ナタリー PowerPush - THE NAMPA BOYS

満を持して全国へ 入江悠監督と熱血対談

映画「SR サイタマノラッパー」シリーズで、一躍日本映画界の注目すべき監督となった入江悠。彼が手がける初の連続ドラマ「クローバー」が現在テレビ東京系で放送中だ。そのオープニングテーマ「プランジ」を手がけているのが、4人組ロックバンドTHE NAMPA BOYSである。

長野県松本市で産声を上げたこのバンドは、現在19歳にして栄光と挫折の味を知っている。2008年、15歳のときに第1回「閃光ライオット」で大会最年少のファイナリストとなったが、その後バンドの道のりは順風満帆とはいかなかった。有頂天になったフロントマンの小林聡里(Vo, G)がメンバーからクビを宣告されるなど、さまざまなトラブルによりバンドが空中分解する局面もあった。そんな紆余曲折を経て、昨年メンバー全員で上京。彼らの楽曲を聴いた入江監督の抜擢により、「クローバー」オープニングテーマのために書き下ろした「プランジ」で念願のデビューを果たすことになった。

情熱を殺さないためのロックソング。「プランジ」は、不良たちの熱い友情を描いたドラマの内容に寄り添っている一方で、何があっても剥き出しの衝動を掲げ、前傾姿勢で音楽を響かそうとするTHE NAMPA BOYSの信念を感じさせる。今回、ナタリーではTHE NAMPA BOYSと入江悠監督の対談を実施。「クローバー」と「プランジ」を入口に、「出身地に対する愛憎」や「表現者として語るべき物語」などについて、ディープに語り合ってもらった。

取材・文 三宅正一(ONBU) / 撮影 平沼久奈

「ここから始めるんだ!」って思いを込めた

──入江監督が「クローバー」のオープニングテーマをNAMPA BOYSに書いてもらおうと思った決め手はなんだったんですか?

入江悠 候補のバンドが何組かいて。それぞれの音源を聴かせていただいたんですけど、その中で一番勢いがあって、パワーがあったんですよね。そのとき既に脚本も最終回まで上がっていて、ドラマのオープニングにピッタリだなと思いました。青春特有の空回りする感じってあるじゃないですか。勢い良く突っ走って、失敗して、それでも諦めないみたいな。それを感じさせてくれるバンドだなって思ったんです。ただ、申し訳ないんですけど、経歴は全く知らなくて。単純に曲だけを聴いて決めたんですね。オープニングテーマをお願いすることが決まったあとに長野出身で、19歳のバンドであることを知って。「若っ!」って思いました。「まだまだこれからじゃん!」って思ったんですけど、だからこそ「これから東京でやっていくぜ!」みたいなバンドの勢いを曲から感じたのかもしれない。

──一方、NAMPA BOYSはどういうテーマを持って「プランジ」を作ったんですか?

インタビュー写真

小林聡里(Vo, G) 最初に監督とお会いして話したときに「疾走感」と「若さゆえの情熱」というキーワードを僕なりに受け取って。それを元に自分たちのバンドヒストリーと照らし合わせて書き上げたという感覚が強いですね。「クローバー」の世界とバンドの世界の共通項はどこにあるのか考えながら。そこからさらに見出したキーワードが「仲間」だったんです。僕らにとってのそれはバンドであり、「クローバー」の主人公の(美咲)ハヤトにとっては、(奈良)トモキと(花山)ケンジという親友であり。「クローバー」から「仲間と一緒にここから始めるんだよ!」っていう強い意志を感じたので、その勢いを曲にも全面に出すことを意識しました。僕らのバンドヒストリー的にも、「ここから始めるんだ!」っていう思いが強くあって。結構鳴かず飛ばずでここまで来たので。

入江 あ、そうなんだ。

──鳴かず飛ばずと言っても、19歳なんですけどね。

入江 ですよね(笑)。

小林 でも、僕らは中1のときからバンドをやっていて。

入江 それは早いですね。

小林 それで去年4人で上京したんですけど、これまで結構紆余曲折あったんです。「プランジ」は、僕らがようやくリリースできる初めての全国流通シングルでもあるんです。そういう意味でもハヤトたちの「俺たちは負けねえ!」っていう思いにはすごく共感できるんですよね。歌詞の「間違いじゃない 声上げて叫ぶ 手を上げろよ はじめようか!」っていうフレーズはそういう思いを込めました。

インタビュー写真

田中悠貴(B) 聡里は「クローバー」の主題歌用に9曲書き上げてきたんですけど、その中でこの曲が一番ドラマの内容に合ってるなと思いましたね。歌始まりで、冒頭から攻めていて。自分のプレイ的にも、曲に対して思いっきり突っ込んでいけるなと。

──9曲も書き上げたんだ。

小林 監督と初めてお会いしたときにドラマのスタッフの方から「10日で3曲書いてきてほしい」って言われたんですけど、俺はそこで意地になって9曲書き上げたんです。その勢いも「クローバー」的だったというか(笑)。意識していたわけじゃないですけど、どこかでそういうモードのスイッチが入ってたんだと思います。

THE NAMPA BOYSには巡り合わせを感じる

──監督にとって「クローバー」の世界観は、ご自身のオリジナル作品とは明らかに一線を画すものですよね。そのあたりはどう消化しようと思いましたか?

