ナタリー PowerPush - THE NAMPA BOYS
19歳の“今”を切り取った「froM」
THE NAMPA BOYSは1曲では表せない
──基本的にTHE NAMPA BOYSの曲は、小林さんの日常から生まれてるんですよね。
小林 そうですね。
──しかも、そこには鬱屈が大きく横たわっている。そう考えるとシングルの「プランジ」は異色な曲ですね。これは非常に爽快な曲じゃないですか。
小林 そうなんですよ。これは全く俺らしくない曲で。
──これはドラマの主題歌というお題があったからこそできた曲?
小林 ええ。ドラマに寄り添った内容だと思います。「プランジ」の主人公の「僕」は、なかなか自分とはそりが合わなそうな人だなっていう気もするし(笑)。でも、それは「いくぜ! いくぜ!」っていう自分の中のあんまり人には見せない部分なのかなとも思いますね。この曲を作ろうと思った段階では、「待つ元」の頃とはだいぶ精神状態が変わって、前向きになってきていたし。ただ、THE NAMPA BOYSというバンドを「プランジ」という1曲で表せるかっていったら違うかな、っていうのはありますね。だからこそ、このミニアルバムがあるという。
──ということは、サウンド面で同じような曲が並ぶような作品にはしたくないという意識が働いた?
小林 いや、実はそんなに考えてなかったかも(笑)。本当にやりたいようにやっていただけだったので。でも、結果的にすごくいいバランスになった。必然という気もします。
ヒップホップが歌詞に与えた影響は大きい
──皆さんが聴いている音楽の幅も、ここ最近で広がった感じはありますか?
小林 それはありますね。僕はここ1~2年で一番衝撃的な出会いだったのは、長澤知之さんかもしれないです。「こんなにやっちゃっていいの?」って思った。
田中 僕はヒップホップの影響が大きいですね。それまでヒップホップには興味なかったんですけど、自分のイメージしていたものとは違う発見と、こういうところがカッコいいんだっていう再確認があったり。これはほんとに(小林)聡里の影響なんですけど。
──「月照」にはヒップホップの影響が出てますよね。小林さん的にはヒップホップのどういうところに惹かれますか?
小林 言葉遊びの面白さだったり、表現の仕方の面白さですよね。イメージを対比させたり、比喩として使ったりしながら詞を書いてると、ヒップホップの詞ってすごいんだなって思う。特にShing02とか、SOUL SCREAMとか、言葉のチョイスの仕方とストーリを組み立てていくやり方はすごいと思います。自分の歌詞の書き方にヒップホップが与えた影響は強いと思いますね。
僕ら「クラウド世代」って言われてますから
──皆さんは今19歳ですよね。自分の世代について、どういうふうに思っていますか?
小林 というと?
──例えば、「到来」や「待つ元」には、追い詰められるような感覚、先の見えない鬱屈とした感情があるわけですよね。そういう感覚は、自分自身だけのものなのか、それとも世代的なものと感じているのか。皆さんは上の世代からは「ゆとり世代」なんて揶揄されたりもする。そういうことに対して、どう思ってます?
小林 世代に関して言えば、意外と華やかなんじゃないですかね。きゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんとか、同世代だし(笑)。ただ世代的に、考えたり、深く掘り下げることって少なくなってきてるんじゃないかなって自分でも思ったりします。簡略化したり省いてきてしまったところはあるかもしれない。だって中学生とか高校生の頃に、雑誌とかの情報じゃなくて、YouTubeをチェックすれば聴きたいもの、観たいものがあるんですよ。当時は意識してなかったですけど、今考えればすごいことだし、そこで得たものもあったと思います。
──なるほどね、それは大きいですよね。
小林 僕ら「クラウド世代」って言われてますからね。学校の宿題を普通にdropboxで共有したりしてますし。だってそのほうが便利だもん、っていう。でも、自分は音楽だったらなるべく掘り下げて聴くようにはしてて。ゆとり世代だろうがなんだろうが、自分は自分なりに考えるし、それを音楽にする。どこまで自分を掘り下げられるか。そこはどの世代でも変わらないと思うし、それが一番重要なことだと思います。
ミニアルバム「froM」/ 2012年7月11日発売 / 1680円 / A-Sketch / muddy water records / AMWR-1004
CD収録曲
- 到来
- プランジ
- 月照
- 螺旋インセクト
- キャンバス
- 待つ元
THE NAMPA BOYS(なんぱぼーいず)
2005年に小林聡里(Vo, G)と田中悠貴(B)を中心に結成された4人組ロックバンド。メンバー全員が長野県松本市出身で、2008年の第1回「閃光ライオット」にて本戦出場を果たし、大きな注目を集める。その後地元での活動を経て、高校卒業を機に上京。都内で精力的なライブ活動を行う中で、現在の所属レーベルのスタッフの目に留まり、6月6日にテレビ東京系「クローバー」のオープニングテーマに起用された「プランジ」でデビュー。同年7月にミニアルバム「froM」をリリースする。