二丁目の魁カミングアウト インタビュー|現体制になって4年半、グループ内で起きた意識改革 (2/2)

「今これを歌うべきだ」という気持ちが明確になった

──約1年前にリリースされた初のシングル「あの頃、僕ら若すぎた青春」はさわやかな王道のJ-POPですが、今話していただいたような気持ちの変化が楽曲にも落とし込まれているんでしょうか?

ミキティー 「時限爆弾 止められない 今だ 走れそこへ」という歌詞があるんですが、人間ってみんな寿命があって、例えばアイドルも活動を通して体や喉を壊してしまったり、人それぞれ何かしらの時限爆弾を抱えていますよね。歳を取れば取るほどそのことに気が付いて、目標としている景色を見るためには「いつか見られたらいいや」ではなく「1日でも早くその景色が見たい」と思わなきゃダメだと感じてこの歌詞を書きました。「あの頃、僕ら若すぎた青春」は私の生誕ライブで初披露したんですけど、そのときのMCで「私だってファンの人にムカつくこともある。みんなが思ってるミキティー本物じゃないんだよ」みたいなことを言ったんですよ。その頃から、人に求められることよりも自分のやりたいことを優先できるようになりました。

ぺいにゃむにゃむ ミキティーとは長く一緒にいますが、その生誕イベント以来、少し肩の荷が軽くなったように見えます。

ミキティー 楽曲に関しては、「今これを歌うべきだ」という気持ちが昔より明確になりましたね。「キラキラした歌を歌いたい」と思って作ったのが2ndシングルの「キラキライクストーリー」というザ・アイドルソングで、そのカップリングの「つよくやさしくなりたい」は日頃の鬱憤を表に出したいと感じた瞬間に書きました。あと、去年の夏に作った「綺麗故に、故に綺麗。」は季節感を感じられる初めての曲ですし、「今これ歌わなきゃ」という気持ちを曲にするスピードが速くなりましたね。だからここ1年でかなりの数の曲を作っています。

──それによって振り入れなどでの苦労が増えているのではと思いますが、それ以上にやりがいを感じているのでしょうか?

日が紅 それはめちゃくちゃあります。ミキさんがこれまでになかったような恋愛ソングや失恋ソングに挑戦していく中で、僕たちも今までやってこなかったような歌の表現にチャレンジしていて。僕は「あの頃、僕ら若すぎた青春」で最後のロングトーンを担当しているんですが、自分の歌に対して新たな発見がありましたし、いろいろな扉が開きました。

筆村 自分がまだ名前を付けられていないような感情を、ミキさんが歌として形にしてくれるんです。歌の表現を通して、自分が人間として成長できている実感が強くありますね。

ぺいにゃむにゃむ 右に同じです。ただ、曲を覚えるのは大変です。歳を重ねて覚えられる量が減ってきました(笑)。

ミキティー そんなことないよ(笑)。だってZepp Shinjukuで新曲を3曲もやったけど、今まではそれだけの数の新曲を一気に披露することなんてなかったし。新曲の練習をしていても、キツさより自分たちの作品が増えることの楽しさのほうが強いんですよね。

ぺいにゃむにゃむ 新しい曲が生まれるたびに、「欲しかったパートをもらえた」という喜びがありますね。

二丁目の魁カミングアウト

二丁目の魁カミングアウト

ゲイとしてステージに立ってる感覚はない

──「ゲイでもアイドルになれる」というコンセプトを掲げていることに対して、ポジティブな面とネガティブな面を挙げるとしたらどんなことが思い浮かびますか?

ミキティー グループを結成した頃は、オネエのタレントさんがたくさんテレビに出てきた時期で。オネエはにぎやかで毒舌というイメージが世の中にあったので、私たち自身もそういうキャラを意識してステージに立っていたこともあったんですね。でもキャラになりきれない日もあって、その姿を見たファンの子たちが「ミキティーはそのままでいい。がんばらなくていいんだよ」と言ってくれたときに「私は私のままでいいんだ」と思えました。今も二丁魁は「ゲイだから面白い」とか「ゲイだから話がうまい」みたいなイメージとは無縁だと思っていて、別にテンションが高いMCとかもしないんです。だからオネエアイドルのライブだと思って観に行ってみたら「想像と違ってよかった」と感じる人もいるだろうし、「全然面白くなかった」って思う人もいるんですよね。でも、口が達者なゲイもいれば口下手なゲイもいる。ありのままの自分を認められるようになってきました。

