ねごと|12年の軌跡を詰め込んで ファンに届ける最初で最後のベスト

少しずつ大人に

──続いて「DISC2」の楽曲についてお話を聞いていきます。「シンクロマニカ」「黄昏のラプソディ」などは2015年3月の3rdアルバム「VISION」に収録されています。このアルバムは初のセルフプロデュースアルバムでしたね。

「VISION」初回限定盤ジャケット
「VISION」通常盤ジャケット

蒼山 はい。その前の年に出した2ndミニアルバム「“Z”OOM」から自分たちでやるようになって。

沙田 「5」でいろいろなことを試したあと、自分たちが好きなものだったり、やりたいことが少しずつ見えてきたかな……という感じでした。

蒼山 「5」は意図的に作り込んだアルバムだったから、次はフレッシュというか、とにかく作りたい曲を作って。その結果、バンドサウンドを軸にした曲が増えました。

沙田 いろいろ試す中で「これは違う」というものを削ったことで、いいところが浮き彫りになったんですよね。曲に関しても「手拍子できなくてもパワーのある曲を作ればライブもきっとよくなるはず」という気持ちで制作して。実際にバンド感が強いアルバムになったと思いますね、「VISION」は。

澤村 この時期は楽しかった記憶しかないですね。

藤咲 「VISION」のツアーもすごく楽しかったんですよ。「ツアーってこんなに楽しいんだな」って(笑)。

沙田 「5」のツアーは佑がMCを担当してたんです。そのちょっと前にリーダーになってMCもやることになって。

藤咲 そう、突然リーダーに任命されたんです(笑)。MCも意気込んでやってたんですけど、すごく難しくて……私は柔らかい感じで見られがちなのに、ライブでは強い自分を見せようとしていたし、どうしてもそのギャップが埋められなくて。「VISION」のツアーの前に、会議で「MCをやめていいですか?」って話したんです。

蒼山 私たちとしては「しゃべりたくなったらしゃべればいいよ」くらいの感じでしたね。

──この時期の曲で印象に残っているものは?

「アンモナイト! / 黄昏のラプソディ」初回限定盤ジャケット
「アンモナイト! / 黄昏のラプソディ」通常盤ジャケット

蒼山 どれも思い出深いですけど、私は「endless」かな。「VISION」は幅広い曲が入っているんですけど、リード曲を「endless」にすることになって。ウエーイ!って盛り上がる曲ではないんですが、その後に取り入れたダンスミュージックにつながる要素もあるし、切なさやエモさもある。

沙田 「黄昏のラプソディ」も好きな曲ですね。

澤村 ライブでもけっこうやってたよね。

蒼山 「黄昏のラプソディ」は「アンモナイト」と両A面シングルとして出したんですけど、私たちの中で新しい感じもあったし、初めて披露したときにファンの人たちがザワッとしている雰囲気があって。その反響を受けて「VISION」の2曲目にしたところもありますね。ライブでも独特の立ち位置にいる曲な気がします。

沙田 テンポが遅めで、前のめりに盛り上がるというよりも、それぞれのプレイやアレンジをしっかり聴いてもらって一緒に歌う感じの曲だよね。

藤咲 ライブの中盤にやることが多いんですが、ギターのリフを弾いた瞬間に「フォウーッ!」という声が聞こえたり。この曲を待っててくれてるんだなと思いました。

沙田 そうだね。こういうテンションの曲をシングルのA面にできたのも、バンドがちょっと大人になってきた証だったのかも。

中野雅之プロデュースの「アシンメトリ」が持っていた力

──「アシンメトリ」も大きなポイントになった曲だと思います。これは4thアルバム「ETERNALBEAT」(2017年2月リリース)の楽曲ですが、BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之さんのプロデュースによってダンスミュージックの要素がガッツリ入っています。

「ETERNALBEAT」初回限定盤ジャケット
「ETERNALBEAT」通常盤ジャケット

沙田 個人的にクラブミュージックにドハマりしてた時期なんですよ。EDMも流行ってたんですが、私はUnderworldやThe Chemical Brothersに始まり、さらにディープなアーティストの曲を聴いていて。それをバンドに引っ張ってきたら面白いと思ったんですよね。「endless」を作ったことも大きいんですけど、4曲くらいをDJ的にノンストップでつないで世界観を作るようなライブをやってみたかったし、それがねごとに合うんじゃないかなって。完成度の高いステージを観てもらうことが、ねごとのことを伝える一番の形になるんじゃないかなと思ったんです。

蒼山 私も「それは面白そう。やってみたい」と思いましたね。瑞紀が作ったデモでプリプロをやっている段階からなじんでいる感じもあって。その中に「アシンメトリ」もあったんですけど、もっと大きいスケールの曲にしたくて中野さんにプロデュースをお願いしました。

沙田 私にとってレジェンドなんです。中野さんは。

蒼山 中野さんは「この先、ねごとが鳴らすべき場所をイメージしてアレンジした」と言ってたんですけど、デモを聴いたときに単純にワクワクしたし「この音に飛び込んでいきたい」と思って。

沙田 「どういう場所で演奏したいか、どういうスケールの音を鳴らしたいかイメージしたほうがいいよ」と言ってもらって。一緒にやることでたくさんのことを吸収できましたね。

──ダンスミュージックの要素が入ってくると、リズムに対するアプローチも変わってきますよね。

「アシンメトリ e.p.」初回限定盤ジャケット
「アシンメトリ e.p.」通常盤ジャケット

澤村 そうですね。中野さんと一緒に作って、ダブというジャンルを初めて知ったんですよ。ドラムに関しては、それまで手数の多い曲が主だったのが、「アシンメトリ」は「シンプルに大きく手を動かしたほうがいいよ」と教えてもらって。違ったアプローチができるようになったきっかけの曲ですね。

沙田 ライブでもすごく盛り上がったんです。それまでは「カロン」が盛り上がりのピークになることが多かったんだけど、その位置に「アシンメトリ」を置くことで新しい感覚でライブをやれるようになって。

藤咲 去年の年末、「COUNTDOWN JAPAN」で演奏したときのこともすごく印象に残っていて。解散を発表した当日のライブだったんですよ。代表曲をたくさんやろうと思って「ループ」や「カロン」も演奏したんですが、普段通りのリアクションではなくて、どうしても悲しい雰囲気だった。でも、最後に「アシンメトリ」をやったら、皆さんの手が一気に挙がって。「この曲にはこんな力があるんだな」と思ったら涙がバーッと流れました。

蒼山 そうだったんだ。

藤咲 こういうときでも自然と手を挙げたくなる曲が私たちにも存在するんだなと思ったし、音楽の力を感じた瞬間でしたね。