音楽ナタリー Power Push - NIGO

BILLIE IDLEとHONEST BOYZ、2つの音楽プロジェクトが目指す世界

HONEST BOYZが始動してから曲ができるまで2週間

──続いてHONEST BOYZについてお聞かせください。テレビドラマ「ナイトヒーローNAOTO」の主題歌を担当したことからスタートしましたが、それ以前にこのプロジェクトの話はあったのでしょうか。

HONEST BOYZ

さかのぼるとけっこう前ですね。NAOTOくんとは彼がEXILEに入ってすぐくらいの頃に知り合って、たまに連絡したりしてました。彼は真面目なので、メールを出せばすぐ返ってくるんですよ。

──そこですか(笑)。

それって実はけっこう大切じゃないですか? メールが全然返ってこない人もいますから(笑)。そんな彼の人柄も好きで、メールではやりとりしていて、Yahoo!ニュースで「バイキング」のレギュラーが決まったと知って、すごい!と思っておめでとうメールをしたんですよ。そしたらやっぱりすぐに返ってきて(笑)、お祝いで食事に行こうということになったんです。2人で食事をしたことがなかったんですけど、2人で築地にフグを食べに行きました(笑)。そこからよく食事に行ったりするようになり、彼はファッションも好きなので気が合いましたね。NAOTOくんが自分のことを“HONEST BOY”って言っていたので、僕がやっているHUMAN MADEで「HONEST BOY for HUMAN MADE」っていうTシャツを作らせてもらって。そのくらいから「何か音楽もやりたいね」と話していて、HIROさんに相談しました。HIROさんからも「面白そうでいいんじゃないですか」みたいに言ってもらえたんですけど、それからしばらくは止まっていたんですよね。

──それはいつ頃の話ですか?

1年以上前かな。「どのタイミングでやろうか?」という話はしていたものの、なかなかそんなタイミングもなく。アルバム作ってライブしようくらいのことしか考えてなかったんですけど、NAOTOくんのドラマが決まって、HIROさんに「主題歌はHONESTでどうか?」って言っていただいて。すごいタイトだったんですけどね。曲ができるまで2週間(笑)。

──動き出してからが異様に早い(笑)。メンバーが集まるまではどういう流れだったのでしょうか。

2016年7月29日に東京・国立代々木競技場第一体育館で行われたイベント「PKCZ presents OTO_MATSURI 2016」でのHONEST BOYZ。(写真提供:OTO_MATSURI 2016)

メンバーを決めようという話は以前からしていて、まずはノリをよく知る、TERIYAKIでも一緒だったVERBALくんに入ってもらいました。次にDOBERMAN INFINITYのSWAYくんがラップもうまいし、いいのではとなり、最後にMANDY(関口メンディー)くんは僕のほうで皆にプッシュしました(笑)。HIROさんは最初は「微妙」って感じでしたが、最終的に「なんか面白いかも」ってなっていただいて、この5人で決まりという感じになりましたね。

──HONEST BOYZの写真を見ると、MANDYさんのルックスの収まりがすごいというか。

雰囲気がすごくありますよね。HONEST BOYZは興味のある人たちにどんどん参加してもらえたらいいなっていうグループにしたいです。EXILE TRIBEの中で誰かをフィーチャリングしたり、まったく外から誰かを連れてくるとか、いろいろできるのかなと思っています。

売れにくいのは、作り手じゃなくて聴く側に原因がある

──そのアプローチは完全にヒップホップですね。

そうですね。

──ヒップホップシーンといえば、フリースタイルがこんなに盛り上がるとは思わなかったです。

NIGO

すごいですよね。今、サイバーエージェントのクリエイティブディレクターをやっているのですが、AbemaTVで「フリースタイルダンジョン」を一挙放送していたんですよ。たまたま髪を切りながら観ていたんですけど、途中で止められなくて、そのあとも歩きながらずっと観てました(笑)。何度観ても面白いし、感動します。

──個人的には、フリースタイルの盛り上がりが、音源としてのヒップホップの面白さにつながったらいいなと思っています。

そうなんですよね。即興がすごい人もいるし、じっくり書くスタイルの人もいるけど、どれもヒップホップだと思います。そういう意味ではやっぱりトラックが一番難しいのではないでしょうか。日本にもいいトラックメーカーはいっぱいいるけど、環境的に売れにくいんですかね。作り手じゃなくて、聴く側に原因があるというか……よくも悪くも日本は歌謡大国なので、そういう音に耳が慣れてしまっていますから。でも、HONEST BOYZに関してはかなり実験的なので、これがすごく売れても問題なのかもしれませんが……(笑)。