ぺいにゃむにゃむ 「ゲイでもアイドルになれる」というのはパワーワードではあると思うんですけど、活動している本人としては普通に人として生きてるだけなので、ゲイでアイドルをやっていることについて特にいいも悪いもないんですよね。

ぺいにゃむにゃむ

ぺいにゃむにゃむ

筆村 僕もアイドル活動においては、自分がゲイとして活動しているという感覚はあまりないかもしれないですね。ステージを降りて日常生活に戻ると「そうだった」って思い出すくらいで。

日が紅 僕もそうですね。アイドルであることは意識しても、ゲイとしてステージに立ってるという感覚はないです。

ミキティー アイドルとしていい歌を歌ってる感じだよね。

──ゲイに対する世間の人の認識など、時代の変化は感じますか?

ミキティー そうですね。結成した当初、私にいろいろな知り合いがいたこともあって、まだ全然ファンがいないのにイベントに出させてもらっていたんですが、お客さんに中指を立てられたり「なんで男が出てんだよ」という言葉を浴びせられたりすることがよくありました。でもそこで病んだりするわけではなく、「お金を払って女の子のアイドルを観に来てるのに男が出てきたらそりゃそうなるよな」と申し訳ない気持ちになっていました。ただ、私にも譲れない夢があるので、中指を立てられながらもステージに立ち続けていたら、徐々にそういうことはなくなっていったんです。とにかくステージで歌い続けてきたこと、アイドルの子が「二丁魁さんが大好き」と言ってくれたりしたことが大きかったのかもしれません。何より、応援してくれているおなカマ(二丁魁ファンの呼称)の熱量によって、私たちを色モノとして見てた人たちやアイドル界全体にも「この人たちは真面目にアイドルやってるんだ」という認識が浸透していったんだと思います。どんな声が聞こえてきても、あきらめずにステージに立ち続けたことは間違いじゃなかったですね。

ミキティー本物

ミキティー本物

──二丁魁は2017年に男性アイドルとして初めて「TOKYO IDOL FESTIVAL」に出演しました。その頃からいろいろな変化がありそうです。

ミキティー それぐらいの時期からけっこう変わっていった感覚があるよね。「TIF」に出るにはいろいろな方法がありますが、出場権を懸けたイベントで勝ち上がっていくようなことを私たちはやらないようにしていて。グループの知名度が上がって「TIF」側からお声がかかることを目標にしていました。だから2017年に出演できたときはめちゃくちゃうれしかったよね。

ぺいにゃむにゃむ 「TIF」の運営さんが二丁魁のライブを観に来てくれたんです。私たちのことを気に入ってくれて、声をかけてくれた。そのことが一番うれしかったよね。

目指すはEX THEATER ROPPONGIで1600人動員

──今は何がグループ活動の一番の原動力になっていますか?

日が紅 一番はおなカマの声ですね。あと、自分の成長を実感できるのもうれしいです。ミキさんは僕がまだ知らないような、いろいろな経験を歌詞に落とし込んでいて。そういう曲を歌っていって、いつか自分もミキさんくらいのキャリアになったとき、今よりもいろいろな景色が見えているんだろうなと考えるとすごくワクワクします。

日が紅

日が紅

──ミキティーさんを本当にリスペクトしているんですね。

日が紅 めちゃくちゃしてます。

ぺいにゃむにゃむ リスペクトしてなきゃ続かないですよ。ミキティーと出会えたのは宝くじを当てるよりラッキーだと思ってます。

ミキティー 今みんなはインタビューの場ということもあっていい話だけをしてくれていますが、私は4人の中で一番わがままだし、一番赤ちゃんみたいにやりたい放題。3人がしっかりしてくれてるんですよ。

ぺいにゃむにゃむ だからパーフェクト型の尊敬じゃなくて、ミキティーのすごいところに特化して尊敬してます(笑)。ゲームとか出てくるパラメーターで表すと一部が突出してるので。

ミキティー 私に足りない部分は3人がそれぞれ担ってくれていて。私はクリエイティブの面は長けてるけど、例えば重い荷物を持ったり、人のことを考えて優しく行動してくれるのは紅。人間性の面はこの3人に比べて私はすごく劣っているんですよね。もし自分みたいなメンバーが入ってきたら、私は1日で嫌で辞めちゃうと思います(笑)。

