日本語で歌うことになったきっかけ

Jean-Ken　この機会に聞いてみたいんだけど、Yoshは澤野弘之さんのような違うジャンルのクリエイターの方とも仕事してるじゃない？ そこでどういう刺激を受けてるのかなって。マンウィズとは違った形のコラボだからさ。

Yosh　自分がセンターじゃなく、完全に向こうの主体に入っていく感覚が新しいんですよね。単純に“違い”が刺激なんですよ。繰り返して繰り返して作業をマスターする彼のすごさに、そういう現場で毎回驚いて。「もっと小まめにやらなきゃな」と思わせてくれたり。

Jean-Ken　そうだよね。

Yosh　バンドにとって大きかったのは、コラボが日本語で歌うきっかけになったことですね。

Jean-Ken　澤野さんのプロジェクトのやつね。（※SawanoHiroyuki[nZk]の「scaPEGoat」にYoshがボーカルで参加）

Yosh　そうです。初めてご一緒するとき、「日本語でやりませんか？」と言っていただいて。「そんな機会もあまりないし、やってみようかな」ってチャレンジしたんですけど、「あれ？ できるじゃん」という手応えがあって。そこで自分の中で新しい何かが生まれたというのはありますね。今思えば「大丈夫だよ」と背中を押してくれたのかも。

Jean-Ken　ロック畑のミュージシャンとのコラボだと、そこまでは突っ込んでこないよね。いわゆるクリエイターさんというか、それくらいジャンルが違う人だからこそ「やってみない？」みたいなことを素直に言ってくれたのかなと思うよ。

Yosh　澤野さんとのライブも観に来てくださいよ。Jean-Kenさんが会場にいたら、たぶんめっちゃ目立つけど（笑）。

Jean-Ken　「あそこに来てるわー」ってなるよ（笑）。まあ、まずは今回の対バンでしょ。ツアーには前から声をかけていたけど、なかなかタイミングが合わなかったもんね。でも、結果的に「ヴィンランド・サガ」のオープニングテーマをバトンタッチする時期に対バンできることになったのは美しいし、最高だなと思います。

miletとのコラボに嫉妬

──では、マンウィズのニューシングル「Dark Crow」の話もしましょうか。

Yosh　たぶんmiletとのコラボ曲「Reiwa」の話も止まらなくなるんで、そこから行きましょうよ。

Jean-Ken　そうだね（笑）。

Yosh　 miletも「ヴィンランド・サガ」の第2クールのエンディングテーマを担当してるし。彼女は宇多田ヒカルさんに匹敵するシンガーだと僕は信じてるんです。

Jean-Ken　3、4カ月前、ひさびさにYoshと飲みに行ったんですけど、「最近お気に入りのアーティストとかいるの？」と聞いたら、僕たち2人とも口をそろえて「miletちゃん！」って。

Yosh　「きたー！ さすがJean-Kenさん！」と思いましたよ。食い気味に「だよね！」みたいな。彼女の音楽に出会った時期もほぼ同じだったんですよね（笑）。

Jean-Ken　そう、「inside you」を聴いたときだね。声が圧倒的に繊維質というか、ファブリックというか。単純に声質の話でもないんですよね。あと、例えばビョークやシーア・ケイト・イゾベル・ファーラーのような人も思い浮かぶけど、その模倣じゃない。うまく言えないんですが、「この子いけるな！」って。

Yosh　同じフェスにも出たのに、miletと演奏時間が丸被りで観られなくて。悔しかったなー！

──じゃあ、今回のコラボも相当うらやましいんでしょうね。

Yosh　そうですよー！ あのコラボ写真にも嫉妬しましたしねえ（参照：マンウィズとmiletが「ヴィンランド・サガ」新テーマ曲担当、2組のコラボ曲も制作）。

Jean-Ken　（笑）。いやー、本当にうれしかったですよ。実際にあの声をどうやって発してるかをレコーディングの現場で見られたし。

Yosh　くっ……！ いいなあ。ネクストタイムはぜひお願いしたいです！

「MUKANJYO」を聴かないように

──そして、「ヴィンランド・サガ」のオープニングテーマが第1クールのサバプロ「MUKANJYO」から、第2クールでマンウィズ「Dark Crow」にバトンタッチとなりました。

Jean-Ken　「MUKANJYO」はカッコいい曲だよね。曲の入りのサンプルって誰が作ったの？

Yosh　あれは打ち込みじゃなくてギターなんですよ。

Jean-Ken　そうなんだ！

Yosh　最近はそういうギリギリのラインで遊んでるんです。シンセサイザーの打ち込みはずっとやってきたけど、「その音、作れるんじゃない？」と思ったらギターで弾いてみたり。逆に、あそこはベースが打ち込みなんですよ。

