ナタリー PowerPush - 流田Project

自信に満ちた3rdアルバムの魅力を解明

8月8日、覆面アニソンカバーバンド・流田Projectが3rdアルバム「流田PPP」をリリースする。前作「流田PP」発表以降、アニソンシンガー・彩音への楽曲提供や、数々の対バンライブ、イベント、フェスへの出演など「カバーバンド」の域を超えた幅広い活動を展開してきた彼らが今作で魅せるのは、その多彩なアレンジメント能力。アニソンの名曲やヒット曲の数々を、従来の流田ならではのラウドロックはもちろん、ミクスチャーロック、ヘヴィメタルにと、自在に料理してみせている。

ナタリー2度目の登場となる今回のインタビューでは、メンバー自身も「絶対いいアルバム」と太鼓判を押す、その良盤の制作秘話を訊いた。

取材・文 / 成松哲 インタビュー撮影 / 高田梓

新作は1stアルバムと2ndアルバムのハイブリッド

──今回の「流田PPP」ですが、掛け値なしの力作ですよね。

流田豊(Vo, G) ありがとうございます!

──前回のインタビューで、デビュー作「流田P」では音の重ね方やステレオ感にこだわるなど、CDだからできることを追求して、前作「流田PP」では反対にほとんどの楽曲を一発録りすることでライブ演奏ならではのダイナミズムを盤に収めたと言っていました。そして今作は、その2作品のハイブリッド。バンドアンサンブルの楽しさと、プレイや録音の緻密さを両立させている印象があります。

インタビュー写真

栗川雅裕(Dr) ホントにハイブリッドというか、いいとこ取りなんですよ。ベーシック、要はドラムとベースとリズムギターは一発で録って、リードギターとボーカルはあとから重ねていくっていう作り方をしているので。

流田 1stアルバムと2ndアルバムのレコーディングを経験して、それぞれのいいところと悪いところがわかったからな。

栗川 1stみたいにクリアに録るとバンドの勢いが失われるし、2ndみたいにライブ重視で録ると細かいところが甘くなるし。

流田 キメなあかんキメがルーズになるしな。だったら、反対に両方のいいところばっかり取ってみよう、と。そしたらいいアルバムができるに決まってますから(笑)。実際、3rdではその両方のバランスをすごくうまく取れたな、とは思ってます。バンドらしい勢いがありつつ、ガッチリ演奏もできてる。いや、もうねえこれ、絶対いいアルバムなんですよ!

一同 あはははは(笑)。

流田 僕、眠れなくなるほど聴いてますから。夜な夜な「寝る前に1回聴いとこ」と思ってCDをかけるんですけど、聴き終えた後もいっつも「もう1回だけあの曲聴いとこかな」の連続になっちゃうので。

桃山竜二(B) それ、わかるわ。

流田 なっ、わかるよな。

栗川 まあ、僕はそこまでではないですけどね(笑)。ただ、確かにこのアルバムがすごく気持ちいいのはわかります。今、1stと2ndを聴くとちょっと物足りない部分があるんですけど、3rdではそれが補われてる感じがしますから。

流田 そうやな。1stだったらこのフレーズが好き、2ndだったらこの声の出し方がいい、っていう感じで、前のアルバムにも好きな部分がいくつもあるんですけど、3rdではそれをよりたくさん見つけられるというか。立て続けに自分の好きなフレーズや音が出てくるんで、そりゃ眠れなくもなりますよ(笑)。

「Butter-Fly」で初めて男性ボーカルものをカバーした

──選曲も前作、前々作とはちょっと違いますよね。これまでは最新アニメのテーマソングを中心にカバーしていたのに、今作には「もってけ!セーラーふく」や「ハレ晴れユカイ」といった定番のアニソンも収録されている。

流田 「Butter-Fly」みたいな1990年代の曲も入ってますしね。

──ええ。ほかにも「secret base ~君がくれたもの~」や、これは最新ヒットですけど水樹奈々さんの楽曲なんかも入っている。アニメに詳しくない人でも「あっ、なんか聴いたことあるな」と思える、より広い層に訴求できる内容になってますよね。

