仲村宗悟インタビュー|「カッコいいものを提示し続けたい」進化過程で生み出した5thシングルを語る

仲村宗悟が1月26日に5thシングル「流転」をリリースした。

シングル表題曲はTOKYO MXほかで放送中のテレビアニメ「最遊記RELOAD -ZEROIN-」の主題歌。仲村が作詞作曲を手がけており、月をイメージした曲に仕上がっている。シングルにはこの曲に加えて、彼が作詞をした「Freedom」、作詞作曲を担当した「待ってる間」を収録。音楽ナタリーでは本作の発売に合わせて仲村にインタビューを行い、昨年行われた自身初となるツアーの手応えや5thシングルの制作エピソード、タイアップ曲を制作するうえでの心構えを聞いた。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 梁瀬玉実

音楽を続けてきてよかった

──まず、昨年10月から11月にかけて行われたライブツアー「SHUGO NAKAMURA 1st LIVE TOUR ~NATURAL~」のお話から聞かせてください。念願の初ツアーを終えて、率直にいかがですか?

「百聞は一見にしかず」と言うけど、自分が想像したり想定していたものを超えて、本番で得られるものはむちゃくちゃ多かったなと思います。1発目の大阪からファイナルの横浜まで1個1個のステージに学びがあったし、もちろん喜びもあったし。

──具体的にはどのような?

スタッフ確認用に定点で回していた録画映像を観て、自分で「ここはもっとこうしたほうがいいな」と細かいところを詰めていけたんです。やっている最中にはなかなか気付きにくい部分を、第三者目線で修正していけたのはよかったんじゃないかな。パフォーマンスもそうだし、MCひとつ取っても「もうちょっとこういう言い回しのほうがみんなに伝わるな」とか。

──単に自分のベストを出すだけじゃなく、それがお客さん目線でどうなのかも考えながら作り上げていけたと。

そうです。お客さんの中にはライブハウスに来たことがほとんどなかったり、ライブに来ること自体が初めてという人も多かったので、最初はちょっと重い空気も感じたんですよ。「その緊張感を和らげるのはこっちの仕事だよな」と思ったので、お客さんの目線で考えることも大事だなと。ただ、発信しているときに俯瞰で見ちゃうと絶対つまらないものになるから、ステージを降りて冷静なときにそういうことを考えるようにしていました。

──仲村さんはデビュー前にライブハウスで活動されていたそうですけど、ある種の原点に戻ったような感覚もあったりしました?

ありました! 全部初めてお世話になるハコだったんですけど、今回はライブハウスツアーということで、自分でライブハウスに連絡してブッキングしてもらって出演していたあの頃の感覚がよみがえってきたというか。ただ当時は本当にお客さんがいなくて、フロアに対バン相手の人たちしかいないようなときもあったんです。それを考えると、満員のお客さんがいてくれる今の状況は大きく違いますね。1発目、大阪のBIGCATのステージに立ったときは「続けてきてよかったな」と思いました。

仲村宗悟

仲村宗悟

89秒サイズは意識しないようにしている

──そんな充実のツアーを経てリリースされる今回のシングル表題曲「流転」は、アニメ「最遊記RELOAD -ZEROIN-」のエンディング曲となっています。これは、このタイアップありきで作った曲ですか?

そうです。

──アニメのタイアップ曲をご自身で作詞作曲されるのは「壊れた世界の秒針は」(アニメ「RE-MAIN」エンディング曲)に続いて2曲目になりますね。

そうですね。「JUMP」(アニメ「スケートリーディング☆スターズ」エンディング曲)でも詞は書いていたので、制作から関わっているのは3曲目とも言えますけど。

──タイアップ曲を作ることにも慣れてきましたか?

慣れたというか、テーマを与えてもらえるのはありがたいことだなと。1つの物事から膨らませていって、必要な要素を精査していく作り方は不得意じゃないなと感じています。普通に自分の曲を作るときはテーマを与えてもらえないから、逆に難しかったりもするので。

──ノンタイアップで作るときも、そんなふうに何かキーになるテーマを設定してから作り始めるんですか?

あると作りやすいですね。アルバム「NATURAL」のときは一気に8曲くらい書き下ろしたので、それはやっぱり難しかったです。

──あのときはシングルも同時リリースでしたしね。

そうそう。まあ、どちらにしても歌詞はすごく悩むんですけど。僕は常にいろんなパターンを用意するんですよ。Aメロに何パターン、サビに何パターンとか。そこからどれを選ぶか考えていくやり方をしていて、それは今回も同じです。

──アニメタイアップの場合、フルサイズ以外に89秒サイズも必ず作らないといけないわけですが、その作り方に関してはどうですか?

