょうどいいと思ってたんです。世間が持っているイメージとかはどうでもいいし、それよりも自分たちが新しいメンバーを迎えて、これまでになかった曲を打ち出すのが大事だったので。最初に送られてきた曲を聴いて、「これなら大丈夫だ」と思いましたよ。要は「カッコよければいい」ということなんですけど。
──Yu-taroさん、Valtzさんの曲によって、ノクブラに新しい刺激がもたらされたと。
尋 そうですね。新しい感触があったし、「これなら自分のスキルを磨ける」という実感もありました。同じことをやってもつまらないですよね。もともと飽き性だし、バンドの音楽も常に変動したほうが楽しいと思います。
ポジティブに生きていくためのネガティブ
──新体制の第1弾楽曲は5月に配信された「Life is Once」(作詞:尋 / 作曲:Masa)で、7月には「ONLY HUMAN」(作詞:尋 / 作曲:Valtz)、8月には「Reviver」(作詞:尋 / 作曲:Yu-taro)も配信リリースされました。
尋 以前からそうなんですけど、特にテーマを決めず、まずは各々が自由に作曲して。
Masa うん。時間を置かず、まずは新曲を出したかったから、配信シングルを立て続けに出そうと思ったんです。1曲で勝負できる楽曲を用意して、リスナーの心をしっかりつかみたくて。
Yu-taro 作曲していたときは、とにかく自分らしい曲を作ろうと思ってましたね。オーソドックスなメタルコアをずっとやってきたので、そういう面をしっかり出したいなと。あまり考えずに自然と出てくるものを形にしただけなんですけど。
Valtz 僕も同じですね。「ONLY HUMAN」も、自然に出てきたとしか言いようがなくて。その都度、一番カッコいいと思うのものを出してるだけなんですよ、ホントに。
Natsu すごく新鮮でしたね、2曲とも。「Reviver」は確かにオーソドックスなメタルコアだけど、Yu-taroの弾くギターのメロディが叙情的で。「ONLY HUMAN」はテクニカルな要素が詰まっていて、ドラマーとしてもすごく刺激がありました。ユニゾンのフレーズが多いし、Valtzにも「ここは3連符、ここは16分」みたいな感じで細かく確認して。作曲者の癖もあるし、しっかり噛み合うまで時間はかかりましたけど、「難しくて楽しい」という感じでした。
──テクニカルなフレーズ、難易度の高い演奏も、ノクブラの重要なポイントですよね。
Valtz 曲を作るときは、常に自分をアップデートさせたいという気持ちもあったんです。そのときの実力よりも、ちょっと上のものを作ろうとするんですよ。毎回レコーディングでは苦労するんですけど、それがスキルアップにつながりました。
Natsu 僕らも鍛えられてます(笑)。
──配信シングル3曲の歌詞は、リアルで生々しい感情が表現されています。やはり、この時期に抱えていた思いが反映されているんでしょうか?
尋 そうですね。思うように活動できない時期があって、フラストレーションも溜まっていたし、ヘイトな感情もあったので。そういう気持ちをメモしてたんですよ、ずっと。なので歌詞の内容は自分が経験したことが中心になっています。特に「Life is Once」は自分の気持ちを吐き出してますね。全部がマイナスの感情ということではなくて、ポジティブに生きていくためのネガティブというか。病んでるわけではないので。まあ、いろいろありましたけどね。
──メンバーの脱退によってバンドの活動が停滞するのは、すごくストレスを感じますよね。
尋 自分はボーカルなので、歌うことで発散してるというか、精神的に落ち着くところがあって。ただ、配信シングルのレコーディングのときは、「ついて行けるんだろうか」と思う節もありました。「いきなりシャウトできるのか?」とか。進化しないといけないし、新しい曲も難しかったので。もちろん制作自体は楽しかったですよ。
──レコーディングによって、ブランクは解消できた?
尋 いや、全然。ライブで使い物になるかどうかまだわからないので、少しずつ体力を戻してるところですね。
ライブの再現性は度外視したテクニカルな楽曲群
──では新作ミニアルバム「The Wasteland」について聞かせてください。この作品もテーマを決めず、自由に作曲するところからのスタートですか?
Masa そうですね。配信シングルのときと同じく、各々が好きなように曲を書いて。ただ「全曲、違う雰囲気の曲にしたい」という気持ちはありました。
──1曲ずつ配信するよりもミニアルバムという形にすることで、Masaさん、Yu-taroさん、Valtzさんの作曲家としての個性がさらに際立ってますよね。Yu-taroさん作曲の「PROPAGANDA」は超高速のメタルコア。本作の中でもっともアグレッシブだなと。
Yu-taro 実は「Reviver」の前に書いた曲なんですよ。
Natsu 「どっちを配信シングルにする?」みたいな話をしてたよね?
Yu-taro そうそう。なので「PROPAGANDA」「Reviver」と同じく、いろいろ考えるのではなくて、自分の核にあるものを出した感じです。
──そしてValtzさんはインストの「The Wasteland」をはじめ、「FACELESS」「Left behind」で作曲を担当しています。
Valtz 「FACELESS」は完全にミニアルバムに入れることを想定して書きました。キラーチューンを狙ったし、構成に高低差と言うか緩急のある、壮大な曲にしたくて。「Left behind」は以前からあった曲で、「これ、どう?」とメンバーに送ったら、「いいじゃない、やろう」ということになりました。
──難易度の高いフレーズがせめぎ合ってますからね。
Valtz 作品を作るときは、ライブでの再現性を度外視しているんですよね。まずは音源に100%注ぎ込んで、ライブのことはあとで考えるというか。
Natsu 「Left behind」のアレンジは「なるほど、こうなってるのか」とすぐ理解できたんだけど、「FACELESS」はかなり大変でしたね。マシンにならないと叩けない(笑)。
Masa 作曲者の意図をプリプロでいかに再現できるか、ですよね。Yu-taro、Valtzの曲には自分の引き出しにない要素もあるし、新鮮です。
──Masaさんが作曲した「REM」「Feel myself alive」については?
Masa ミニアルバム全体のバランスを取るというか、他の曲と似ないように意識して作った曲ですね。「このバンド、こんなに振り幅があるんだ」と思ってほしいし、この先の期待感にもつなげたかった。「REM」は、遊び心のあるメタルという感じかな。フェスや対バンライブで使える、初見のお客さんも楽しめるような曲にしたくて。「Feel myself alive」は歌モノ枠。メタル好きな人にも刺さって、そんなにメタルを知らない人にも聴いてもらえる曲というか。リスナーを絞ろうとは思ってないし、どの層のリスナーにも届く曲も作っていきたいので。
──これだけ幅広いタイプの曲がそろうと、全体像を作り上げるのはさらに大変だったのではないでしょうか?
尋 そうですね。もともとコンセプトを決めるのが苦手だし、今は作曲者が3人いるので、1つのテーマで括るのは難しくて。それは歌詞も同じで、暗い曲、激しい曲、泣けるメロディの曲まで幅広いので、各々に合わせて書きました。
──「Feel myself alive」もそうですが、この先の希望が見えるような歌詞も印象的でした。メンバーが加入し、バンドが動き出したことで、尋さんのモードも変化しているんでしょうか?
尋 前向きに考えられるようになりましたね。今回のミニアルバムは、来年の活動だったり、次につながる作品だと思っていて。そのことだけで全体を統一しているわけではないですけど。
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