Jean-Ken　はー、なるほど。すごく叙情的でエモ真っ盛りな楽曲だよね。「ヴィンランド・サガ」にも本当に合ってるし、第1クールのオープニングでこれを出されたら……焦りますよね（笑）。

Yosh　そこを聞きたかったんですよ。っていうのも、こうやって第1、2クールがある作品は主題歌が変わることが多いじゃないですか。第2クールのオープニングテーマを考えるとき、サバプロの曲がちょっとでも頭にあったりしたんですか？

Jean-Ken　「Dark Crow」の曲そのものを手がけたのはKamikaze Boy（B, Cho）なんだけど、俺に関して言えば、作る前は「MUKANJYO」を聴かないようにしたね。絶対に邪な気持ちが出ちゃうもん。「そこを超えなきゃ」だとか「サバプロと違うタイプの曲にしなきゃ」とかね。

Yosh　うれしいお言葉ですね！ 「Dark Crow」は「やっぱりMAN WITH A MISSIONだな」としか言えない曲になってて。しかも、次のチャプターにしっかり変わる感じがあるんですよ。いい意味で「MUKANJYO」を忘れられるような曲で。

Jean-Ken　ありがとう。だから、「MUKANJYO」は最近になって聴いたんだよ（笑）。

自分たちの原点のようなサウンド

──「Dark Crow」を作るうえでのテーマというのは？

Jean-Ken　僕は「ヴィンランド・サガ」の原作も大好きで読んでいたんですけど、どちらかと言うとアニメのストーリーに準じたものにしました。自分たちの経験を含めるよりはアニメの世界観がきっちり出るように。物語の中に登場するカラスがそれを暗示してると感じたので、「Dark Crow」というタイトルにして。主人公の壮大な復讐譚であり、壮大な自己発見の物語でもあることを軸に置いて、歌詞を作っていきましたね。最初のバグパイプも中世のバイキングをわかりやすく想起できるかなと思って入れてみたり。

Yosh　僕らも「MUKANJYO」には角笛を入れようとしたんですけど、曲の雰囲気に合わなかったんですよね。でもバグパイプは思いつかなかったなー！

Jean-Ken　あとは、Yoshが「やっぱりMAN WITH A MISSIONだな」と言ってくれた通りで。僕らここ最近はさまざまなジャンルの音楽を実験的に入れてみたり、いろんな方とコラボしたり、ある意味で背伸びするくらいたくさんのチャレンジをしてきたから、今回はちょっと立ち返ろうかなって。これまでの経験を吸収したうえでマンウィズらしいバンドサウンドを自然と鳴らせたと思うんですよね。ハードでヘビーなロックにミクスチャー感を足した、自分たちの原点のようなサウンドになっています。

──「ヴィンランド・サガ」は海外からの反響も大きい作品ですよね。

Yosh　ものすごく人気で、翻訳版も普通に売っているくらいですしね。僕の高校時代の先輩でレスリングをやってた超マッチョな白人がいるんですけど、「お前『ヴィンランド・サガ』のオープニング歌ってんのか!?」みたいな感じで何年越しかに連絡をくれて。すげえ熱く語られましたもん（笑）。

Jean-Ken　ワールドワイドに注目されてるよね。確か南米でも翻訳されてたし。テーマがいいんですよ。ああいうバイキングものって、西洋の人も共感しやすいと思う。日本人がどうしてもNHKの大河ドラマを観てしまう感覚と一緒で。「ゲーム・オブ・スローンズ」とかも彼らにとっての大河なんですよ。

──最後に、12月にチームスマイル・豊洲PITで行われる対バンに向けてひと言ずつお願いします。

Jean-Ken　本当に楽しみで仕方がないです。10年くらいの付き合いになる戦友の1人でもあるので、同じステージに立てるのは感慨深い。ツアーってお客さんと一緒に楽しむものだと思うけど、個人的にはYoshとまたライブができることがすごくうれしいんですよね。

Yosh　前に共演したときはチームスマイル・豊洲PITもまだなかったでしょ。新しい場所でやれるのもうれしいんですよ。新しいものを作るメンタリティがお互いにあって、「ニュージェネレーションに対しての準備はできたよ」っていう時期に来てる気がするから。思いきりお互いのロックをぶつけ合うタイミングなんじゃないかなと思うし、すごく楽しみですね。そのきっかけをくださったマンウィズに感謝してますし、もちろんもっと先へ行きたいと思ってます。