音楽ナタリー Power Push - 南波志帆
3年の修行期間を経て見つけた“ときめき”ワールド
新世代サウンドプロデューサー、THE CHARM PARK
──作曲も全11曲中5曲がチャームさんですね。
チャームさんの曲はすごく肌なじみがよくて。チャームさんはアルバムの全体像を探りながら「どんな曲が欲しいですか」とリクエストを受けてくれて、「全編英詞の曲が欲しいです」とか「がっつりバラードも1曲あったらいいな」とか密に話しながら進めていきました。今回のレコーディングはチャームさんが書いた「Good Morning Sunshine」と「夢じゃない。」から始めたので、チャームさんの中でもそこで何かつかめたところがあったみたいです。
──5曲ともニュアンスの異なる曲ですけど、どれもチャームさん自身の音楽とも違っていて。かなり幅広い音楽センスを持っている人なんだなと驚きました。
そうなんですよね。チャームさんを知っている人は、私との音のハマりはどうなんだろうと気になったかと思うんですけど、めちゃくちゃ相性がよくて。人としての相性もよくて、チャームさんの人柄のおかげでストレスなくレコーディングできました。
──このアルバムは南波さんの新しい一歩としても評価されると思いますけど、サウンドプロデューサー・THE CHARM PARKにも注目が集まる1枚になるんじゃないかという気がします。チャームさん、このあと忙しくなるんじゃないかなと。
ホントそうですね。音楽をやる以上、できるだけ多くの人の目と耳に触れないといけないので、私自身もそうですけど、せっかく自分のレーベルを作ったのでここからどんどん新しい才能を送り出していきたいと思います。私も今いろんなアーティストさんに目を光らせていて。自分の作品だけじゃなく、いろんな方の作品をsparkjoy recordsから出していきたいんです。
“南波志帆”を演じていた自分からの脱却
──アルバム制作を通して、自分の中で一番変化したのはどういうところだと思いますか?
うーん、なんだろう。やっぱり3年前とは実力も変わってきていると思うので……昔は強がっていたけど、思うように歌えないところもたくさんあったんです。でも3年の修業期間が功を奏して、自分が思う通りの声を出せたなと思います。気持ちよく心を開いて歌えたことが、一番の変化ですね。
──実力が伴ってきたことによって、プレッシャーから解き放たれたような。
きっと私自身も「南波志帆」というものを理想化しすぎていたというか……大先輩方が作った曲を歌う女の子、というイメージを作り上げるプレッシャーもありましたし、皆さんが想像する南波志帆を私も徹底的に演じなくちゃいけないという思いがあって。ある意味自分自身もプロデューサー的目線で「南波志帆はこういう歌い方はしない」と考えていて、それが正解だと思っていたんです。でも今考えると、自分が理想化した南波志帆に、自分自身ががんじ絡めになっていて。自分なんだけど自分じゃないような変な感覚で、自由に思うように歌えない苦しさが一時期あったんですよね。そういうすべてのものから今は解放されて「私が南波志帆だ」と思えるようになったし、イメージにとらわれないからこそいろんな引き出しを開けて、自由に音楽ができたという実感があります。
──その南波志帆評を、まさか本人の口から聞くことになるとは思いませんでした(笑)。きっと南波さんの音楽を昔から聴いていた人は、このアルバムを聴いてそんなふうに感じると思うんですよね。ここまで細かい分析は評論家の仕事だと思いますけど。
あははは(笑)。きっと3年経って昔の南波志帆といい距離感がとれた今だからこそ、そうやって分析できるんだと思いますけどね。当時はただ「なんでだろう?」と思いながらやってましたもん。
──新たな一歩で、胸を張ってリリースできるアルバムが完成してよかったですね。
はい。でも不思議と制作前から不安は一切なくって、絶対にいいものができるという確信がなぜかあったんです。ある意味苦しい時期を味わったことで得た経験を通して……やっと人間になれたというか(笑)、この3年でようやくしっかりとした芯ができたという実感があったので。今なら絶対に胸を張ってみんなに発信できる音楽が作れるという自信があったし、ずっと音源を出せていなかった分の“出したい欲”みたいなのが……爆発? ちょっと違うなあ(笑)。
「ときめき」を大事に
──胸を張って次の一歩が踏み出せたなら、このあとについても楽しみですよね。チャームさんとのコンビネーションをさらに深めていくのもいいでしょうし、また新しい刺激を求めてもいいかもしれない。
チャームさんとは今回の制作の途中にも、次はチャームさんが曲を作って私自身が作詞をしたりとか、共同で作るのもいいかもなって話していたんです。個人名義で初めて自分の作詞曲を歌うのも今ならアリかなと思っていて。またその先にある目標としては……私がDJをやっている「ミュージックライン」という番組はいつも1組のゲストアーティストをお迎えして、毎回が対談みたいな感じなんですよ。ちょうど1年ほど番組を続けてきて、たくさんの著名な方々と出会って刺激をもらってきましたけど、お話の中で「南波志帆に曲を書きたい」と言ってくださる方がありがたいことに何名かいらっしゃったんです。だからいつか、番組で出会った方々と「ミュージックライン」というアルバムが作れないかなあって。
──あー、それはいいですね。では個人としてではなく、sparkjoy recordsのレーベルヘッドとしての具体的な野望はありますか?
