ナタリー PowerPush - 中島愛

旅立ちの前に

デビュー曲「天使になりたい」への恩返しを

中島愛

──次の「Carry Out!」もファンキーなリズムとサウンドで、これはまさに5年間やっていく中でできあがった“中島愛の音楽”の発展系だと思うんですよ。

うれしいです。

──そしてこの曲はアニメ「輪廻のラグランジェ」関連楽曲(「パチスロ 輪廻のラグランジェ」挿入歌)でもあって。「輪廻のラグランジェ」ではラスマス・フェイバーとのコラボで初めてハウスサウンドに挑戦したり、音楽の可能性をさらに広げた楽曲が多く生まれましたね。

まさにその通りです。今回のアルバムでは「Carry Out!」と4曲目の「あの日の海」が、初収録される新曲でもあり、かつ「ラグりん」のための音楽なんですよ。この作品では本当にいろんな形の素敵な曲に出会えました。

──続く5曲目の「Wish」もアルバム初収録の新曲ですが、これがすごくネクストを感じさせる曲というか、また新たな世界が広がりそうな可能性を感じただけに、本当に終わっちゃうのかあと。冒頭の2曲のような16ビートが中島愛の真骨頂として確立された中、こういう疾走感のある8ビートのロックは少し新鮮な感じがあって。

中島愛名義でのデビュー曲になった「天使になりたい」(2009年1月発売の1stシングル)はロックテイストだったんですよ。そこが中島愛としてのスタート地点だったということを忘れたくないという思いがありまして。ライブでもすごく盛り上がりますし、個人的にも思い入れが強いので、もし今の流れの中でフィットするときがあればロックなサウンドに挑戦してみたいなと思っていたんです。それはスタート地点に戻りたいということでもなくて、ロックテイストの楽曲でデビューさせていただいたという、その原点を忘れたくないし、大切にしたい気持ちがあって……。当時は「天使になりたい」のシングル1枚しかなかったから、この曲をライブでたくさん歌った思い出がすごくあって。ちゃんと恩返しじゃないですけど、原点に立ち返りつつアップデートしたものが作りたかったんです。

──なるほど。同じロックの枠の中でも確実にアップデートされたものになっていると思います。

新曲はコンペで好きに選んでいいと言われたので、この曲なら自分の思いが叶えられると思ったんです。コンペではいつも作った方の名前が伏せられていて、あとで「Megu2 Magic」などを作ってくださった木村有希さんの曲だと聞いて、ワオ!みたいな。私のことをわかってくださっている方の楽曲だからこそ、原点回帰もありつつ新しいサウンドになったのかなって。

「こと裏」と「ありがとう」は“愛の歌”として表裏一体

──今回のアルバムにはシングル曲やそのカップリングも選んで収められていますが、初回限定盤には別でカップリング曲を中心に収めた「B面コレクション+1」が付属しますよね。カップリング曲の中でもアルバム本編に収めた曲というのは、どういう基準でセレクトしたんですか?

アルバム全体の流れを考えながら、プロデューサーさんとかなり話し合って決めました。でもほとんど意見は一緒でしたね。

中島愛

──中島さんはシングルB面曲にも核となる要素が多くて、アルバム後半戦の「Mamegu A Go! Go!」「Megu2 Magic」の2連発はまさにそれですよね。自分そのものを歌ったナンバー2連発(笑)。ライブでも盛り上がる曲だし、アルバムという形で1つにまとまってよかったなと。

はい。曲順は私が決めたんですけど、自己紹介ソングが連続していてもいいのかな?と思いつつ提出したら、OKをいただきました!

──「ありがとう」は現段階で最後のシングルでもあり、ある意味アルバムの表題曲でもありますよね。

そうです。5周年のプロジェクト全体のテーマでもあって、それがアニメ「たまゆら~もあぐれっしぶ~」という作品にもすごくマッチしていて、やっぱりこれは偶然じゃないよねって。シングルを出すよりも先にアルバムタイトルの「Thank You」が決まっていたんです。アニメ作品が求めていることと、私が今伝えたいこと、そして次に出したいアルバムへの思いが全部合致していて。自分の中で表題曲として捉えていながら、あえてこの位置に置いたのは、「そんなこと裏のまた裏話でしょ?」と一緒に聴いてほしいという気持ちからなんです。

──それはどうしてですか?

去年はアニメソングのフェスやイベントにたくさん出させていただいたんですけど、イベントのセットリストを決める中で、去年出したシングルは「こと裏」と「ありがとう」の2枚で、この2曲を歌うことが多かったんです。

──アッパーでトリッキーな「こと裏」と美しいバラードの「ありがとう」という、ある意味対極にある2曲ですよね。

自分でもその2曲を続けて歌うってどういう人なんだろう!?と思うんですけど、どちらも作品に寄り添って作られたものなので、素直に表現すれば整合性は付くと思うんです。短いセットリストの中で、アッパーに登場してからすぐに空気をガラッと変えてしっとり歌うことへの緊張もあったんですよ。でもステージに出て歌ってみたら「あ、これが私なんだな」って。そういうふうに受け取ってもらえているという自信が付いたんです。だからこそこの2曲の流れへの思い入れが深くて。まったく雰囲気の違う2曲だけど、私の中では“愛の歌”として表裏一体なんですね。そのことを象徴する2曲だなと思ったので、この位置に2曲並べて。実は、アルバムはここで1つの終着点を迎えて、次の曲からまた新たな世界観に飛び立つんです。

ラスマスとはいつも音楽や歌で会話してきた

中島愛

──終着点を迎えたあとに、ラスマスとのコラボナンバー「Flower in Green」、そしてコトリンゴさんの書き下ろしによる「とうめいにんげん」と続きます。ラスマスは以前の対談(参照:ラスマス・フェイバー×中島愛対談)で話を聞いたとき、本当に中島さんのことを理解してるんだなあと思いましたけど、彼にも事前に活動休止に対する思いは伝えてないんですか?