入江 昔からヤンキーものが好きだったので、単純にそれだけで引き受けたというのが正直なところなんですけど(笑)。脚本は別の方が書いていて、僕は演出に専念することができたんです。それがすごく新鮮で、面白かった。これだけ毎回ケンカばかりするストーリーはヤンキーものならではですし。

──暴力シーンの描き方ひとつ取っても、監督の代表作である「SR サイタマノラッパー」とは真逆ですよね。

インタビュー写真

入江 そうですね。僕が脚本を書く場合は、息苦しくなるような間接的な暴力ですけど、「クローバー」はどちらかと言えば爽快感のある暴力なので。そこで振り切った演出ができるのもマンガの原作があって、他の方が脚本を書いてるというのは大きいですね。自分で脚本を書いたら絶対にこうはならないですから。そういう意味でもオープニングテーマは重要で。「クローバー」にある、ケンカが終わったらすぐに忘れて、次の展開に入っていくようなスピード感を象徴してほしかったし、「プランジ」はまさにそういう曲だなと思います。

──「プランジ」は19歳のNAMPA BOYSだからこそ書けた曲なんでしょうね。

入江 僕も19歳のときに映画監督になりたいと思って埼玉から上京してきたんですよ。

小林 あ、そうなんですか?

入江 うん。それから映画の道を何年か歩んできて、ふと自分自身を振り返ったときに撮ったのが「SR サイタマノラッパー」だったので。そのシリーズが3作目(「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」)で完結して、「クローバー」という初めての連ドラを撮るタイミングで長野から上京してきた19歳のNAMPA BOYSと出会えたのは、巡り合わせのようなものを感じますよね。

小林 うれしいです。おこがましいですけど、僕も「SR サイタマノラッパー」シリーズを観て、勝手にシンパシーを感じていたので。行き詰まった現状を抱えているダメな主人公たちが這い上がっていく感じとか。例えばeastern youthを初めて聴いたときや、ヒップホップも好きなので「さんピンCAMP」の映像を初めて観たときに人間が音を出す生々しい熱をすごく感じたんですよ。それは、こぎれいにやろうとしても出ないもので。やっぱり今でもそういう表現に惹かれるし、自分もそういう曲を書いていこうって自然と思うようになったんですよね。

ニューシングル「プランジ」2012年6月6日発売 500円(税込)A-Sketch / muddy water records NMWR-1003

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CD収録曲
  1. プランジ
  2. 彼女の目
THE NAMPA BOYS(なんぱぼーいず)

2005年に小林聡里(Vo, G)と田中悠貴(B)を中心に結成された4人組ロックバンド。メンバー全員が長野県松本市出身で、2008年の第1回「閃光ライオット」にて本戦出場を果たし、大きな注目を集める。その後地元での活動を経て、高校卒業を機に上京。都内で精力的なライブ活動を行う中で、現在の所属レーベルのスタッフの目に留まり、6月6日にテレビ東京系「クローバー」のオープニングテーマに起用された「プランジ」でデビュー。

THE NAMPA BOYSライブ情報
MUSIC LINXS
2012年5月24日(木)東京都 新宿LOFT
OPEN 18:00 / START 19:00
<出演者>
THE NAMPA BOYS / SAKANAMON / KEYTALK / tricot
BARBARS PRESENTS[『B.B.Q』BARBARS QUEST~第二章 かいしんのいちげき!251のダメージをくらわせろ!~]
2012年5月26日(土)東京都 下北沢251
OPEN 18:30 / START 19:00
<出演者>
THE NAMPA BOYS / BARBARS / The HARPY's
BRAND NEW AGE
2012年6月3日(日)大阪府 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
OPEN 17:00 / START 17:30
<出演者>
THE NAMPA BOYS / paionia / BLUE ENCOUNT / Brian the Sun / and more
FM FUKUOKApresents LIVE GOW!! vol.1
2012年7月15日(日)福岡県 スパイラルファクトリー
OPEN 18:30 / START 19:00
<出演者>
THE NAMPA BOYS / The SALOVERS / OverTheDogs / and more
入江悠(いりえゆう)

1979年生まれ、埼玉県出身の映画監督。大学在学中に映画を作り始め、各地のフィルムコンテストで入選を果たす。代表作は「SR サイタマノラッパー」「SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム」「SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」など。映画界のみならず、音楽業界でも熱い注目を集め、特に「SR サイタマノラッパー」シリーズは高い評価を得ている。現在連続ドラマ初監督作品となる「クローバー」が、テレビ東京系で放送中。

ドラマ情報

テレビ東京系 ドラマ24「クローバー」
毎週金曜深夜0:12~放送中!(テレビ大阪は月曜深夜0:12~)

・オンエア局
テレビ東京ネット(テレビ東京・テレビ大阪・テレビ愛知・テレビ北海道・テレビ九州放送・テレビせとうち) / 奈良テレビ / 北陸放送