そうだなあ、まずはしっかり自分の作品を作っていきたいというのはありますけど、将来的にはオーディションなども行って、自分の考えに賛同してもらえる仲間たちを増やしていきたいです。もっとアーティストを集めてレーベルとしての価値を高めたいと思いますし、いずれは大きな会場でsparkjoy records主催のレーベルフェスがやりたいです。そのためにも、今はコツコツとがんばらなくちゃいけないなって。
──ほかのアーティストを招き入れる上で、レーベルカラーとして大切にしているものは?
抽象的な言葉になっちゃうかもしれませんけど、「ときめき」ですね。今回のアルバムのキーワードにもなっているんですけど、ときめくものって絶対的に尊いと思うし、ときめく瞬間は人それぞれにポイントがあると思うんですけど、それってなかなか言葉で表せないですよね。「確かなものではないもの」というか。心動かされる音楽に出会ったときの感情はまさにそれだと思うんです。心がときめくアーティストを呼びたいし、私と同じようにときめきを音楽で発信したいと思っている方々と一緒にお仕事ができたらいいなと思いますね。
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- 南波志帆 ニューアルバム「meets sparkjoy」 / 2016年4月6日発売 / 3024円 / sparkjoy records / SPJR-001
- 南波志帆 ニューアルバム「meets sparkjoy」
- TOWER RECORDS ONLINE
- Amazon.co.jp
収録曲
- Good Morning Sunshine
[作詞:fifi leger / 作・編曲:THE CHARM PARK]
- 夢じゃない。
[作詞:fifi leger / 作・編曲:THE CHARM PARK]
- necco
[作詞:持田香織 / 作曲:Tore Johansson、Martin Gjerstad、Susanne Johansson / 編曲:Tore Johansson]
- コバルトブルー
[作詞・作曲:ブルー・ペパーズ / 編曲:the sparkjoy band]
- Coffee Break
[作詞:THE CHARM PARK、fifi leger / 作・編曲:THE CHARM PARK、URU]
- ミモザ
[作詞:佐川ちとせ / 作曲:sugar me / 編曲:the sparkjoy band]
- おとぎ話のように
[作詞・作曲:吉澤嘉代子 / 編曲:the sparkjoy band]
- トラベル
[作詞:tofubeats / 作曲:Tore Johansson、Martin Gjerstad、Vilma Johansson]
- にじいろの街で
[作詞:fifi leger / 作・編曲:THE CHARM PARK]
- Adieu Tristesse
[作詞:fifi leger / 作・編曲:THE CHARM PARK]
- Antique
[作詞・作曲・編曲:市川和則]
南波志帆(ナンバシホ)
1993年6月14日生まれ。福岡県出身。2008年11月、矢野博康プロデュースによる1stミニアルバム「はじめまして、私。」でLD&Kよりデビューを果たす。2010年6月にはメジャー第1弾ミニアルバム「ごめんね、私。」、2011年7月20日には初のフルアルバム「水色ジェネレーション」、2012年12月には2ndフルアルバム「乙女失格。」をリリース。透明感のある歌声と独特の存在感が話題を呼び、幅広い層から支持を集める。2014年2月にはタルトタタンとのユニット・ナンバタタン、同年6月には5人組クリエイターユニット・xxx of WONDERの一員としてそれぞれCD作品を発表。2016年1月には新たな活動拠点として、タワーレコード内に自身が主宰するレーベル「sparkjoy records」を設立した。4月には同レーベル第1弾作品となる自身のオリジナルアルバム「meets sparkjoy」をリリース。7月には大阪、福岡、東京の3都市を回るワンマンツアー「THE NANBA SHOW 『meets sparkjoy』 tour 2016☆」を開催する。