インタビュー写真

流田 そう思っていただけるのは非常にありがたいんですけど、例によって何も考えておりません!(笑) いつもどおり「自分ら、ホント怒られるで」ってくらい、その場のノリだけで選んじゃってます。ジェネオン所属なのに、ジェネオン制作のアニメの曲は「Borderland」だけだし。

穴澤淳(G) あと、僕らと関係がありそうなのは「Hacking to the Gate」くらいか(同曲をテーマソングにもつアニメ「STEINS;GATE」の原作ゲームは流田Projectの所属プロダクション・MAGES.制作。当時の社名は5pb.)。

栗川 その2曲もレーベルや事務所が一緒だから選んだわけじゃないですし。みんなで集まって好きなアニソンや、ライブでやるとハマりそうな曲をわーっと書き出して、その紙を会社の偉い人に「はいっ」って渡しただけという。

流田 「はいっ、この曲とこの曲のカバーの許諾もらってきて」と(笑)。ただ「Butter-Fly」はファンの方のリクエストなんですよ。一度Twitterとブログで「どんなアニソンの流田バージョンを聴いてみたいですか?」って訊いたら、この曲を聴きたいっていう声が非常に多かったんで、初めて男性ボーカルものをカバーしてみました。

──「Butter-Fly」って、実は今でも高校軽音部の定番カバー曲だったりするから「流田がこの曲をどう解釈するのか聴いてみたい」という若いバンドマンが多かったんでしょうね。

流田 みたいですね。でもその「Butter-Fly」にしても良い曲だし、元々好きだったので、結局選曲についてはほぼほぼ僕らの希望どおりになってます。

栗川 「もってけ!セーラーふく」にしても前から希望してましたから。ライブで桃山君があのスラップのベースラインを弾いたりしていたので。

桃山 「アニソンのベース」って言われてまず思い浮かべるのって、あの曲のあのスラップだと思うんで、メンバー紹介のネタとして使ってるうちに「じゃあ、カバーしよう!」って話になったんです。

流田 ただ、これまでの僕らのカバー曲とはちょっとノリが違うんで、最初は「ボーナストラックとして1コーラスくらい軽くやっとこか」って話だったんですよ。

桃山 ところが、いざアレンジしてみたら、がっつりカッコよくなっちゃって。

穴澤 ちゃんと本編の1曲として入れようって話になりました。

ニューアルバム「流田PPP」/ 2012年8月8日発売 / 2625円 / ジェネオン・ユニバーサル / GNCA-1334

CD収録曲
  1. Light My Fire[「灼眼のシャナIII -Final-」オープニングテーマ]
  2. oath sign[「Fate/Zero」オープニングテーマ]
  3. 空想メソロギヰ[「未来日記」オープニングテーマ]
  4. もってけ!セーラーふく[「らき☆すた」オープニングテーマ]
  5. 純潔パラドックス[「BLOOD-C」エンディングテーマ]
  6. Borderland[「ヨルムンガンド」オープニングテーマ]
  7. Hacking to the Gate[「STEINS;GATE」オープニングテーマ]
  8. departure[オリジナル新曲]
  9. ハレ晴レユカイ[「涼宮ハルヒの憂鬱」エンディングテーマ]
  10. cry out[彩音提供曲セルフカバー]
  11. Butter-Fly[「デジモンアドベンチャー」オープニングテーマ]
  12. secret base ~君がくれたもの~[「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」エンディングテーマ]
流田Project(ながれだぷろじぇくと)

メンバー4人がお面を付けた、アニソンカバー覆面ロックバンド。卓越したアレンジ力でアニソンのヒットソングをバンドアレンジでカバーし、ニコニコ動画などに公開している。2011年8月現在の累計再生回数は累計1200万回以上を記録。2010年12月にfripSideの八木沼悟志がサウンドプロデュースを手掛ける1stアルバム「流田P」でメジャーデビューを果たす。翌2011年9月には2ndアルバム「流田PP」を発売。チープでコミカルな覆面姿からは想像のつかないパワフルなギターロックサウンドで、ライブツアーやイベント出演など精力的な活動を展開している。2012年8月に3rdアルバム「流田PPP」をリリース。