ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls

夢から生まれた「夢1号」に迫る 初披露舞台裏レポ&インタビュー

この音をどこかで欲しがってた

──この曲がどんな形で作られたのか訊かせていただけますか?

光村龍哉(Vo, G)

光村 フルコーラスを夢で見てたんですよね。音の雰囲気はバンドで構築し直したのでだいぶ変わってますけど、メロディと歌詞はそのまんま。

──自分で作った感覚ってあるんですか?

光村 実はあんまりない(笑)。ときどき曲が“降りてくる”んだけど、それとも違う感じで。僕は曲が降りてくる感じって、呼ぶことと近いと思ってるのね。例えば哀愁感のあるメロディが欲しいなとか、テンションの上がるギターのリフが浮かばないかなとか具体的に考えているときにぴったりなものが浮かぶのが“降りてくる”ことだと思ってる。でも「夢1号」に関してはこういう曲を作ろうとも思ってなくて。夢で浮かぶとは思わなかったし、曲調だって自分の中にはないタイプだった。でもファルセットを効かせた歌い方や、きれいなコーラス、ものすごく広い空間を感じさせるサウンドっていうのはどこかで欲しかったんです。だからマスタリングが終わった瞬間に、NICOが探してたものが手に入った感じがしました。

正直なところ戸惑いました(笑)

──光村さんが「夢でできた」と言って曲を持ってきたとき、皆さんはどう感じました?

対馬 俺は夢でできたっていうエピソードにグッときましたね。メロディにも力を感じたし、素直に「いいね」って。どう仕上げていくのかってことを、みっちゃんを中心に考えていって。俺らにとって作る上でのヒントはメロディしかないんですよ。だからメロディから得られるものを軸に、どうやってNICO Touches the Wallsのものにするか、そこにどう自分が存在できるかってことを考えました。

──今回のアレンジはセッションで決めていったんですか?

対馬 いや、みっちゃんの作ったアレンジをベースにしてますね。ただ最初の印象だと優しい感じだったんですよ。でも作ってく上で、土台がしっかりしていたほうが歌が映えるだろうってことで、結構リズムは重めにしました。

光村 対馬くんは力強さを足してくれた感じで、あえて言うなら夢を見ているベッドみたいな。

坂倉 ベッドに飛び込んで、下が対馬くんだったらイヤだな……。

光村 それは考えちゃダメだよ! じゃあ坂倉はなんだよ。

坂倉 リズム隊だし、ベッドとセットになってる掛け布団ですかねえ。

対馬祥太郎(Dr)

対馬 そっちのがイヤだろう!

全員 (笑)。

──坂倉さんは光村さんから音を聴かされたとき、どう思いました?

坂倉 まあ、正直なところ戸惑いました(笑)。みっちゃんが曲を持ってきたときって、ツアーに向けて曲作りをしていた頃で「アッパーな曲が多めなほうがいいよね」っていう話をしてたんですよ。そしたらみっちゃんが「夢で作ったんだけど」って、スマホを渡してきて。聴いたら曲調がミドルテンポだしアンニュイだし。しかもみんなある程度デモを固めて持ってきてたのに、スマホで録った音源だし、寝起きの声だし……。

光村 坂倉はちゃんと打ち込みを使ったデモを作ってきてくれたのに、それに対して寝起きのふわふわした声とギターの音源で「曲できた」って言われたら戸惑いますよね。悪いことしたなとは思ってるんですよ。

坂倉 でもどこかいいなと思うところがあったんですよね。無意識に自分も欲していた音だったというか。だから「い……いいね。いいと思う」って言葉が出たんです。

光村 それが影響を与えたのか、次に坂倉が持ってきたのはギターと歌だけのデモでしたけど。

古村大介(G)

──(笑)。古村さんは?

古村 俺は割とフラットに「いいな」と感じましたね。メロディが頭に残ったし。あと最近はちゃんとデモを作ろうっていう流れがある中で、みっちゃんがスマホで録ったラフなデモを持ってきたのもよかったんですよね。昔の制作スタイルを思い出したというか。NICOって以前はちょっとしたフレーズをきっかけに曲を4人で作り上げてたんで、そのことを思い出しました。あとみっちゃんがいい曲を作るときって、そういうラフな形から入ることが多いんですよ。

──そんな曲の中で、ギターはどんな役割を果たしていると思いますか?

古村 うーん……。

坂倉 シーツの柄とかじゃない? 彩りというか。

光村 いや俺は部屋だと思うな。あのギターは、夢を見る空間や雰囲気を作ってる。

──では歌はどういう役回りでしょうか。

光村 夢の中の登場人物かな。「夢1号」はコーラスを含めて歌が肝の曲だと思ってるんで。

「夢1号」はNICOにとって最大の攻め

──斬新な形で作られた曲ですが、作り上げたことで何を得ましたか?

光村 「音楽の自由さ」ですかね。どういう作り方をしてもいいし、どういう歌詞を書いてもいいっていうこと。夢で浮かんだ曲がメンバーやスタッフを惹き付けて完成したっていう、この曲にまつわる一連の出来事が奇跡だなとも思ってて。いい曲ってルールや法則にのっとって、頭で考えれば作れるものじゃないというのを自分でも実感できた。

──最後に「夢1号」にちなんで2013年はどんな夢を実現したいですか?

光村 「夢1号」を武器に、より自由に音楽を作っていきたいと思ってます。形式だったりジャンルにとらわれない曲を出していけたらいいなって。今年はライブが多かったんで、来年はいっぱい曲を出したいですね。

坂倉心悟(B)

対馬 俺もみっちゃんと近いかな。「夢1号」を作ったことで得た感覚を生かして、もっと自由に曲作りもライブもしたいですね。まずは「夢1号」の30点の演奏をどうにかしなきゃいけないんですけど(笑)。

坂倉 僕も作ってる曲をちゃんと音源として届けたいですね。あと「夢1号」を演奏してるときって、ひとつの世界観を作れてる感じがあるんです。その手応えはこれからプレイする上で大事にしたい。

古村 「夢1号」ってこれまでになく包容力がある曲だと思うんですよ。だからこの曲をきっかけに、ライブにしろ曲にしろ、聴いてくれる人の思いや気持ちを受け止められるステージや音源を出したいですね。エネルギーを押し付けるだけじゃないパフォーマンスをしたいというか。そこを突き詰められたら、また一歩NICOが前に進めると思うんで。

光村 来年も今と変わらず攻めの姿勢は崩したくないんです。だから新しい作り方に挑戦した「夢1号」は、今の僕らにとって最大の攻めですね。2013年に向けての。

ニューシングル「夢1号」 / 2012年12月19日発売 / Ki/oon Music
ニューシングル「夢1号」初回限定盤 [CD+グッズ] 1600円 / COZA-737~8
ニューシングル「夢1号」通常盤 [CD] 1223円 / KSCL-2172
収録曲
  1. 夢1号
  2. 決戦は金曜日
  3. Live from "ALGORHYTMIQUE"
  4. Live from "ALGORHYTMIQUE"
  5. Live from "ALGORHYTMIQUE"
初回限定盤封入グッズ
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NICO Touches the Walls (にこたっちずざうぉーるず)

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表し、翌2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年3月には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施し、成功を収めている。2012年は「夏の大三角形」「夢1号」というシングルを2作発表。