生のドラムとやって自由になれた
——話は戻りますが、neohachi結成について。
リリー:うん、バイト先で出会って、よくよく聞いたらエレクトーンでいろいろ経験積んでるって知って、じゃあちょっといっしょに何かやろうよって話になったんですね。最初はエリちゃんがエレクトーンで作った曲をデータで送ってくれて、それに私がエレクトロニカっぽいトラックとかつけて。その頃からエリちゃんはDJもやったりしてたから、エリちゃんがDJで出るはずだったイベントに2人で出たのが最初ですね。2005年くらい。
——そのときからボーカルは詩吟のスタイルで?
リリー:そうですね。サンプリングでお経みたいの流したりして、ちょっとした世界観みたいなのはできてた。
——neohachiはアート的な活動を志向していたんですか?
リリー:ないですね、まったく。
エリー:いきたいと思ったことがないよね。
リリー:私が1人で活動していた頃はそういうのもあったかもしれないけど、neohachiはただ楽しいことがやりたくて。
——今のneohachiの形が見え始めてきたのはいつ頃ですか?
エリー:1stミニアルバム(「rhythm of wonder」)を出すちょっと前にドラムのAtsuくんに会って、それまでは打ち込みのものに自分たちが合わせるっていうのが多かったんだけど。生のドラムはすごかった。
リリー:結局生バンドが好きだった。
エリー:バンドやりたいね!って盛り上がって、ベース入れたりギター入れたりしてneohachi groupになったり、いろんな面白い人たちとやっていくうちに、山本達久くんに会って、この人しかいない!と思って今のトリオになった。その頃はもう決まった曲をやるっていうことにあまり興味がなくて、即興っていうかジャムがしたくて、そういうのに対応できるドラムの人とかをずっと探してて。
——以前、打ち込みのトラックをバックに演奏している頃のライブも見たことがありますが、確かにドラムといっしょにやっている今のほうがイキイキしていますよね。
エリー:うん、楽しい。ドラムっていう楽器はすごい! どんどん自由になっていく。
即興はフリートーク
——neohachiにとって即興とは何ですか?
エリー:修行……?
リリー:どっちかっていうと修行ですね。ものすごい難しいんですよやっぱり。でも私たちにとっての音楽の醍醐味みたいなものはそこに集約されてるっていうか。
エリー:音楽じゃないみたいな感じ。即興で誰かと演奏してるときは、コードを合わせるとか波を作るとかは大前提で、その人とどんだけ面白い話をするかっていうのと似てて。よくお笑いと音楽を私はリンクして考えるんだけど、まあ2人組っていうのもあるんだけど、フリートークのできる芸人と……。
リリー:決まったギャグしかできない芸人だったら、フリートークできるほうが絶対面白いだろうって。
エリー:そういう感覚で、即興でも面白いことができるようになりたくて修行してる感じ。
——即興の面白さはどこにありますか?
リリー:なんだろなー、もう無意識状態になっちゃったときとか(笑)。
——(笑)。
エリー:みんな見てる方向が同じになる瞬間とか。見てる人も、やってる他の楽器の人も。全員がスコーンっていう音の先を見ることができたときは、もうあの瞬間だけでいい。そこに自分が行けた、みんなもそこに向いてくれたっていうのが嬉しい。できた!って思う。
——即興をやる人はみんなそこを目指しているんでしょうか?
リリー:わからないですね。人によっていろいろ違うし。
エリー:あの人にどれだけ向かっていけたかとか、勝ったとか負けたとか、切り込めたとか、合わせられたとか、いろんな楽しみ方があるけど。でもみんなで同じところに行くっていうのをneohachiは一番目標にしてるかもしれない。
——はい。
エリー:即興のライブで40分もらったとき、最初の20分はみんなが自己紹介しあってるときもある。やりながら。僕はこんなギターを弾きますとか私はこんな風に歌いますとか。25分で「よし、わかったー!」っていうときもあるし、わかり合えないときもあるし。いいときは頭がパカーンって開くかんじ。そこから手が出てきて、えーと、こう、頭のてっぺんからもう1本手が生えて、握手をする(笑)。
CD収録曲
- Hey! It's fun
- rhythm of wonder
- 雑興 - zakkyo
- 天伝ふ - amatsutoh
- singing for the moon in summer
neohachi『MUSIC FOR AIR MAIL』
発売中 / 1000円(税込) / NHCD-0001 / neohac records
CD収録曲
- EAR TO DEEP ~耳をすませば
- LOVE MORE THAN YESTERDAY ~昨日にまさる恋しさの
- GUXXUMIN ~眠れる谷の海の底
- ANOYO(BONUS TRACK)
neohachi trio『live at flying teapot 26 March,2008』
発売中 / 500円(税込) / NHCD-0002 / neohac records
CD収録曲
- NEOHACHI TRIO LIVE@FLYING TEAPOT080326
プロフィール
neohachi(ねおはち)
lily(詩吟ボーカル)とelly(シンセサイザー)によるファンシーでコミカルなエレクトロジャムユニット。往年のプログレッシヴ・ロック、ジャーマン・ロックを思わせる手弾きの反復が幾何学的なパターンを描き出し、そこにエコー処理された詩吟の歌唱法によって、断片的なイマジネーションを喚起させる歌詞が歌われる。
また、山本達久(不思議なドラマー)を加えた特別編成neohachi trioを結成するなど、ゲストプレーヤーを迎えた即興セッションライブも積極的に行っている。
2008年1月に初のミニアルバム「rhythm of wonder」をreal future recordsよりリリース。同年、自主レーベルneohac recordsより初老の落ち着きをみせるアンビエントシリーズ第一弾「MUSIC FOR AIRMAIL」、neohachi trioによる初ライブ音源「live at flying teapot 26 March,2008」もリリース。