そこに関しては超自由にやらせてもらっていて、むしろなるべく意識しないようにしていますね。BPMの相談は先にあったりもしますけど、「89秒に収まるように」と考えて作ることはないです。そういうことに縛られず、自由な発想で作ってから(村山☆)潤さんとの話し合いで尺を合わせていく作業になりますね。

──「村山さんがどうにでもしてくれる」という信頼があるから、制約を感じることなく自由に作れている?

そうです。アレンジ段階でイントロや間奏を伸ばしたり縮めたりして調整するんですけど、それはあくまで作曲したあとの話なので。今回の「流転」に関しても、89秒サイズを作るにあたって僕的には何も苦労はなかったですね。

──そうなんですね。職業作家ならともかく、アーティストの場合はそういうことを考慮して曲を作るのは嫌だろうなと思うので、いったいどうやっているのか個人的に気になっていたんです。

確かに、あまりそういうことを考えて曲を作りたくはないですね。ただ、今まで作ってきた感覚の中で何かあるのかもしれないなあ。直感的に「これだと足りなさすぎるんじゃないか」みたいなことを、無意識に感じ取っている可能性はあるような気もしますね。

仲村宗悟

仲村宗悟

仲村宗悟

仲村宗悟

2歩目を踏み出す1枚に

──「流転」の曲作りは、どんなふうに進めていったんでしょうか。

曲から先に作ったんですけど、ソファでギターを弾きながら「8分の6拍子で作りたいな」と考えてたら、メロはまあまあスルッと出まして。そこから歌詞を書くにあたってけっこう悩んでしまって、先にタイトルから付けたんですよ。悩んだときは熟語をたくさん調べたりしてイメージを広げていくんですけど、今回も「カッコいい二字熟語」みたいな感じで調べてたら(笑)、「流転」が出てきて。意味合いとしてもすごくテーマに合致していたので、運命的なものを感じましたね。それで「これしかないな」と思ってタイトルに決めて。

──そもそも8分の6拍子で作ろうと思ったのは、どういう理由で?

1stアルバムを出して、1stツアーも終わって、「次のシングルが2歩目を踏み出す1枚になるな」と感じたんです。そこで何かひとつ違うステージを見せたかった。4拍子ではないリズム感で、曲調も内側からグッと来る感じを表現したいなという思いがなんとなく頭にあって。

──だから調性的にもマイナーキーで?

そうです。デビューシングル「Here comes The SUN」が太陽のイメージだったんで、それと対比するものとして月のイメージにしたかったんですよね。シングル表題曲でマイナーキーは今回が初めてじゃないかな。配信シングルでは「Oh No!!」がありましたけど。

──アレンジ的にも攻めてますよね。まずAメロのキックの入り方が……。

面白いですよね! 4拍子のように聴こえるリズムでずっとキックが入っていて、曲の拍子とズレていくんですよ。潤さんとは最初から「カッコよくてテクニカルなものをやりたい」と話していて、デモ段階ですでにこれに近いものを上げてきてくれて。「やりすぎかなあ?」と言われたんですけど、「全っ然、やりすぎじゃない!」と返しました(笑)。

──(笑)。それも含め、この曲を聴いてまず感じたのが「ドラムヤバいな」だったんですよ。

ドラム、ヤバいですよね(笑)。楽器をやっている人が聴いてもカッコいいと感じるんじゃないかな。めっちゃテクニカルだし。

仲村宗悟

仲村宗悟

──タイアップ曲とは思えないくらいの攻めたアレンジですけど、「最遊記」サイドからは何も言われなかったんですか?

まったくなかったですね。あらかじめミドルテンポでというのと、歌詞についての注意は少し言われていたので、それに沿って作っていきました。

──メロディライン的には、サビの「笑ってよ」のところで半音ずつ上がっていくフレーズがかなり効いていますね。この3音があるのとないのとでは大違いだろうなというくらい。

いつも何かしらフックになる要素というのは意識しながら作っていますね。歌い方としても、ここは切らずに少しフォールさせながらレガート気味に歌っていて。これは特にタイアップ曲だし、「ここが見せ場」みたいになる部分は意識的にちりばめるようにしています。