迷いをさらけ出さないと変われない

──このアルバムにつながる最初のシングル「sharp ♯」とそれに続く「Lightdentity / Re:myend!」から、4カ月連続リリースにおけるシングル3部作（「nameless」「greatwall」「たしかなうた」）まで、とにかく前に進んで光をつかみたい、壁を壊したいという思いが音にも言葉にも表れていましたね。

蒼山　そうですね。やっぱりそのとき思っていることが自然と曲に宿るので。4カ月連続リリースの前に作った「Lightdentity」は自分たちの葛藤を初めてさらけ出すことができたシングルで。

──そうですよね。「もうためらわない この迷いは 確かに光り出している」というフレーズは改めてすごいなって。

蒼山　まず迷いをさらけ出さないと変われないと思ったから。そのあとにできた「nameless」は自分たちのことだけじゃなく、リスナーにもっとねごとの存在を残したいという強い気持ちを込めて作った曲で。4カ月リリースも「nameless」ができたからやろうと思えたんです。さっきアルバムのリリースが一度白紙になったという話をしましたけど、でも、やっぱり大学在学中に2ndアルバムを出したいという思いが強くあって。

──やっぱりそこはこだわりたかった。

蒼山　うん。在学中にリリースすることで、これからもっと音楽と向き合っていきたいという意思表示にもなると思ったし。その時点では、2ndアルバムをリリースする2月の時点でバンドがどういう状態になっているか全然想像できなかったけれど、とにかく信じてやってみよう、変わるのは今しかないと思ったので。

沙田　これまで無意識だったけど、「nameless」ができたときに、楽曲と自分たちの感情のつながりを初めて強く意識できたんです。変わりたいと思ったら、変わりたがっている音が出るということがわかった。それはホントに大きかったですね。そのあとに作った「greatwall」は音楽で目の前の壁を壊せるんだいう強い思いをもって作れたし。

どの曲もこだわり抜いて作れた満足感がある

──本作では、ほとんどの収録曲の作詞作曲クレジットが「ねごと」と表記されていて。前作「ex Negoto」までは作詞を蒼山さん、作曲を沙田さんと蒼山さんの2人で担っていましたけど、やはりバンドが一丸となって変わっていくんだという決意が、「ねごと」でソングライティングする流れを生んだんですか？

蒼山　その通りですね。「どうしたら4人でひとつになれるだろう？」って考えていく中で、作詞作曲を「ねごと」として担うことで、1曲に4人が同じ思いを注げるようにしたいという話になって。

──おのずと楽曲ができるまでの行程にも変化があったと思います。

蒼山　瑞紀が楽曲の原型を先に作って、そこから私が歌詞とメロディを付けるという、これまでの曲作りの流れは大きくは変わってなくて。でも、ドラムの（澤村）小夜子が作ったフレーズから曲を展開させてみたり、歌詞とメロディを私以外のメンバーも書いてみたり、そういう新しい試みもたくさんできました。例えば「greatwall」だとメロディをみんなで出し合っていいところを採用したり、歌詞も「こういうことを込めたいね」って話し合ってみんなで紡いでいって。

──そういう作業を踏むと、自然とメンバーの距離感も近くなりますよね。

蒼山　そうですね。あと、自分はこういう思いをもってこういう言葉やメロディを書いているんだという主張がないと、そのアイデアは採用できないし。いい曲を作りたいという共通の気持ちをもって、お互いのアイデアについて指摘し合うことが増えましたね。

──沙田さんは曲作りの変化についてどんなことを思いましたか？

沙田　今回も原曲はほとんど私が作ってはいるんですけど、前からそこにどんどんみんなの声が欲しいと思っていたんです。みんながもっと意見を出してくれたらもっと曲の世界観を密に共有できるし、もっといい曲ができるんじゃないかって。だから今回クレジットの話があったときはウエルカムでした。私自身もどうしてこういう曲を作って、どうしてここでこういうフレーズを入れたのかを深く考えるようになったので。絶対に意味のある音だけを残したいと思うようになったんですよね。私がメンバーに「こういうふうに弾いてほしい」と言って、「なんで？」って言われたらしっかり答えられるようにしたし。だから、どの曲もこだわり抜いて作れた満足感がありますね。