──互いに補い合えるのがグループ活動のよさですよね。

ミキティー そう。3人は優しくて強いから本当に尊敬します。

筆村 さっきミキさんが、過去に中指を立てられたり、「なんで男が」って言葉を浴びせられたりしたという話をしていましたが、もし自分がそういう目に遭ったら耐えられる自信がないです。あとからグループに加入して、そういう大変な経験をしていない自分はずるいというか、すごく恵まれていると感じます。2人(ミキティーとぺいにゃむ)がそういった状況に耐えて二丁魁の基盤を作ってくれたからこそ、今僕が幸せに活動できていると思うのでとてもリスペクトしています。だから、僕が入ったことで二丁魁がさらにいいグループになったと言ってもらえるようにがんばりたいです。

筆村栄心

筆村栄心

──5月には全国ツアー「JAPAN GAY TOUR 2025」が始まります。動員が増え始めている今、二丁魁にとってかなり重要なツアーになるのではないでしょうか。

ミキティー ツアーは長期間ですが、回る箇所はそこまで多くないんですよ。だからこそ、1つひとつのライブで違った色を見せたいと思っています。セットリストを毎回変えるので、全公演観たいと思ってもらえるようなライブにしたいですね。11月10日にはEX THEATER ROPPONGIでワンマンライブがありますが、EX THEATERは今の体制になって初めて有観客ライブをやった会場なんです。その頃はコロナ禍の制限で500人ぐらいしかお客さんを入れられない時期だったんですが、今回は1600人の動員を目指しています。新宿では1200人だったけど、次は絶対に1600人埋めないといけない。でも私たちは動き出しが遅くて、Zepp Shinjukuのときもギリギリになってビラ配りを始めたりしたんですよね。今回は明日から焦ります。

ぺいにゃむにゃむ 明日からダイエットがんばるみたいな(笑)。

ミキティー (笑)。1600人動員したいという気持ちはありつつ、まだ出会っていない人のことを優先して考えるよりも、もう出会っている人のことを一番に考えるほうが大事だと思うので、今あるものを大切に握りしめながら、目標に向かって一歩一歩進んでいきたいと思っています。

ぺいにゃむにゃむ 会場を埋めることだけがすべてじゃないとは思いますが、1600人集めたうえでカッコいい二丁魁を見せたいと思います。もしEX THEATERを埋めることができたら二丁魁の存在がもっと広がると思いますし。

筆村 自分自身が歌に救われたように、聴く人の心がちょっと軽くなるような楽曲を届けていきたいと思っていて。実際、そういうアイドル活動をできている自信があるので、EX THEATERでも最高のライブをしたいですね。

日が紅 EX THEATER公演は、僕と筆さんが加入して以降最大規模のライブです。開催日の11月10日は現体制のお披露目から丸5年の記念日の前日ですし。僕たちが二丁魁をもっと大きくする。その自信が前に表れるようなライブをしていきたいです。

二丁目の魁カミングアウト

二丁目の魁カミングアウト

公演情報

二丁目の魁カミングアウト 全国ツアー「JAPAN GAY TOUR 2025」

  • 2025年5月1日(木)東京都 Spotify O-WEST
  • 2025年6月14日(土)愛知県 SPADE BOX
  • 2025年7月5日(土)福岡県 INSA
  • 2025年8月9日(土) 宮城県 darwin
  • 2025年8月24日(日)新潟県 NEXS NIIGATA
  • 2025年9月28日(日)大阪府 ESAKA MUSE
  • 2025年10月25日(土)北海道 函館club COCOA

二丁目の魁カミングアウト ワンマンライブ「we are JAPANESE TOP GAYIDOL」

2025年11月10日(月)東京都 EX THEATER ROPPONGI

プロフィール

二丁目の魁カミングアウト(ニチョウメノサキガケカミングアウト)

ミキティー本物、ぺいにゃむにゃむ、筆村栄心、日が紅の4人からなるゲイアイドルグループ。「ゲイでもアイドルになれる」をコンセプトに活動している。2011年にミキティー本物を中心にハロー!プロジェクトの振りコピユニット・二丁ハロとして活動をスタートさせた。2017年5月に二丁目の魁カミングアウトに改名した。2025年5月より全国ツアー「JAPAN GAY TOUR 2025」を行い、11月10日に東京・EX THEATER ROPPONGIでワンマンライブ「we are JAPANESE TOP GAYIDOL in EX THEATER ROPPONGI」を開催する。