音楽ナタリー PowerPush - 中納良恵
ソロアルバムを語る、坂本慎太郎とも語る
ライブは?
──先ほど坂本さんはアルバムを全部聴いたとおっしゃっていましたけど、特に印象深い曲は?
坂本 10曲目(「濡れない雨」)とかは「カバーかな?」って思いました。昔からある曲みたいというか、完成された感じの曲でしたね。いい意味で。
中納 はいはい。ニューミュージックみたいですもんね。
坂本 すごくよかった。あとは1曲目から5曲目の流れが好きです。
中納 うれしいですね。
──坂本さんって、中納さんのボーカルにどんな印象を持っていましたか?
坂本 もちろんすごいうまいなあって思ってました。エゴのライブではパワフルな印象があったんだけど、そうじゃない曲もやるんですよね。この間のドラマ(「リバースエッジ 大川端探偵社」)のエンディングの曲(EGO-WRAPPIN'「サニーサイドメロディー」)とか、ああいうさらっとした曲もいい。
中納 あー。そうですね。なんかパワフルなのがだんだん疲れてきて……(笑)。そういえば、なんかの打ち上げで坂本さんに「ライブがパワフルだけど、なんかスポーツしてんの?」って聞かれたことがありましたよね。私水泳とかしてるから、「はい」って答えて。坂本さんも水泳しているんですよね?
坂本 もうやってないですね。もう何もやっていなくて……うん。最近何もやっていないです。
一同 (笑)
──そういえば、坂本さんはライブやらないんですか?
坂本 やんないです。今のところ。
──みんな待っていると思いますよ?
中納 「ライブやらないんですか?」ってめっちゃ言われるでしょ?
坂本 やらないですね。みんながやらなくなったらやります。
一同 (爆笑)
中納 やりたくないんですか? 私は坂本さんのライブが観たいですけど。
坂本 なんかね、本能が「まだやらないほうがいい」って言っているんです。野生の勘というか。
坂本さんはオシャレ
──中納さんは坂本さんをどういったアーティストだと感じていましたか?
中納 すべてがドラマチックだと思っていて。こういう言い方したらあれですけど、私の中ですごい……なんて言うかな、オシャレ……いやそういう軽いオシャレじゃないんですけど、とにかくすごいオシャレだと思うんですよ。ソロを始められてからも、あの音数で物語を成立させる感じとか。自分も音楽を作るからどんどん音を重ねたくなるんだけど、あの止め加減とか、わかっている大人じゃないとできない技だと思う。あえて難しいことをやらずに、すごく考えさせられる世界観を作るし。あと歌詞からも景色が浮かんでくる。すごいドラマチックやなって思いながらいつも聴かせてもらっていて。
──なるほど。
中納 ゆらゆら帝国のときは「ギャーン!」って感じで激しくて、ノリノリで踊れたりしたんですけど、あれを経ての今の坂本さんの感じとか、すげえオシャレだと思います。やっぱり、センスがすごい。ハイセンスですよね。できないですよね。音楽も風景も言葉もすべてがドラマチックで。
坂本 なんか恥ずかしいですね。
言いたいことはない
中納 坂本さん、本とか読みますか?
坂本 音楽の本とかを読んでます。小説とかは読まないですね。マンガもそんなに読まないです。自分で調べて探して、みたいなことはしない。読みますか?
中納 本はときどき。読むときと読まないときがありますね。小説とかよりもエッセイを読みます。
坂本 影響を受けた作品とかはありますか?
中納 影響とかではないですけど、最近では開高健さんの「風に訊け」っていう本が面白かったですね。どうしようもない男子高生の下ネタ系の悩みとかを、開高さんが一生懸命答えるっていう。
坂本 そういうのだったら読むかもしんない。僕は文学作品とかは読まないですね。大学の頃にカッコつけて読んだりしたけど、全然読まなくなってしまいました。中納さんは何かインスピレーションを得るために、映画を観たり本を読んだりしますか?
中納 映画も好きでちょいちょい観るし、美術館とかも行きます。最近音楽は聴かなくなったかな。新譜とか買ってないですね。あとはなんだろうな? エゴン・シーレの画集とか買いましたけど、音楽に反映されるかって言われたらわからないですね。
坂本 じゃあ作詞するときは、実体験から着想を得る感じですか?
中納 基本は実体験ですね。あとは映画とか。
坂本 「書くことが何もない」みたいな感じにはならない?