──実際、手応えはいかがでしょうか。

配信のほかはドーナツ盤しかリリースしていません。アートワークも80年代っぽいテイストを出したかったので。そういうとがったことをやりたくてドーナツ盤を出したんですけど、けっこう反響がすごくて。

スタッフ 777枚の限定生産だったんですけど、ネットは400枚が1分で完売して、店頭は10分で整理券が終了しました。

──すさまじい勢いですね。

もちろんそこにはメンバーの人気があるとは思うんですけど、とはいえレコードじゃないですか。買った人で聴ける人がほとんどいないと思うんですよね。でも「ダウンロードでいいじゃん」じゃなくて、「アナログなものが欲しい」って気持ちになってくれたことがうれしかったですね。僕は古いタイプのアナログ世代なので、レコードがなくなっていくのは悲しい。だから、どこまでみんなが付いてきてくれるのかなって期待しています。

アルバム発売を目指してレコーディング中

──HONEST BOYZは継続的に展開していくのでしょうか。

もちろん。代々木第一体育館の「OTO_MATSURI」でお披露目が終わったんですけど、完全シークレットでやりました。お客さんはまさかライブをやると思っていなかったんじゃないでしょうか。「HONEST BOYZは企画もの」というイメージが強かったかもしれないし。

──ドラマに合わせて音源を作っただけ、みたいな。

はい。でも実際はやる気満々ですし、ライブのときはリハもちゃんとして、フリもつけて。初めてのライブにしてはかなりいい感じだったのではと思っています。今はアルバムのリリースを目指して継続してレコーディングしていますけど、個々のグループがあまりにも忙しいので、合間を縫って入れるときに入って、という感じでやってます。録り終わった曲もいいですよ。いい意味で肩の力を抜いたゆるいものを作るというスタンスがTERIYAKIのときと一緒ですね。TERIYAKIもすごく実験的でしたけど。

──スクリューをいち早く取り入れたりしてましたもんね。

そうでしたね。当時はメジャーなラッパーは必ずスクリューを出してましたよね。日本では全然でしたけど。スクリューで聴いたほうが好きな曲とかありますよ。今またやったらいいかもしれませんね。B面をスクリューにしたり(笑)。ライブもできるのであれば、変わったことをやりたいですね。

スタッフ オフィシャルのInstagramも公開になりました。

そうそう、ちょうど昨日公開して……わぁ、すごいフォロワー数ですね(笑)。

──もう5万超えですか(※取材時)。

2016年7月29日に東京・国立代々木競技場第一体育館で行われたイベント「PKCZ presents OTO_MATSURI 2016」でのHONEST BOYZ。(写真提供:OTO_MATSURI 2016)

けっこう音楽好きな人が反応しているみたいですね。そういう意味では投げたいところに投げられているのかなという気はしてます。「OTO_MATSURI」に来る人たちは音楽に関してもアンテナ張っている人が多いので。そういう人たちに刺さっていくといいなあと。あとは、自分のつながりで何かをしたいです。TERIYAKIでカニエ・ウェストと一緒に「ミュージックステーション」に出たりしたように(笑)、ぶっ飛んだことをやりたいですね。確かあのときのカニエは自腹で来たんじゃないかな。

──えー!

1泊とかで。だから実は本番中も寝てたんですよ(笑)。みんなヒヤヒヤでした。ファレル(・ウィリアムス)もそうですけど、先ずはとにかく面白いことがしたいという気持ち、ずっと自分はみんなとそのつながりでやっているので、これからもいいじゃんって思ってくれる人と関わっていくのが一番ですよね。遊びの延長ですね。

──当面の音楽活動はBILLIE IDLEとHONEST BOYZの2本が柱ということでしょうか。

E-girls「Happiness」Tシャツデザイン
E-girls「Happiness」ジャケット

この2本と言っちゃいけないくらい規模感は違いますけどね(笑)。でも自分が関わっているので、どちらも必然的にノリは近くなっていると思います。HONESTが好きな人にはBILLIEは刺さると思います。HONESTは、メンバーはどメジャーですけど、サブカルノリは忘れたくないなと思っています。僕はやっぱり常に音楽に関わっていたくて、音楽を知っていないとファッションもわからなくなる。音楽+ファッションがカルチャーになるっていう方程式が自分の中にあります。E-girlsのTシャツをデザインさせてもらったり、Happinessのジャケットをデザインさせてもらったりしました。日本のメジャーな人たちがおしゃれだったりとがったことをやれば、若い人たちのレベルも上がって次世代が変わるので、僕としてはこういう仕事に関われるのはありがたいし、逆にプレッシャーでもありますけど、これからもどんな形でも音楽には関わっていきたいですね。

