ナタリー PowerPush - 流田Project

自信に満ちた3rdアルバムの魅力を解明

手書きバンドスコアのために自分で録音した音を自分で耳コピ

──もうひとつ、今作を特徴づけるものに封入特典である「oath sign」の手書きバンドスコアがあると思うんですけど、普段アレンジが固まったあと、スコアって書いてるんですか?

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流田 一切書いてません!

栗川 なので、自分で録音した音を自分で耳コピするという作業を延々としてました(笑)。

穴澤 タブ譜なんて書いたことなかったんで、ホント大変でした。

流田 初心者の手書きだから異常に汚いし(笑)。ただ、スコアをつけようって言い出したのは僕たちなんで。最近Twitterに「明日、流田バージョンでアニソンカバーのライブをします」ってリプライが結構たくさんくるようになったり、ライブハウスの方に「本物の流田Projectを観るのは初めてです。偽物はいっぱい観ますけど」って言ってもらえたりと、コピーバンドが増えてるっていう感触があったんで「じゃあ、バンドスコアをつけたいな」っていう流れになったんです。

桃山 なので、これで流田バージョンの「oath sign」をコピーしてくれるバンドがさらに増えたらうれしいですね。

流田 そういうコピーバンドをいっぱい集めてイベントを開いたり、ツアーやライブのオープニングアクトをやってもらったりしても面白そうですしね。

──そのコピーバンドの話といい、ここ最近流田Projectの知名度や活動の幅がグッと広がってますよね。6月にはジンやScars Boroughと共演したり、7月にはキマグレンがオーガナイズする夏季限定ライブハウス「音霊 OTODAMA SEA STUDIO」でプレイしたりと、アニソン系ではない対バン企画やイベントにも打って出ています。

流田 単純な話ですけど、いろんな人に聴いてもらうことでファン層に広がりが生まれたり、自分たちに得るものがあったりしたらいいなっていうのが、外に向かっていくことにした出発点ですね。ロックバンドであり、アニソン系のアーティストでもある僕たちの場合、ロック系、アニソン系のどっちの対バンライブやイベントにも出られますから。せっかくだから、それぞれどう違うのかを見てみたいし、楽しんでみたいんですよ。

栗川 これまでずっとワンマンライブばっかりやってたから、特に最近は余計にな。

流田 そうやね。実はロック系に限らず、アニソン系やネット系の大きなイベントにもあんまり出たことがなかったんですよ。

受け入れてもらえるか不安だった「ニコニコ超会議」

──アニソン系やネット系の大きなイベントといえば、4月末には「ニコニコ超会議」に出演しましたが。

流田 「ニコニコ超会議」に参加させてもらったときは期待と不安が大きくて。

──ニコ動発のスターなわけですし、当然好意的に迎え入れられるものだと思いますけど。

流田 普通に考えたらそうなんですけど、僕らのワンマンライブのお客さんの層って、普通のロックファン……拳振り上げる系のお客さんが多いんで、「どのくらい受け入れてもらえるかな?」っていう疑問はありました。

──実際の反応はいかがでした?

流田 やってる曲は超会議に来るような人だったら誰でも知ってる名曲だらけ、要はカバーだけってことなんですけど(笑)、そういうセットリストだし、アニメ「ゆるゆり」の声優さんのユニット・七森中☆ごらく部さんとコラボさせてもらったこともあって、ホントに温かく迎え入れてもらえたし、すごく盛り上がってもらえました。

栗川 サイリウムも焚いてもらえましたし。

──前回、おっしゃってましたもんね。アニソンカバーバンドなのにサイリウムを振ってくれるお客さんがいないって。

栗川 今回ようやく夢が叶いました(笑)。

見た目さえ乗り越えてくれれば絶対に損はさせない

──では、ロックバンドとの共演はいかがでしたか?