中納 めっちゃなりますね。なんも出てこないって。坂本さんも言っていたけど、私も基本的に言いたいことがないかもしれない。伝えたいこととか、そんなんは別にないですね。インタビューとかで「どういう思いで作りましたか?」って聞かれたりするけど、わかんなくなったりします。最後に坂本さんに聞きたいんですけど、坂本さんってソロで曲を作るときってどういうテンションですか?
坂本 ソロの曲は家に閉じこもって作ります。妄想の世界なんで。
中納 坂本さんの書く詞って、すごい大きいところからこちらを見下ろしていたり、先のほうからこちらを見ているようなイメージがある。
坂本 そうです。平たく言うと死んだようなつもりで書いています。
中納 そうなんですか(笑)。ちなみに死ぬのとかって怖いですか?
坂本 めちゃくちゃ怖いです。まだまだ死の恐怖は克服していません。小学生のときに感じた死の恐怖が形を変えながらずっと残っているような感じですかね。「痛くなければ死ぬのは別に怖くない」って人がいるんですけど、それが本当にわからない感覚なんですよ。寝てんのと一緒って言われるとそれはそうなんだろうなとは思うんですけど。
中納 小学生のときに感じた気持ち?
坂本 小学生のときに初めて死を意識して、本当に怖くて1週間くらい暗くなっちゃって。あんまりそういうことは考えない?
中納 うん。でも、死ぬことは怖くないかもしれない。殺されるとか苦しんで死ぬのはイヤだけど。生きることのほうがしんどい。
坂本 僕も早くその境地に行きたいんです。
中納 いやいや、私も何も悟っていないですよ(笑)。
- 2ndソロアルバム「窓景」/ 2015年1月14日発売 / TOY'S FACTORY
- 「窓景」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3996円 / TFCC-86497
- 通常盤 [CD] 3240円 / TFCC-86498
CD収録曲
- あのね、ほんとうは
- ケムニマイテ
- Talk To You
- beautiful island
- I'm a piano
- Ding Gong
- SCUBA
- 四角のトモダチ
- 写真の中のあなた
- 濡れない雨
- 大きな木の下
初回限定盤DVD収録内容
中納良恵ワンマンライブ「あのね、ほんとうは」at 神奈川・大さん橋ホール(2014年10月24日)
- 幸福の会話
- あくび
- ソレイユ
- 濡れない雨
- 大きな木の下
- no place to hide
- I'm a piano
- 水中の光
- 写真の中のあなた
- ケムニマイテ
- Ding Gong
- あのね、ほんとうは
- 夢
中納良恵 live tour 「窓景」
- 2015年2月7日(土)石川県 金沢芸術村 パフォーミングスクエア
- 2015年2月8日(日)宮城県 イズミティ21 小ホール
- 2015年2月19日(木)北海道 札幌サンプラザホール
- 2015年2月24日(火)福岡県 イムズホール
- 2015年2月26日(木)愛知県 DIAMOND HALL
- 2015年2月27日(金)大阪府 サンケイホールブリーゼ
- 2015年3月1日(日)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
- 2015年3月10日(火)東京都 東京グローブ座
- 2015年3月11日(水)東京都 東京グローブ座
中納良恵(ナカノヨシエ)
EGO-WRAPPIN'のボーカリストとして活躍するアーティスト。1996年に大阪で森雅樹(G)とともにEGO-WRAPPIN'を結成。2000年に発表された「色彩のブルース」や2002年発表の「くちばしにチェリー」がロングヒットを記録し、その名を全国に知らしめた。またEGO-WRAPPIN'の活動と並行してさまざまなアーティストの楽曲にゲスト参加し、日本のポピュラーミュージックシーンを代表するボーカリストとして高い評価を得る。2007年には、自身の作家性を押し出した1stソロアルバム「ソレイユ」を発表。EGO-WRAPPIN'とは異なる魅力を打ち出した。2015年1月に約7年ぶりのソロアルバム「窓景」を発表。
坂本慎太郎(サカモトシンタロウ)
1989年に東京でゆらゆら帝国を結成し、ボーカル&ギターを担当。ゆらゆら帝国として、21年の活動で10枚のスタジオアルバムや2枚組ベストアルバムなどを発表し、2010年に解散。翌2011年からは自身のレーベル・zelone recordsを設立。1stソロアルバム「幻とのつきあい方」をリリースした。salyu × salyuや冨田ラボの作品に作詞家として参加するなど活動の幅を広げつつ、2013年にシングル「まともがわからない」を、2014年5月には2ndソロアルバム「ナマで踊ろう」を発売した。