音楽ナタリー Power Push - Nao Yoshioka

「日本と世界に私のソウルを」夢の途中で見せる笑顔

1stを経て「もっと自分の言葉で歌ってみたい」

──「Rising」は、ソウルスタンダードのカバーも相当数あった前作に比べて、オリジナル曲を重視してNaoさん自身も作詞作曲にコミットしていますよね。これにはどんな意図が?

そもそも「The Light」は、デビューをするまでの自分の人生とこれからの自分を描いたアルバムでした。一応私もアイデアを出して、アーティストにお願いして曲を作っていただいて。それも素晴らしい体験だったんですけど、そのアルバムを経て「もっと自分の言葉で歌ってみたい」っていう思いが湧いてきたんですね。「The Light」は半分ぐらいがカバー曲だったんですけど、リリース後にプロデューサーと「次の作品は何をカバーする?」っていう話し合いをしてたら、プロデューサーから「カバーやりたいってもうあんまり思ってないよね?」と言い当てられて。次はオリジナルで勝負したいし、自分たちチームのメッセージを思いっきり伝えるものにしたかったんです。だから作詞作曲については、1stを経て、もっと自分の深いところやアーティストとして何を伝えたいかを知ってもらいたいっていう気持ちがすごくありました。

──実際に作詞作曲はすんなりできましたか?

全然できなかったです(笑)。アルバムのコンセプトを作ってから、コンセプトに合わせて1曲1曲歌詞を書いていったんですけど、私が「きっとできないですよ……」って心が折れ始めてたら、プロデューサーから「1週間に1曲歌詞を送って」という宿題が課されて、「はあー!」って。それから毎週必死にどうにか……。

──そうなんですね(笑)。プロデューサーはきっと、Naoさんの中に伝えたい思いがあるなら、それをちゃんと曲として出すべきだということを言いたかったんでしょうね。

そうですね。あの指令がなかったら、私絶対やらなかったと思います。ステージに立ってるときは自信満々な素振りをしてるんですけど、実はけっこうビビリ症で、自分が踏み出せないところを周りの人に引き出してもらってるって感じなんです。

──ライブで涙している人も、Naoさん自身から発信される自意識のある曲だからこそ心に響いている、という部分はあると思います。オリジナル曲での表現力を身に付けたことで、単に“歌のうまい人”とはさらに一線を画す、1つ上のレベルに到達したのではないかと私は思いました。

Nao Yoshioka

うれしいです。ありがとうございます。私は、ライブっていう場所が自分にとって一番大切な場所なんですよ。だから作品を作ってるときもライブをする自分を想像してるし、ライブで伝わる音楽が一番リアルだと思っていて。「The Light」の頃のライブは、オリジナル曲とカバー曲を混ぜながらやっていたんですけど、それは「こういう曲欲しいよね。でもオリジナルにないからこの曲カバーしてみようよ」っていう感じになってたんですよ。で、じゃあその欲しい曲をオリジナルで作ろうということで、作って「Rising」の収録曲になったものもあります。今は全部自分のオリジナル曲で楽しんでいただける機会もあって、ライブとしてもすごく面白いものができてる気がしますね。

言葉じゃなくて景色として歌を魅せられたら

──今、自分のことを知らない人にNao Yoshiokaはどんなアーティストか説明するとしたら、なんと言いますか?

難しいですねー。たぶん説明できないから歌うと思います。アカペラで(笑)。

──それはいい! もっとも歌手らしい手段ですね。

たぶんそれが一番わかりやすいのかなと。言葉にして言うって難しいですね。Don't think. Feel=考えるな感じろ!っていう(笑)。

スタッフ でも前に言ってたよね? 「どんなことを大切に歌ってるか」っていう質問に「映画を観るように」って。

そうですね。それはいつもなんです。私の中では1曲1曲が短編映画みたいになってて、ライブやアルバム全体合わせて1つの長いストーリーになってるというふうに考えてて。私はその世界の主人公だと思ってるんです。だから歌ってるとき、頭では映像が流れていて、言葉というより映像で伝えられるようにと思ってやっています。

──歌詞をただなぞるわけではなく。

Nao Yoshioka

はい。ソウルミュージックの歌詞ってめっちゃ簡単なものが多いんですよ。「I love you」とか「I need you」とか。「私はあなたを愛してる」っていう言葉は、50年愛し合った夫婦でも、15歳ぐらいの男の子の初恋でも使えるじゃないですか。でも映像が付くとそのニュアンスや意味合いがありありとわかりますよね。歌の場合、それがその人の表現力だと思ってて。言葉じゃなくて景色として歌を魅せられたら一番いいなと思ってるんです。

──それが自分が歌い手として一番大事にしてることなんですね。どんなアーティストなのかという問いの答えにはしっかりなってると思います。

よかったです。そういえばデビュー当時は「英語詞だからよくわからない」とか「日本語の曲は歌わないんですか?」ってよく言われてたんですよ。今、一切言われないんですよね。「細かくはわからないけど伝わりました」とか「よくわかんないけど涙が出ました」という声をもらうんです。音楽ってそれでいい気がしていて。もう十分伝わってるじゃないですか。自分の気持ちと重ねて何か感じてもらえれば。それが正しいのではないかなと思ってます。

「Nao Yoshioka Rising Japan Tour 2015 -Living Our Dreams」ファイナル公演
  • 2015年11月21日(土)東京都 イイノホール
    OPEN 17:00 / START 18:00

チケット一般発売中

Nao Yoshioka(ナオヨシオカ)

Nao Yoshioka

ニューヨーク仕込みのパワフルなボーカルと表現力を武器とするソウルシンガー。2009年からアメリカ・ニューヨークに2年半滞在し、Apollo Theaterで行われた「アマチュアナイト」で準優勝、アメリカ最大規模のゴスペルフェスティバルで4万人の中からファイナリストに選出されるなど輝かしい成績を残して帰国する。2012年、初のオリジナル曲「Make the Change」をSWEET SOUL RECORDSから発表。和製アリシア・キーズと呼ばれ、渡米時にはゴードン・チェンバースから称賛を受ける。2013年11月に1stアルバム「The Light」をリリース。2015年4月にはヤマハミュージックコミュニケーションズから2ndアルバム「Rising」でメジャーデビューを果たし、「SUMMER SONIC」「JOIN ALIVE」といったフェス出演やブルーノート東京での単独公演、アメリカツアー、全国13カ所を回る国内ツアーを行った。