ラブソングを書くなら失恋ソング一択
──カップリングの「re:flection」はニノミヤさんが作詞をされています。この曲は単純なAメロ→Bメロ→サビの繰り返しではなく、どんどん展開していくタイプの曲ですよね。そういう曲の歌詞を書くというのは……。
難しかったです。今まで私が自分1人で作詞した曲は2曲しかないんですけど、この「re:flection」はメロディがエキセントリックすぎて、びっくりするぐらい曲と歌詞が噛み合わなくて。作曲・編曲のタナカ零さんから最初にいただいたデモでは1コーラスだけタナカさんが仮の歌詞を付けてくださったんですよ。それを見てから、その歌詞以外はあり得ないんじゃないかと思ってしまって。タナカさんは曲と歌詞を並行して書かれる方だと伺ったので、当然メロディが引き立つような言葉を選ばれていると思いますし、そのタナカさん以上にこのメロディにマッチする歌詞を書けるのかと。だからめちゃくちゃ悩んで、レコーディング直前までねばって書いていましたね。
──作詞の突破口が開けた瞬間みたいなものは?
なかったです。とにかく地道に、私が持っている語彙のすべてを出し尽くして当てはめていく作業しかできなくて、時間との勝負という感じでしたね。なので、私としては歌詞を書き上げられたことは奇跡に近いです。
──これまでニノミヤさんの歌詞には「私」しかいませんでしたが、「re:flection」では「君」という他者がいます。何か心境の変化があったんですか?
心境の変化というよりは、もともとカップリングはなんとなくラブソング的なものにしようというぼんやりとしたプランがあったので「じゃあ、失恋ソングにしよう」と思って。
──失恋一択(笑)。
はい(笑)。失恋ソングにすると決めてから、私の18年の人生で持ち得る限りの経験を総動員して書き始めたんですけど、やっぱり恋愛となると自分だけの問題ではなくて、そこには相手がいるわけじゃないですか。その相手が現れたことによってまた違う表現ができると思いましたし、今まで自分のことばかり書いていたので、他者との関係みたいなものを書くのは新鮮で、すごく楽しかったですね。ただ、さっきも言ったように言葉を当てはめていく作業は本当に大変だったんですけど。
──以前のニノミヤさんの歌詞と比べて、より繊細で映像的に感じました。
ありがとうございます。この曲では“夏の失恋”をテーマにしたんですけど、私はほぼ学生としての夏しか経験していないんですよ。そこで見た風景、例えば夏休みの教室だったり、そういう鮮明に残る夏の思い出みたいなものをリアルに描写することを特に意識したので、その感想はとてもうれしいです。
いろんな人の傷口がえぐられてできた作品
──先ほど「18年の人生で持ち得る限りの経験を」とおっしゃいましたが、つまりは「re:flection」にはニノミヤさんの実体験が反映されている?
そうですね。私は恋愛においては追っかける気質の人間なので、だいたい片思いで終わるんです。そういう意味では失恋にまつわる語彙にはあまり困らなかったんですけど、やっぱり自分のことだけじゃ情報が足りなくて。なので何人かの友達に「好きな失恋ソングを教えて」と聞いて回ったら20曲ぐらいの失恋ソングのリストができたので、それを聴いて「なるほど、みんなはこういうのに共感するのか」と分析したり。あとは友達にリアルな失恋エピソードを聞いて「で、そのときどう思った?」って、傷口をえぐっていくスタイルで(笑)。
──ははは(笑)。
だから私を含めていろんな人の傷口がえぐられてできた作品です。恋愛って、相手を嫌いになろうと思って嫌いになれるわけではないじゃないですか。例えば「この人と付き合ってもきっと不幸になる」と思っても、好きになってしまった以上、直ちにその感情を捨てることはできないですよね。だったら、もうそれでいいんじゃないかなって。
──なるほど。1コーラス目では、その「不幸になる」かもしれないということから目を逸らしているわけですね。
そうなんです。でも、最後はそういうダメな自分を見つめて、付き合っても幸せになれないことも肯定しちゃう。だから、結局救われないし、何も解決しない……。
──そんな救いのない歌のレコーディングはいかがでした?
プリプロのときにディレクションしてくださった方から「案外歌えててびっくりした」と言われました(笑)。
──失礼な(笑)。
いや、私も歌える自信がなかったんですよ。事前にいただいた「re:flection」のボーカルの楽譜を見たらト音記号とヘ音記号が混ざってて、まずそこにびっくりしましたし、平気で1オクターブ音が飛んだりするので「マジか……」と思って。で、そのプリプロからレコーディング本番まで1週間ぐらい間が空いたので、そこで自分の表現したいことを整理して、練習もたくさんして本番に臨んだんですけど、やっぱりめちゃめちゃ難しくて。「なんで歌えないんだろう?」と悲しくなってきちゃって、レコーディング中に泣きました。
──どうやって立ち直ったんですか?
スタッフさんがお菓子をくれました(笑)。そこからは、なんとかこの「re:flection」を完成させてやるという気合いだけでがんばりましたね。
不良になりたい
──1stアルバムに引き続き、このシングルでもニノミヤさんは自分のやりたい音楽を追求されていると思います。今後、やってみたいことなどはありますか?
私のことを知ってくださっている方々は、私に対して“真面目”とか“いい子”みたいな印象を抱いていると思うんですよ。実際、ファンの皆さんもスタッフさんもそういうふうに言ってくださることが多くて。なので、そのイメージを壊していけたらいいなと思います。
──グレるんですか?
次、また曲を出せる機会をいただけたら、もうちょっとガラの悪い人になりたいというか。「いい子なだけの私じゃないんだぞ!」と(笑)。
──楽しみにしてます。そういえば、1stアルバムに収録されたニノミヤさん作詞曲「私だけの、革命。」にも“普通”や“正しさ”といったものへの反発が表れていましたね。あるいは、校則を破りたくても破れなかったというお話もされていました。
学校って、やっぱり成績がよくて真面目な子が先生にかわいがられるじゃないですか。自分もそういうポジションに収まりたいという気持ちがすごく強かったので、そのためには真面目な子でいるのが手っ取り早いと思っていたんですね。なのでテスト勉強もがんばるし、校則も守るように心がけていたんです。だからこそ、校則を破っておしゃれしてる子たちが余計にうらやましくなって。しかも、男女問わずですけど、そういうちょっと不良っぽい生徒に限って先生から「お前はしょうがないやつだな」みたいにかわいがられるパターンもあるじゃないですか。
──はいはい。
それで「なんであいつらは私の欲しいものをいとも簡単にかっさらっていくんだ?」とムカつき始めてしまって。「私もそういう生き方をしたい」と思った頃には手遅れでした。なので、今からでも不良になりたいなあ。