栗川 ロックバンドとの対バンは対バンで、「えっ、アニソンだったの?」くらいの感じでお客さんに迎え入れてもらえたんですよ。

流田 そう! ステージに出てきた瞬間は仮面を観て「なんだこれは!?」ってビックリされるんですけど、演奏を始めればほかのバンドのときと同じようにノってもらえました。ほら、やっぱり曲がいいんで(笑)。

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穴澤 だから、アニソン系とロック系のライブのノリの違いに戸惑うことはなかった気がしますね。どんなステージでも自分たちが楽しく演奏してたら、みんなにも楽しんでもらえるんだな、って。

桃山 うん。どっちのジャンルに行っても僕らのやってることは通用するな、っていう実感はありました。

流田 ただ、ライブが終わったあとに、初めて観てくれたほかのバンドの関係者の人たちに話を聞くと、みんな必ず言うんですよ。「見た目と違ってカッコよかった」って(笑)。どんだけ見た目で損してるんや、っていう。

栗川 確かにな。そういうのもあるから、トークだけのイベントとかニコ生の番組とかに呼んでいただいたときもちょっと不安だったりはしますしね。「流田を初めて観た人は、僕らのことをどういう連中だと思ってるんだろう」「見た目がこれだと、何をしゃべっても全然伝わらないんじゃないか」って。だったら、アコースティックででも1曲歌わせてもらったほうがよっぽど説得力がある気がしちゃうんですよね。

──さっきの関係者のようにプレイを聴けば、評価が一変するはずですからね。

流田 正直な話、その自信はあります。実際、ワンマンライブに何度も来てくれているお客さんって、実は仮面の面白さや、それをかぶっている僕らの人間性には興味はあんまりないみたいですから。求められているのは、とにかく音楽。1曲でも多く僕らが演奏しているのを観たいって感じがすごく伝わってきますし。それだけに、今回のアルバムについても「こんな見た目のバンドなんか聴かないよ」っていう人にも、1回でいいからCD屋の試聴盤やインターネットの試聴用音源を聴いてみてほしいんですよ。見た目のことさえ乗り越えていただければ、絶対に損はさせないはずですから。ホントにダマされたと思って聴いてみてほしい!

栗川 意外に良いCDですからね(笑)。

流田 あっ、それいいな。キャッチフレーズは「意外にいいぞ、流田Project」(笑)。

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ニューアルバム「流田PPP」/ 2012年8月8日発売 / 2625円 / ジェネオン・ユニバーサル / GNCA-1334

CD収録曲
  1. Light My Fire[「灼眼のシャナIII -Final-」オープニングテーマ]
  2. oath sign[「Fate/Zero」オープニングテーマ]
  3. 空想メソロギヰ[「未来日記」オープニングテーマ]
  4. もってけ!セーラーふく[「らき☆すた」オープニングテーマ]
  5. 純潔パラドックス[「BLOOD-C」エンディングテーマ]
  6. Borderland[「ヨルムンガンド」オープニングテーマ]
  7. Hacking to the Gate[「STEINS;GATE」オープニングテーマ]
  8. departure[オリジナル新曲]
  9. ハレ晴レユカイ[「涼宮ハルヒの憂鬱」エンディングテーマ]
  10. cry out[彩音提供曲セルフカバー]
  11. Butter-Fly[「デジモンアドベンチャー」オープニングテーマ]
  12. secret base ~君がくれたもの~[「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」エンディングテーマ]
流田Project(ながれだぷろじぇくと)

メンバー4人がお面を付けた、アニソンカバー覆面ロックバンド。卓越したアレンジ力でアニソンのヒットソングをバンドアレンジでカバーし、ニコニコ動画などに公開している。2011年8月現在の累計再生回数は累計1200万回以上を記録。2010年12月にfripSideの八木沼悟志がサウンドプロデュースを手掛ける1stアルバム「流田P」でメジャーデビューを果たす。翌2011年9月には2ndアルバム「流田PP」を発売。チープでコミカルな覆面姿からは想像のつかないパワフルなギターロックサウンドで、ライブツアーやイベント出演など精力的な活動を展開している。2012年8月に3rdアルバム「流田PPP」をリリース。