そうですね……。直接伝えることはできませんでした。ラスマスさんはライブの打ち上げでもすごく遅い時間まで残ってくださるし、ライブやレコーディングを通して交流する時間はたくさんあるのですが……なんと言ったらいいんだろう、言葉じゃない何かをいつも投げかけてくれるんですよね。ピアノを1音弾いただけでも、どう歌ってほしいという訴えを感じるというか。カッコつけた言い方になるけど、いつも音楽や歌で会話してきたような感じがするんです。

──でもきっと彼は誰よりも残念に感じてるんじゃないかなあと思うんですよね。

発表があったとき、ラスマスさんはTwitterにすごく美しい、詩的な言葉を書いてくださって。

──中島さんの歌を「ハチドリの美しい歌声」と表現されていて、「彼女の歌声が、僕のハーモニーを携えて、空まで導いてくれたんだ」とコメントされています(参照:Rasmus Faber JP (rasmusfaber_jp) on Twitter)。

それが本当に、うれしかったです。

3rdアルバム「Thank You」 / 2014年2月26日発売 / FlyingDog
初回限定盤 [CD2枚組] 4095円 / VTZL-77
通常盤 [CD] 2940円 / VTCL-60362
収録曲
  1. 愛の重力
    [作詞 : 尾上 文 / 作曲・編曲 : 西脇辰弥]
  2. Carry Out!
    [作詞 : L2 / 作曲・編曲 : 長岡成貢]
  3. マーブル
    [作詞 : 岩里祐穂 / 作曲・編曲 : Rasmus Faber]
  4. あの日の海
    [作詞・作曲 : 矢吹香那 / 編曲 : 島田昌典]
  5. Wish
    [作詞 : 木村有希 / 作曲・編曲 : 木村有希・黒岩大樹]
  6. 風色のフィルム
    [作詞・作曲・編曲 : 矢野博康]
  7. Mamegu A Go! Go!
    [作詞・作曲・編曲 : 北川勝利 / ホーン編曲 : 西脇辰弥]
  8. Megu2 Magic
    [作詞・作曲・編曲 : 木村有希 / ストリングス編曲 : 長谷泰宏]
  9. そんなこと裏のまた裏話でしょ?
    [作詞 : 西直紀 / 作曲 : hirao(SpiralS) / 編曲 : mukai(SpiralS)]
  10. ありがとう
    [作詞・作曲 : 尾崎亜美 / 編曲 : 佐藤準]
  11. Flower in Green
    [作詞・作曲・編曲 : Rasmus Faber]
  12. とうめいにんげん
    [作詞・作曲・編曲 : コトリンゴ]
初回限定盤 特典CD「B面コレクション+1」収録曲
  1. パイン
    [作詞・作曲 : 春行 / 編曲 : 川口圭太]
  2. 天使の絵の具
    [作詞・作曲 : 飯島真理 / 編曲 : 桜井康史]
  3. 陽のあたるへや
    [作詞・作曲・編曲 : 宮川弾]
  4. ナイショのはなし
    [作詞 : 中島 愛・西 直紀 / 作曲・編曲 : 窪田ミナ]
  5. 星空
    [作詞 : 伊藤利恵子 / 作曲・編曲 : 西脇辰弥]
  6. パンプキンケーキ
    [作詞・作曲 : 矢吹香那 / 編曲 : 鈴木智文]
  7. 忘れないよ。
    [作詞・作曲 : 矢吹香那 / 編曲 : 清水信之]
  8. 素直
    [作詞・作曲 : Castella / 編曲 : 窪田ミナ]
  9. マーブル~Rasmus Faber Remix~ Produced, mixed and mastered by Rasmus Faber
    [作詞 : 岩里祐穂 / 作曲・編曲 : Rasmus Faber]
ライブBlu-ray「Megumi Nakajima 5th Anniversary Year's Final Live『メグミー・ナイト・フィーバー』」 [Blu-ray Disc 2枚組] 2014年2月26日発売 / 8190円 / FlyingDog / VTXL-17
「Megumi Nakajima 5th Anniversary Year's Final Live『メグミー・ナイト・フィーバー』」
「Megumi Nakajima 5th Anniversary Year's Final Live『メグミー・ナイト・フィーバー』」
中島愛(なかじまめぐみ)
中島愛

1989年6月5日、茨城県生まれ。2007年に行われたアニメ「マクロスF(フロンティア)」の歌姫オーディション「Victor Vocal&Voice Audition」でヒロインのランカ・リー役に抜擢され、2008年6月に「ランカ・リー=中島 愛」名義によるシングル「星間飛行」で歌手デビューを果たす。2009年1月には初の個人名義によるシングル「天使になりたい」を発表。声優として「マクロスF」「けんぷファー」「バスカッシュ!」「こばと。」「セイクリッドセブン」「輪廻のラグランジェ」などのアニメ作品に参加しながら、ソロアーティストとして国内のみならず海外でも積極的にライブ活動を行っており、2013年11月には東京・中野サンプラザにてデビュー5周年のアニバーサリーイヤーを締めくくるワンマンライブ「Megumi Nakajima 5th Anniversary Year's Final Live『メグミー・ナイト・フィーバー』」を成功に収めた。同年12月にオフィシャルサイトなどを通じ、2014年3月末日をもって本人名義での音楽活動を無期限休止することを発表。休止前最後の作品となる3rdアルバム「Thank You」を2月にリリースし、3月に東京・日本青年館にてラストライブ「Megumi Nakajima FINAL LIVE 『Thank You』」を行う。