「NYRF」インタビュー|プロデューサーHIRØが優しさと愛を持って臨む伝統の年越イベント (2/3)

カウントダウンのセッションに期待して

──HIRØさん率いる湾岸の羊~Sheep living on the edge~についてもうかがわせてください。HIRØさん(MC / カイキゲッショク、ex. RISING SUN)、TATSUさん(G / GASTUNK)、REDZさん(Vo, G / AURA)、CHARGEEEEEE...(Dr / 湾岸の羊~Sheep living on the edge~、カイキゲッショク、ZIGGY)さん、Ryo-Taさん(B / Omega Dripp、蟲の息)という腕利きぞろいのライブも「50+1」の大きな見どころです。

今年は湾岸の羊の1stアルバム「2020 Rising Sun」を出させてもらったことで、ちょっと余裕ができたことも大きかったですね(参照: 湾岸の羊~Sheep living on the edge~ 1stアルバム「2020 Rising Sun」特集|新たな夜明けに響き渡る、魂の叫び)。それまでは本当に「NYRF」に時間を全部持っていかれていたので。出演者全員一筋縄でいかないような人たちばかりですから。猛獣使いとしては大変です(笑)。

──1stアルバムやミュージックビデオ、10月の東京・東京キネマ倶楽部での1stワンマンライブ、いずれも渾身の思いを昇華した素晴らしいものでした。今回、湾岸の羊が出演アーティスト第1弾にいることは大きな意味があると思います。

「50+1 New Year Rock Festival 2023-2024」
出演者第1弾告知画像

「50+1 New Year Rock Festival 2023-2024」 出演者第1弾告知画像

たぶんアルバムが出てなかったら、この位置には置けなかったと思うんです。自画自賛じゃないですけど、今年は真ん中に置かせていただきました。今回第1弾で発表したアーティストは、「NYRF」でこの3年一緒にやってきたメンバーで。最初の1、2年はカウントダウンのセッションもぎこちなかったかもしれないですけど、さすがに今年はすごくいい共演を見せられるんじゃないかなと思うんです。「誰よりも目立とう」とかじゃなく、「せーの!」で音を出していいものを見せるにはどうしたらいいんだろうと考えています。カウントダウンの瞬間は見逃さないでほしいです。

HIRØ
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見守られているというより見張られている

──ほかにも昨年出演した高橋和也さん、原田喧太さんは今回平山ヒラポン牧伸さんとともにMountain man名義で初参加します。

「MOUNTAIN MAN」という曲は高橋さんが去年歌っていたので知ってたんですけど、同名のバンドがあることまでは知らなかったんです。高橋和也、歌うまいっすねー。喧太のギターとあいまって、ここも見どころの1つになるでしょうね。

──Co-producerとして参加するZeebraさんも演者としてステージに上がる可能性が?(取材は11月中旬に実施)

今年はカイキゲッショクの出演がないのでZeebraがどういう形で参加してくれるのか、僕も楽しみです。まだまだ決まっていないことがいろいろ多いんですけど、先日の湾岸の羊のワンマンが終わるまで、まったく「NYRF」に手をつけられなくて。毎年9月2日、ジョー山中の誕生日に鎌倉にあるお墓にサンフラワーを立てて「ジョーさん、今年どうしよう」と話しかけてたんですけど、ジョーさんは優しいから「もうお前も好きなようにやれよ」と言われた気がして、ちょっと落ち着いたんですよ。裕也さんには誕生日の11月17日に「今日発表しましたから」という報告をさせてもらいました。

──裕也さんも見守ってくれている気がしますね。

見守るというより、見張られてる感がありますね。「お前、大丈夫か?」って(笑)。自分の洋服部屋に裕也さんとジョーさんの写真が飾ってあるんですけど、それまでは一番リラックスする部屋だったのに、この3年くらい中に入ると全然落ち着けなくて「まいったな、ヤバイなこの部屋」みたいな(笑)。でも、去年50周年をできたことで、俺の中では全部浄化されたというか、すごくすっきりした。だから湾岸の羊のアルバムも作れたと思うんです。「やることやったんだから自分のことやらしてよ」じゃないですけどね。

HIRØ

──世界的にも今年はThe Rolling Stonesが18年ぶりにオリジナルアルバム(「Hackney Diamonds」)を出したり、The Beatlesが最後の新曲(「Now And Then」)を発表したり、ロックにまつわる話題の多い1年でした。

すごい話ですよね。2023年にThe Beatlesが新曲出すなんて裕也さんもジョーさんもびっくりしてますよ。裕也さん、ジョン・レノンと仲よくて、ニューヨークでよくジョンを連れ出したら(オノ・)ヨーコさんに「あなたは何を企んでるの?」と言われて「何も企んでねえよ!」と返していたらしいですけど、企んでないわけがないんですよ(笑)。でも、裕也さんがプロデュースしたフラワー・トラベリン・バンドの名曲「SATORI」をショーン・レノンがやったり(Primusのレス・クレイプールとのデュオでカバー)、ビヨンセ&ジェイ・Zが「Broken Strings」をサンプリングしたりしたときも驚きましたけど(アルバム「EVERYTHING IS LOVE」収録の「BLACK EFFECT」)。

──僕もびっくりしました。

今のアメリカのBillboardチャートを見ると、ブラックミュージックばかりで。ラップの入ってない曲が見当たらないくらいですよね。僕はずっと「NYRF」の危険な香りだけは守りたいと言ってきたんですけど、見渡せばそういうアーティストはヒップホップに多くて、もう昔みたいに不良はロックをやらないんですかね。今の若いロックバンドはみんな洗練されてて、歌はうまいし、ギターもうまいし、聴いてる分にはすごくいいんだけど、危険な香りはあまりしない。だから「NYRF」はヒップホップのほうがフィットするんですよね。ただ、ロックっていうのはあくまでジャンルではなく、ヒップホップだろうがレゲエだろうがファンク、ブルース、ジャズ……そこにロックを感じるものがあればロックだと思うので、結局演奏だったり、音が出す空気、リリックやフロウに危険な香りを感じるかどうか。そこはぜひとも「NYRF」の現場で体感していただきたいです。

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──今回はひさびさに渋谷での開催です。

渋谷なのでみんな来やすいんじゃないかな。渋谷ストリームホールはJR渋谷駅と直結してますし、当日は交通機関が24時間利用できますから。再入場もOKにしたので、別のパーティに行ってから「NYRF」に来たり、こっちからあっちに行っても大丈夫。なんならもう1個、でかい会場あるじゃないですか? NHKのほうに(笑)。裕也さんが「紅白だけが祭じゃない!」を掲げて始まった「NYRF」ではありますけど、そこは仲よく楽しもうよと。今年の大晦日は、渋谷という街がいろいろな意味で面白いんじゃないかなと思ってます。

──HIRØさんの思いを胸に今から当日を楽しみにしています。前売チケット6900円にもこだわりとユーモアを感じました。

“ロック(税込)”ですから(笑)。今年もたくさんの人にロックで年越しを楽しんでもらえるようお待ちしています。よろしくお願いします!