仲村宗悟|夢に向かう旅路の途中で作り上げた3曲

仲村宗悟が2月10日に3rdシングル「JUMP」をリリースする。

表題曲「JUMP」はテレビアニメ「スケートリーディング☆スターズ」のエンディング主題歌。片山義美による疾走感のあるさわやかなメロディに、仲村がアニメの世界観に寄り添った歌詞を乗せている。仲村がタイアップ楽曲で作詞を担当するのはこれが初。また、カップリングには彼の作詞作曲による「てこと」「オブラート」も収録。音楽ナタリーは仲村にインタビューを実施し、近況から「JUMP」収録曲の制作エピソード、タイアップ曲に対しての思いなどを聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 山崎玲士

お客さんたちの姿が見えた

──まずは近況から聞かせてください。仲村さんは昨年12月19、20日に開催された、男性声優が集う人気イベント「Original Entertainment Paradise -おれパラ- 2020 ~Be with~」の初日にゲスト出演されましたよね。

仲村宗悟

今回の「おれパラ」は無観客での開催だったので、始まるまでは「どんな感じになるのかな?」と思っていました。でもいざ始まってしまえば、出演者の方々がパフォーマンスというバトンを次々と渡していくことで全体にいいつながりが生まれていて。イベントとしてすごくまとまった形になっていたんですよね。結果、自分としてもめちゃくちゃいいパフォーマンスができた。トリの1つ前という重要なセクションを任せていただいたので、いつもの120%、130%くらいのボルテージで全力を出すことができました。本当に楽しかったです。

──小野大輔さん、鈴村健一さん、森久保祥太郎さん、寺島拓篤さんといったホストの方々のパフォーマンスからいい刺激を受け取れたんでしょうね。

そうですね。ホストの方々はもちろん、僕と同じくゲストとしての出演だった(畠中)祐のパフォーマンスからもめちゃめちゃ刺激をもらいました。「うわ、ノッてんなこいつ!」と思って(笑)。出演者全員の相乗効果が本当にすごかったです。だからこそ、両国国技館という大きい会場での無観客開催だったけれど、そこをめいっぱいのお客さんが埋めつくしているような感覚でパフォーマンスができたのだと思います。

──無観客であることが気にならなかったと。

はい。僕の中ではお客さんたちの姿が見えたし、煽りや声援なんかも聞こえてくるような気持ちでパフォーマンスができました。いい感触でしたよ。配信を観て初めて僕のことを知ってくれた方もけっこう多かったみたいなので、すごくありがたかったですね。

2021年はアルバムを出したい

──年末年始はどんなふうに過ごしていたんですか?

しっかり休みました。休みの間はメールも開かないぞと、完璧な寝正月でしたね(笑)。寝て起きて飯食って、寝て起きて飯食ってを繰り返すという。トータルで6日間くらいそんな感じでダラダラしてました。年明けの瞬間もテレビを観てる最中に「あ、2021年になったなー」みたいな感じで、一切ドラマチックなこともなく。で、新年一発目にはペヤングを食べて(笑)。あ、でもそうだ。今年に入ってから1曲作りましたよ。

仲村宗悟

──お、音楽のことは考えていたわけですね。

本当は何もするつもりはなかったのですが、パッとメロディが出てきたからボイスメモに録音して1コーラスだけ仕上げて。思わず作っちゃった感じですね(笑)。

──年始に2021年に対しての決意や抱負を思い描いたりはしましたか?

音楽に関して言えば、やっぱりアルバムを出したいなとはずっと思ってますね。10数曲で大きな流れを見せられる作品を作ることが今年の目標ではあります。ただ、そうなるとここから曲をどんどん生み出していかなきゃいけないわけで。それが大変。怖い(笑)。

──あと年が明けてすぐ、Twitterにマジックペンでの書き初め画像をアップされていましたよね。そこで書かれていた「魔法少女になりたい」という1文については触れたほうがいいですかね?(笑)

いやいやいや(笑)。本当に適当な人間なんですよ、僕。その書き初めもそうですけど、けっこう小ボケをかましがちで。それはもうファンの方々もうすうす気付き始めていると思いますけど。あまりに適当なボケばっかり言ってるから、最近はスタッフさんもまったく反応してくれなくなりました。みんなパソコンに目を落としたままで、僕の発した行き場のない言葉が部屋の中をただただ浮遊してるという(笑)。

──その仕打ちは仲村さん的にどうなんですか?

