neohachi(ネオハチ)は、詩吟ボーカルのlily(リリー)と、シンセサイザー奏者のelly(エリー)によるエレクトロジャムユニット。
詩吟と電子音の融合をベースにしつつ、近年はドラムに山本達久を加えた“neohachi trio”や、ジャムセッション形式でのライブをメインに活動中。ファンシーかつディープなその音世界は玄人筋からの評価も高く、大谷能生、千住宗臣ら実力派アーティストとの共演経験も数多い。
そんな彼女たちが、今回ナタリーPower Pushに初登場! いよいよ頭角を現し始めたneohachiの素顔を、初のインタビューで解き明かす。
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取材・文/大山卓也 撮影/鈴木裕介 ヘア&メイク/YASU(COME)
地球みたいになりたい
——今回はナタリー初登場ということで「neohachiとは何なのか?」というテーマに迫っていきたいと思っています。
エリー:neohachiは地球みたいになりたいんですよ。
リリー:でっかいものです。
エリー:単純で、でっかいものになりたいね。
——でもそこにはまだたどり着いていない?
エリー:そう。まだその域に達してない。
リリー:エヴァンゲリオンで言うと(笑)。
エリー:一番最後の……。
リリー:シンジくんがみんなに拍手してもらうところの手前くらいに今いる。
——おめでとうになりたいんですね。
エリー:そう、おめでとうになりたい。
笹舟を流して遊んでいた
——結成のきっかけを教えてください。
リリー:2004年にバイト先で出会ったんです。
エリー:私がそこの会社で働いてて。
リリー:私は当時は1人でラップトップでMax/MSPっていうソフトを使って、それで音を作ったり、自分の声を取り込んでそのままリアルタイムでサイン波にして流したり。ソフトを作って詩吟を入れてパフォーマンスをしてたんです。
——それは今と比べるとパフォーマンスアートに近い感じでしょうか?
リリー:そうですね。それで、その会社では作業中に好きなCDが聴けるんですけど、そのときに割といい選曲をするんですよ、彼女が。いいねって話してて。音響とかの話をしたり、同世代で音楽をよく知ってるってのが嬉しくて。性格的にもウマが合って。
エリー:いっしょに笹舟を流して遊んでたり。
リリー:めっちゃ遊んでたね。
——笹舟いいですね。
リリー:一番覚えてるのは、いっしょにお昼を買いに行って、私が迷ってたりしてる間に待っててくれないで先に行ってたりする自由さにちょっと感動して(笑)。女の子ってそのへん割と面倒くさかったりするんですけど、いい感じの人に出会ったなあって。
——2人とも子供の頃から音楽をやっていたんですよね?
リリー:そうですね。私は詩吟の家に生まれて、小さいときからずっと詩吟をやってて、途中でコンピュータを使って詩吟を壊す、みたいなこともやったんだけど、今は詩吟好きですね。大人になった。
——エリーさんは子供の頃から鍵盤を弾いていたんですか?
エリー:ヤマハで3歳から20歳くらいまでずっと習ってて。がんばっていた。でも大きいコンクールに出るようになってヤマハの権力の争いに巻き込まれ(笑)、嫌になって辞めて就職した。
——エレクトーンをやってたんですか?
エリー:うん、エレクトーン。
——ヤマハのエレクトーンをずっと習い続けると、最終的にはどうなるんですか?
エリー:エレクトーンプレイヤーになる。ヤマハで雇われてる感じ。
——結婚式で弾いたりするんでしょうか? エレクトーンプレイヤーの人のCDは出てないですよね?
エリー:出てる。「月刊エレクトーン」っていう雑誌があって、それのグラビアを飾ったりとか。インタビューを受けたりとか。T-SQUAREと対バンしたりとか。そういうイケてない感じのミュージシャンに……。
——そういうものになりたかった?
