ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls

葛藤の新アンセム「Mr. ECHO」

NICO Touches the Wallsが2013年第1弾となるシングル「Mr. ECHO」をリリースした。表題曲は美しく広がりのあるサウンドと、光村龍哉(Vo, G)の生々しい感情を描いた歌詞が絡み合うミディアムナンバー。まっすぐに聴き手の耳と心に入っていく1曲だ。

今回ナタリーは、表題曲の話題はもちろんのこと、カップリングに収録されている古村大介(G)と坂倉心悟(B)の初共作曲「チェインリアクション」にも焦点を当ててインタビューを実施した。ちなみに対馬祥太郎(Dr)は取材当日にダウンしてしまい残念ながら欠席。不在のメンバーの分も光村、古村、坂倉がたっぷり語ってくれた。

取材・文 / 中野明子

フルくんの「あのなんか数えてる曲よかった」が決め手

──今作は、音も歌詞も非常にストレートな印象を受けました。エバーグリーンな王道メロディに乗せて、歌詞では素直に迷いや葛藤をさらけだしていますね。

光村 確かにそういった意味でストレートな曲かもしれないですね。去年書いた曲の中で一番いい曲だったんですよ、これが。俺らの2013年のアンセムになる、っていうのが作った時点で決まってたくらい。

──いつ頃作られたんですか?

光村 「夢1号」の制作と並行してなので9月頃ですね。「夢1号」のレコーディングでスタジオに入るまでの間に2、3日くらいあって、スタッフに「アルバムに向けてもう少し曲を溜めておいたほうがいいんじゃない?」って言われて作り始めたんです。正直なところその時点で5曲くらいできてたし、「夢1号」に全力を注いでたんで何も書けない状態で。なのに、いざスタジオに入ってみたら1日で新曲が5曲ぱーっと書けて。

──その中の1曲が「Mr. ECHO」だったと。「2013年のNICO Touches the Wallsのアンセム」になる基準はなんだったんですか?

光村 「この曲は絶対フルくん(古村)が好きだろうな」って思った瞬間に、2013年のアンセムになることが確信できました。NICOはギターロックバンドなんで、フルくんのお気に召すかどうかっていうのが大事で(笑)。あとこの曲はアコースティックギターを抱えて「きれいなアルペジオで曲ができないかなあ」って思いながら作ってたんです。それまではエレキギターを抱えて、みんなで一斉にバッと合わせて作るのが多かったから、新鮮だったというのもポイントですね。

──と、光村さんはおっしゃってますが?

古村 俺が鍵だったのか! でもあのときみっちゃん(光村)が出してきた曲の中で、確かにこの曲が一番よかった。

光村 僕の読み通りですよ(笑)。

古村 イントロで鳴ってるアルペジオや、静かに始まって展開していく流れもいいし。みっちゃんがアコギを弾きながら作ったからかもしれないけど、すごくナチュラルなんですよね。あとね、「これを聴いてくれ」ってみっちゃんが5曲分の音源を渡してきたときに、ほとんどの曲に歌詞が付いてたんですよ。それって今までなかったことで。だから、聴き終わったあとに「何曲目がいいね」とかじゃなくて、「なんか数えてる曲いいね」って言った気がする。

──歌詞は紙に書いたものがあるんですか?

古村 ないですないです。だから耳で聴いたのをうっすら覚えてて。イントロの雰囲気もいいし、最初から歌詞があったっていうのもよかったし。

──歌詞が最初から付いてるのは、そんなに珍しいことなんですか?

坂倉 うん。「5曲できた」って言うから、フレーズの一部分とかネタが5曲分あるのかなって聴いたら歌詞も付いてる!って(笑)。

光村 聴き終わったあとの3人の第1声が「これ歌詞があるんだけど、どうしたの?」「なんかのストック?」ですから。

坂倉 そこが重要なんですよ。だって、たった1日で5曲分の歌詞を書いてるんですよ? ワンコーラスとはいえ事件ですよ。

光村 普通は曲の感想を言うじゃないですか。それなのに……。で、ひとしきり「どうしたの? 何があったの?」とか言われたあとで、フルくんの第2声が「あのなんか数えてる曲よかった」だったんで自分としては「やっぱりな」と。

古村 最近のNICOって「夏の大三角形」とか「夢1号」とかスケールの大きい広がりのある曲が多くて。でも「Mr. ECHO」はこれまでとは違う広さがあるんですよね。透き通っててスケール感もあるし、一方でどこか素朴なところもあって。みっちゃんが1人で弾き語ってる姿もイメージできるし。聴いた瞬間に、この曲に頼れるなって思ったんです。

光村 俺もこの曲ができたときに「2013年はこれがあるからみんな安心しとけ」っていう気持ちになりましたね。自分が作った曲なんだけど、メロディも空気感も力強いし、引き込まれる。その感じがみんなに伝わったのかな。

古村 曲に自信があるときは、みっちゃんって何も説明せずに俺らに聴かせるんですよ。今回もそのパターンでした(笑)。

ニューシングル「Mr. ECHO」 / 2013年3月27日発売 / Ki/oon Music9
ニューシングル「Mr. ECHO」
初回限定盤 [CD+DVD] / 1680円 / KSCL-2226~7
通常盤 [CD] / 1223円 / KSCL-2228
CD収録曲
  1. Mr. ECHO
  2. チェインリアクション
  3. SWEET MEMORIES
初回限定盤DVD収録内容
  1. image training(from “キューン20 イヤーズ&デイズ” 2012.4.26 @LIQUIDROOM)
  2. 夏の大三角形(from “FREE LIVE in 代々木公園” 2012.5.16 @代々木公園 野外ステージ)
  3. 手をたたけ(from “HIGHER GROUND” 2012.7.28 @海の中道海浜公園 野外劇場)
  4. ラッパと娘(from “ALGORHYTMIQUE” 2012.11.16 @Zepp Tokyo)
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表し、翌2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施し、成功を収めているほか、「夏の大三角形」「夢1号」というシングルを2作発表。2013年3月にニューシングル「Mr. ECHO」をリリースした。4月には5thアルバム「Shout to the Walls!」を発表する。