プロフィール

NIGO(ニゴー)

クリエイティブディレクター。
裏原宿系ファッションの火付け役となったファッションデザイナーである傍ら、1989年よりDJとしても活躍。2002年にVERBAL(m-flo、PKCZ)、RYO-Z(RIP SLYME)、ILMARI(RIP SLYME)、WISEとともにTERIYAKI BOYZを結成し、アドロック(Beastie Boys)、The Neptunes、Daft Punk、マーク・ロンソン、DJシャドウらがプロデュースを務めたアルバム「BEEF or CHICKEN」をDef Jam Recordingsからリリースした。その後もTERIYAKI BOYZはコンスタントに活動を続け、2007年にはカニエ・ウェストがプロデュースを手がけたシングル「I STILL LOVE H.E.R. feat. KANYE WEST」が話題に。2009年1月にはファレル・ウィリアムスが運営するSTAR TRAKレーベルから2ndアルバム「SERIOUS JAPANESE」を発表した。2015年には元BiSのファーストサマーウイカ&ヒラノノゾミと、モモセモモ、ヤスイユウヒからなるガールズユニット・BILLIE IDLE を渡辺淳之介と共同でプロデュース。2016年からNAOTO(EXILE、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)、VERBAL(m-flo、PKCZ)、SWAY(DOBERMAN INFINITY)、MANDY(関口メンディー / GENERATIONS from EXILE TRIBE、EXILE)と共に新ユニット・HONEST BOYZを結成した。

BILLIE IDLE(ビリーアイドル)

BILLIE IDLE

ファーストサマーウイカ、ヒラノノゾミ、モモセモモ、ヤスイユウヒの4人からなるガールズユニット。NIGOと元BiSマネージャーの渡辺淳之介の共同プロデュースにより「ネオ80's」をテーマにしたサウンドとビジュアルイメージで独自の世界観を追究している。2015年4月に1stアルバム「IDLE GOSSIP」でCDデビューを果たし、同年4月には東京・ラフォーレミュージアム原宿、5月には大阪・ROCKTOWNにて単独ライブを開催した。さらに9月には2ndアルバム「ROCK"N"ROLL IDLE」を完成させ、そのアルバムを引っさげたレコ発ワンマンライブを10月に東京・ラフォーレミュージアム原宿で開催。12月にはBILLIE IDLE主催のイベント「BILLIE IDLE presents Brand-new Idle Society」が行われ、BILLIE IDLE、LUI FRONTiC 赤羽 JAPAN、POP、テンテンコ、Maison book girlというかつての盟友が集結した。そのメンバーで2016年2月よりツアー「Brand-new Idle Society presents ANARCHY TOUR」を行い、4月に東京・日比谷野外大音楽堂でツアーファイナル「ANARCHY TOUR FINAL IDLE is DEAD!?」を実施。4月6日にメンバーのソロ曲を収めた「"4 in 1" THE OFFICIAL BOOTLEG」をリリースした。

BILLIE IDLE

「"4 in 1" THE OFFICIAL BOOTLEG」
2016年4月6日発売 / 1800円
オツモレコード / DDCZ-2080
Amazon.co.jpへ
HONEST BOYZ(オネストボーイズ)

HONEST BOYZ

NIGO(TERIYAKI BOYZ)、NAOTO(EXILE、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)、VERBAL(m-flo、PKCZ)、SWAY(DOBERMAN INFINITY)、MANDY(関口メンディー / GENERATIONS from EXILE TRIBE、EXILE)により2016年に結成されたユニット。NAOTO主演のテレビ東京系ドラマ「ナイトヒーローNAOTO」の主題歌として書き下ろした「PART TIME HERO」を6月に配信リリースし、7月7日に7inchアナログを777枚限定で発売した。また、「a-nation island」の一環として7月29日に東京・国立代々木競技場第一体育館で行われた音楽イベント「OTO_MATSURI」にシークレットゲストとして出演し、お披露目ライブを行った。

HONEST BOYZ

「PART TIME HERO」
2016年6月25日配信開始
250円