気持ちいいっすね(笑)。だって、それって裏を返せばめちゃくちゃ反応してるということでもあるんですよ。「仲村の小ボケには反応しないぞ」と思ってるってことは、その時点ですでに反応してるわけなので。そういう意味では僕の勝ちなんです(笑)。だから気持ちいいんですよねー。

仲村宗悟

あくまでもスタート地点

──さて、そんな仲村さんから2021年1発目のシングル「JUMP」が届きました。

はい。「JUMP」のリリースに関しては5カ月前くらいから告知をしていたので、ファンの皆さんはかなり待っていただいたんじゃないかなと思います。

──表題曲がエンディング主題歌になっているテレビアニメ「スケートリーディング☆スターズ」の放送が昨年7月から今年の1月に延期されましたからね。

それにともなってリリースも後ろ倒しになって。「JUMP」は1年前にレコーディングをしていたので、僕的にも長い間温めたような感覚があります。「ようやく世に出せる!」という気持ちがすごく強いですね。

──「JUMP」の歌詞は仲村さんが手がけられています。タイアップ曲の作詞は初めてですよね?

そうなんです。やっぱりノンタイアップ曲の作詞とは書き方や考え方のアプローチの仕方が違いましたね。それが面白くもあったんですけど。

──具体的にはどんな違いがありましたか?

自分の中から湧き出したものを言葉にするというよりは、「スケートリーディング☆スターズ」という作品を基準にして詞を考えていくことが大きな違いでしたね。それは自分にとっては初めての経験でした。とは言え、結局出てくるのは自分の言葉でしかないので、作品のことと自分の経験をいい具合に混ぜながら書き上げていきました。Dメロの「子供の頃に描いてた未来が」「今は全然違ってたとしても」のところは、自分が常々思ってたことを作品に紐付けていった感じです。

──ご自身のことを投影しやすい作品でもありましたか?

そうですね。作品の設定資料を見たときに、主人公たちが思っていることや、葛藤している部分が僕自身と照らし合わせてもそんなにかけ離れたものではなかったんです。だからすごく書きやすさもあって。普段よりも早めに書き上げることができましたね。

仲村宗悟

──さまざまな葛藤を抱きながらも夢を追い求めていくというアニメのテーマは普遍的なものでもありますしね。

はい。ただ、今回は最後まで書き切らないことを大切にしました。主人公たちも、僕自身もまだまだ夢に向かう旅路の途中にいるわけなので、あくまでもスタート地点に立てたことを歌う曲にしたかったんです。サビで「夢に指先が触れた気がした」と書いたのはそういう理由ですね。夢をつかんだわけではないけど、可能性が見えてきたところで曲が終わるという。人間って可能性が見えた瞬間に今までとは違う景色が見えて、そこから伸びていくものだと思うんですよ。それは音楽に限らず、人生においての僕のテーマだったりもするので、この曲ではそこを作品に照らし合わせて書こうと思いました。

──そういった視点にこそ仲村さんのカラーがにじみ出ているところですよね。タイアップ曲ではあるけど、紛うことなき仲村宗悟の曲になっているという。

もともと、想像や妄想をすることが好きなタイプなので、アニメから受け取ったテーマをどう広げていくかという作業は本当に面白くて。今回は自分に近い感情を持った作品でしたけど、逆に今度は自分とはまったくかけ離れた作品だったらどんな歌詞を書けるのかな、という興味もすごくあるんですよね。そうなったらきっといろんなことを調べて、新たなアプローチを探していくんだろうなって。そんなことを考えているだけで1杯呑めちゃいますね(笑)。