ナタリー PowerPush - ねごと
「やっとここまでたどり着けた」2ndアルバムを巡る4人の葛藤と成長
伝えたいことはみんな同じ
──蒼山さんは歌詞に他のメンバーの要素が入ってくることに、ボーカリストとして難しさを感じることはなかったですか?
蒼山 みんなが持ち寄ってくれる歌詞やメロディは自分には書けないものだからすごく新鮮で、刺激的だったんです。だから、いいものはどんどん取り入れたいと思ったし、逆に私も瑞紀も自分がどういう歌詞やメロディの世界観を大事にしてきたのかを改めて考えることができたんですよね。
──自分には書けないものってどんなところに感じましたか?
蒼山 歌詞の言葉遣いひとつにしてもそうですよね。小夜子だったら言葉のリズム感を大事にしているとか、ベースの(藤咲)佑だったら情景がきれいとか、瑞紀だったら面白い言葉のチョイスをするなと思ったり。でも、伝えたいことはみんな同じなんだなって思えたんですよね。シングル3部作の最後の曲になった「たしかなうた」は、アルバムの中ではこの曲だけ歌詞とメロディが先にあった上でトラックを付けたんです。
──この曲はバンドの決意と現在地を示すミディアムバラードで。とても重要な1曲ですね。
蒼山 はい。1年半くらい前から原曲があったんですけど、そのときは「ねごとらしいサウンドを付けるのが難しいよね」っていう話になって一旦置いておいたんです。でも、今回アルバムを作る中で、今の私たちなら完成させて出せるなと思って。改めてアレンジしました。歌詞の内容は原曲のときとそんなに変わってないんですけど、不思議と言葉の意味や重みが4人のものになったなって。
アルバムの裏テーマは「大きな花を咲かせたい」
──アルバム曲は、ねごとの元来の魅力であるオルタナティブな感性に裏打ちされたポップネスが多彩な形で表れていますね。
沙田 曲を面白くするのは大前提なので。そこに関してはずっと迷いがないですね。どんな曲でもみんなビックリさせたいし、歌ってもらえるものを作りたいと思っています。
──例えば「潜在証明」は、USインディロック感のあるサウンドとエモーショナルでキャッチーな歌が、幸福なバランスで同居していて。
沙田 ありがとうございます。いつもだったらトラックをしっかり作り込むんですけど、この曲に関してはスタジオでひらめいたギターリフからどんどん展開させていったんです。「ex Negoto」に通じる部分もあると思うし、今だからこそ出せるフレッシュさもあって。あと、ちゃんと憂いもあるところが自分でもいいなって思いますね。
──大人っぽいムードをにじませながらダイナミックなサウンドを展開していく「そして夜明け」もいいですね。
蒼山 この曲は去年の春頃には原形ができていて。メロディを瑞紀が、歌詞は佑が中心になって書いています。音から情景が見える感じがあって。その中には透明感も切なさも躍動感もある。とてもいいバランスで言葉と音が紡がれている曲だと思います。
──本編ラストの「flower」は、展開も多くて、つかみどころのない曲というか。ドラマチックでもあり、情熱的でもあり、不可思議でもあり。
沙田 大きな花を咲かせたいという思いが、このアルバムの裏テーマでもあるんですけど。それを表現した曲ですね。サウンドはある意味で悪巧みをしようと思って(笑)。もともとは3分くらいの曲だったんですけど、わざと間奏を長くしたり、展開を多くして。この曲の一筋縄ではいかない感じって、ねごとがもともと持っている魅力で、私たちにしか生み出せないものだと自負しているんですね。それをこれからも大事にしたいし、だからこそ最後の曲にしたんです。やっぱりリスナーに追いかけたいと思ってもらえるバンドでありたいから。
自分たちが音楽とともに生きていくことを証明する
──5月まで続く全国ツアーもすぐにスタートしますね。
蒼山 そうですね。早く「5」を体現する私たちをみんなに観てもらいたいです。外に向いているアルバムだけど、4人の結びつきを強めてくれたアルバムでもあるので。
沙田 うん、そうだね。「5」を作れたからこそ、堂々と全国に行けます。
──ツアーのタイトルに「卒業旅行は全国ツアー」って付いてますけど、大学の卒業式もツアー中にあるんですか?
沙田 卒業できる予定なんですけど、卒業式は参加できるかわからないですね。去年までの自分だったら卒業式に出たいと思っていたと思うんですけど、今は何よりも音楽を大事にしたいので、ライブ優先です(笑)。
──大学卒業後のイメージはもうできていますか?
沙田 音楽に集中したいですね。今まで思い描いていたことや憧れていたことをひとつひとつ実現していきたいと思うし、自分たちが音楽とともに生きていくことを証明しなきゃいけないと思っていて。もう迷いはないので。すごくワクワクしています。
蒼山 これからもっと、ねごとの名前をたくさん知ってもらえるように、積極的に自分たちの音楽を発信していきたいと思います。攻めます(笑)。
- ニューアルバム「5」/ 2013年2月6日発売 / Ki/oon Music
- 完全生産限定盤 [CD] / 3500円 / KSCL-2197
- 通常盤 [CD] / 3059円 / KSCL-2198
-
CD収録曲
- greatwall
- トレモロ
- sharp ♯
- nameless
- たしかなうた
- 街
- 潜在証明
- メイドミー…
- Re:myend!
- そして、夜明け
- Lightdentity
- flower
- SEED with groove(ボーナストラック)
完全生産限定盤のみ収録
- nameless -instrumental-
- greatwall -instrumental-
- たしかなうた -instrumental-
ねごと
蒼山幸子(Vo, Key)、沙田瑞紀(G)、藤咲佑(B)、澤村小夜子(Dr)からなる4人組バンド。高校2年生だった2008年1月に結成し、春に開催された「閃光ライオット2008」に応募。予選を順当に通過し、8月に行われた決勝大会に進出。審査員特別賞を受賞する。同年11月に発売された「閃光ライオット2008」コンピレーションアルバムにも、大会で披露した楽曲「ループ」で参加する。その後勉強に専念するため一時ライブ活動を休止するも、2009年9月に本格活動開始。2010年2月より行っている自主企画「お口ポカーンフェス?!」も毎回好評を博している。2010年9月29日、1stミニアルバム「Hello! "Z"」をKi/oon Musicよりリリース。2011年3月発表の1stシングル「カロン」はau「LISMO!」のCMソングとしてオンエアされ、幅広い層から注目を集めた。同年7月、初のフルアルバム「ex Negoto」をリリース。2012年11月7日発売のシングル「nameless」から3カ月連続でシングルリリースし、2013年2月には2ndアルバム「5」を発表した。