ナナヲアカリ|ピノキオピー、かいりきベア、煮ル果実と語るナナヲの内面と2020年の動画音楽シーン

今はボカロの時代じゃない?

かいりきベア 皆さんはまだニコニコ動画にも動画投稿をしていますよね?

ナナヲ はい。ニコ動も大好きなので。

煮ル果実 ニコニコでもYouTubeでも投稿しています。

ナナヲアカリ

ピノキオピー 僕も両方で投稿していますけど、ニコニコは投稿者も視聴者も減ってしまって、ランキングで戦っている感じがしなくて。かと言って、YouTubeにはランキング自体がないので、新しい人に陽が当たるタイミングがほとんどない。

かいりきベア YouTubeの場合、関連動画でサジェストされるから誰かと一緒に投稿したほうがいい、みたいな。ニコニコが主流だった時代とは新しい動画やクリエイターに出会うルートがかなり変わったと思います。

ピノキオピー YouTubeでは同程度の再生数の動画が関連動画としてサジェストされるみたいなので、新しい人が出てきにくくなったのは間違いないと思います。

かいりきベア ボカロが流行のピークを迎えたと言われているのが2013年なんですけど、その前後はある種の“ビジネス目的”でボカロを始める方も多かったと思うんです。ただ煮ル果実さんのような新世代のクリエイターは、ピークを終えてしばらく経ってからボカロの世界に参集したわけですよね。どういうモチベーションでボカロPを始めたのか、すごく気になっているんです。

ピノキオピー それ、僕も気になりますね。僕が言うのもアレですけど、今はボカロがブームの時代ではないじゃないですか。

煮ル果実 僕はボカロの音楽が出始めた最初期からずっとシーンを見てきたので、ボカロが好きなジャンルみたいなものなんです。好きな音楽を自分もやってみたいという気持ちが抑えきれなくなって、ボカロPになった感覚があります。

ナナヲアカリ

ナナヲ 「ボカロが好きなジャンル」という気持ち、すごくわかる。ナナヲは「初音ミクになりたい!」と思って歌い始めたみたいなところがあるから。

ピノキオピー ボカロの音楽を1つのジャンルとして捉えていただいているという事実だけで勇気が出ますね! 長い間ボカロで曲を作ってきましたけど、初期からずっと不安を抱えながら続けてきたんですよ。だから新しい人たちが出てきてくれるのは僕にとってすごく喜ばしいことだと感じています。

かいりきベア 2013年の頃と比べて平均的にいろんな曲を作れる人が減りましたよね。最近は煮ル果実さんのような個性が尖った人ばかりが出てくる傾向にあるので、僕としては脅威だとも思っています(笑)。

ピノキオピー でもかいりきさんも若い世代の影響をちゃんと受け取って、どんどん瑞々しくなってますよね。どんどん最高を更新しているイメージがあります。僕にも流行を取り入れたいという気持ちはあるんですが、なかなかうまくいかなくて。かいりきさんはちゃんと流行の芯を捉えて、自分のものにする力があるクリエイターだと感じています。

かいりきベア むしろそうしないとこのシーンにしがみついていけないからですよ(笑)。僕からするとピノキオピーさんのほうがすごいと思っています。シーンに合わせなくても進んでいける実力とセンスを兼ね備えた方、ということですから。

煮ル果実 ピノキオピーさんやかいりきさんのようなベテランのクリエイターでも、皆さん悩んでいるんですね。なんだか少しホッとしました(笑)。

ナナヲ 果実さんは強烈な個性を持って突き進んでいくタイプですよね?

煮ル果実 そうかもしれないですね。僕もトレンドを捉えて自分の曲に反映させたいとは思っているんですが、自分が作れるものとの兼ね合いで苦戦していたので、今の話はすごく参考になりました。

全部聴けばナナヲのことがわかる

ピノキオピー ナナヲさんは自分のやりたいことと流行のギャップに悩んだりしませんか?

ナナヲ 自分自身のことを顧みたとき、ナナヲは責任感がないと立っていられないアーティストだと思うんです。だから「ナナヲアカリってこうだよね」という期待は裏切れないと思いつつ、「いや、本当の私はこっちにいるんだよ」と思う自分で悩むこともあって。フルアルバムのような作品だと、その両方のナナヲを表現することができる手応えがあるんです。皆さんの力を借りながら自分の言いたいこと、自分ができること、やりたいことをごちゃ混ぜにしたものを作ることができて、自分としてはすごくスッキリしました。

ピノキオピー さっきの拡散されるものと人の心に残るものの話で言うと、結論として僕はどちらも両方やっていく必要があると思っているんです。自分のものじゃなくなるんじゃないかと思うぐらい拡散されたとしても、何割かの視聴者は気付いて、僕らのほかの曲とちゃんと向き合ってくれる。そういう人たちが本当のファンになってくれるんじゃないかな。

ナナヲ それだー!

かいりきベア そう考えるとナナヲさんはナチュラルにどちらの表現にも力を入れていたわけですよね。

ナナヲ 「七転七起」は、図らずもそういうアルバムなのかもしれないですね。ライトなところから入ってもらいつつ、全部聴いてもらったらナナヲのことがわかる!みたいな作品になっているのかも。今さら気付きました(笑)。

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