エリー:なりたくないからやめたの。あとNHKの番組のBGMを作ったりとか、オリンピックで入場のときの曲を弾くとか、そういうのがヤマハの頂点。
——今エリーさんはシンセサイザー奏者を名乗っているわけですが、シンセサイザーはいつ頃から?
エリー:エレクトーンの音色を作るシステムがシンセサイザーとまったく同じで、いじってたって言えばいじってたし、わかるし、でもシンセサイザーを初めて買ったのはneohachiの初ライブの2週間前。楽天で買ったの。
——エレクトーンでも音色を作れるんですね。
エリー:作れる。FM音源を使ってるからDX7とかと同じで、形が違うだけ。
——最初に買ったシンセサイザーは?
エリー:microKORG。microKORGはエレクトーンの常識が通用しない音源だったから、最初ぜんぜんわかんなくて。でもプリセット音を使うというのはヤマハのコンクールでは絶対あり得ないことで、音色からオリジナルじゃなきゃいけないっていう暗黙のルールみたいのがあって、だから今もプリセット音は使わないです。買った瞬間に全部のプリセット音を消して、全部音色作り直す。
——microKORGというのはマイクがついてる小さいシンセですよね。
エリー:そう。鍵盤がピアノとかよりちょっと小さくて弾きにくいんだけどそこはもう好きだから。溺愛しているから離さないと思います。
——エリーさんはエレクトーン出身ということが自分の個性になっている部分はあると思いますか?
エリー:うーん、どうだろ。でも、ピアノから(シンセサイザー弾きに)上がってきた人と、DTMから上がってきた人と、エレクトーンから上がってきた人とでは、私は全部聴けばわかります(笑)。
——ほう。
エリー:やっぱり弾き方に特徴があるから。若手でシンセサイザーを操る人はたくさんいるけど、ちゃんと弾く人は……。
リリー:あんまりいないよね?
エリー:うん、じゃあ私そのポジションいただき!っていう感じで。
——センスと技術を両立させたいということ?
エリー:うん、もちろん弾くテクニックがすごい人も多いけど、私はそれともちょっと違って、ものすごく、シンセサイザーが私で、私がシンセサイザーで、みたいな。いっしょに神社の階段の上のほうからゴロゴロゴロって落っこちて、お前が俺で俺がお前でってなれるシンセサイザー奏者を目指したい。
——(笑)わかりやすいですね。
CD収録曲
- Hey! It's fun
- rhythm of wonder
- 雑興 - zakkyo
- 天伝ふ - amatsutoh
- singing for the moon in summer
neohachi『MUSIC FOR AIR MAIL』
発売中 / 1000円(税込) / NHCD-0001 / neohac records
CD収録曲
- EAR TO DEEP ~耳をすませば
- LOVE MORE THAN YESTERDAY ~昨日にまさる恋しさの
- GUXXUMIN ~眠れる谷の海の底
- ANOYO(BONUS TRACK)
neohachi trio『live at flying teapot 26 March,2008』
発売中 / 500円(税込) / NHCD-0002 / neohac records
CD収録曲
- NEOHACHI TRIO LIVE@FLYING TEAPOT080326
プロフィール
neohachi(ねおはち)
lily(詩吟ボーカル)とelly(シンセサイザー)によるファンシーでコミカルなエレクトロジャムユニット。往年のプログレッシヴ・ロック、ジャーマン・ロックを思わせる手弾きの反復が幾何学的なパターンを描き出し、そこにエコー処理された詩吟の歌唱法によって、断片的なイマジネーションを喚起させる歌詞が歌われる。
また、山本達久(不思議なドラマー)を加えた特別編成neohachi trioを結成するなど、ゲストプレーヤーを迎えた即興セッションライブも積極的に行っている。
2008年1月に初のミニアルバム「rhythm of wonder」をreal future recordsよりリリース。同年、自主レーベルneohac recordsより初老の落ち着きをみせるアンビエントシリーズ第一弾「MUSIC FOR AIRMAIL」、neohachi trioによる初ライブ音源「live at flying teapot 26 March,2008」もリリース。