やりたいことに挑戦し続ける精神
──お互いの出会いについても聞かせてください。
Yosh 僕は大学を卒業して日本に帰ってきたタイミングで音楽をやろうと決めたんですけど、右も左もわからないんで、とりあえずライブハウスに片っ端から行くしかないじゃないですか。いろいろなバンドを観に行っていた中、運良く出会えたのがマンウィズだったんですよね。自分たちでカルチャーを発信している姿に衝撃を受けました。で、ライブを観させていただくにつれて、「ビジョンがハッキリ見えるバンドは日本にもいるんだな」と、心の支えになっていたところがあって。
Jean-Ken 僕も「ロックバンドはこれだけのことができるんだ」っていうのをまざまざと見せつけられた時代の音楽が好きでしたからね。例えば90年代はもっとロックバンドに勢いがあったので、「ロックミュージックというものはあそこまで行き着ける」と自分たちの未来絵図として描いてたんです。こういう本音が一番素直に出ちゃうのが同じようにバンドをやってる友達や仲間だったりするので、本当にみんなで大風呂敷を広げて語り合っていましたね。懐かしい気持ちもあるけど、今も思ってることは変わってないでしょ?
Yosh 変わってないですね。当時、お酒を飲んでるときに「ロンドンのウェンブリー・スタジアムでライブをやりたいんだよな」っていう話になって、それを勝手に今も自分の夢にしちゃってるんで。どこかのインタビューで初めて話したときに鼻で笑われたことがあるんですけど、「俺は行くんだ!」って感じで「世界制覇したい」とか昔からバンバン言ってたんですよ。で、いまだにスタジアムに立つ未来が見えていて。ウェンブリー・スタジアムと言えば、僕の中ではQueen、そしてデイヴ・グロール(Foo Fighters)が新しいウェンブリーでやったライブの印象が大きいですね。「あんなに素晴らしい瞬間は二度と訪れないんだろうな」と思ってしまったりする中、Jean-Kenさんは「また新しい形で経験できるんじゃない?」みたいな会話をナチュラルに交わせる相手で。「夢を大きくしろよ」と言わずとも、そう教えてくれた先輩かな。
Jean-Ken 照れくさいですね(笑)。
Yosh 言葉に出したことを実現させてるのって、すごく大切で。パンクもそうだけど、誰も信じてくれてない状況だろうが「やるんだ!」と言って実行できる男気みたいなものは、ロックには常になきゃいけないと思いますね。そういう精神を過去から受け継いで、新しいことにも挑戦して、そしてまた先を目指すというような、音楽のトランジッションがすべて見えてるところがマンウィズの尊敬する部分です。
──Jean-Kenさんは今のサバプロの姿勢をどう感じてますか?
Jean-Ken さっき言った通り、昔からケンカまがいのやり取りもありながら、彼の真剣な姿勢を見てるわけですよ。目標にたどり着けなかったり解散してしまったりするバンドが大勢いる中、サバプロは確固たる意志を持って現在のポジションを築いてるし、ずっと聴かせてもらってるけど、作り上げる音楽がブレずにカッコいい。いろんなものを吸収しながら突き進んでるのを見ると、勇気も刺激ももらいますよね。同じような言葉や熱を発してたYoshが結果を残してる、今しっかりステージに立ってること自体にジーンとくるというか。アーティストとしてじゃなくて、1人の男として。
Yosh ありがとうございます。僕らは常に新しい要素をサウンドに取り入れてきたんですけど、今は何をやってもサバプロと受け入れられるようになったと思うんですよ。やりたいことに挑戦し続けてきたらこうなった感じなんですけど、マンウィズもそうじゃないですか?
Jean-Ken 本当にそう。Yoshを見てて感じるのは、いつも恐れずに本質を曝け出してるから臆さずこういうことが言えるんだろうなって。だいたいの人は本質じゃなくて側で見て、「これはこうあるべきだから自分たちの色はこうで、それが一番の強みなんだ」みたいに閉じこもっちゃってて、逆に「怖くないのかな?」と思うんですよね。だけど、その点でYoshは「いや、ダサいものはダサいし、カッコいいものはカッコいい」「自分でカッコいいと思ったらやるんだ」という感覚を昔から持ち合わせていた気がするので。そこが肝じゃないですかね。だからこそ、ジャンルレス。そもそも「ジャンルなんて誰が決めたの?」という話ですし、周りに決められる必要もない。縛られずに自由にやってるからこそ、可能性が広がってきてるんじゃないかな。
Yosh うわー、お酒飲みたくなってきた。2、3杯いるわ、これは!(笑)
Jean-Ken ははは(笑)。マンウィズも結局根っこにあるのはロックの精神で、「これカッコいいんじゃない?」というのを素直に出せている感じなので、そういうバンド、チームにいることはすごく幸せだなと思いますね。
Yosh うちのバンドも最近は「これやったことないよね?」という言葉がスタジオでよく出てくるんですよ。昔は誰かがアイデアを出しても「いやそれは……」とカットしちゃってたことが多かったけど、今はメンバーの間で極力「それ、やってみたことないからやろうよ!」と言うようになっています。
Yoshは憑依型
──互いにシンパシーを感じる面が多いように感じますけど、逆に真似できない、嫉妬するみたいな部分は?
Yosh 僕は絶対に声を真似できないボーカルが好きなんですよね。まさにJean-Kenさんはそこに当てはまるんですけど、英語のユニークなイントネーションとか、とても真似できないと思います。あと、ギターを弾いてるときのリズム感も僕にないもので、聴いてて気持ちよくて。
Jean-Ken へえー、うれしいな。Yoshのボーカルも魅力的でうらやましいよ。勝手な思い込みかもしれないけど、けっこう憑依するほうだよね? 歌詞に自分を出しつつ、それ以上に何かが憑依してるというかさ。
Yosh そうですね、それに近いかもしれません(笑)。
Jean-Ken そういうボーカルが好きなんですよ。昨今だと、俳優さんや歌い手さんの人格を気にしがちなところってあるじゃないですか。でも、僕にとってはそれが本当にどうでもよくて。無駄というか、ピュアじゃない。ステージ上でその人がどれだけのものを憑依させて、表現を見せつけるかのほうが楽しいし、観てて気持ちいいんです。「やっぱりこれだよね!」と思う。
U2でも来たのかよ!
──それぞれ海外でも活動されていますが、最近の海外での経験で面白かったことはありますか?
Yosh ロンドンのカムデン・タウンのストリートは楽しかったですね。道を歩いてると、「これぞパンクの本場だ」みたいな感覚になるんです。店に入ると意外とそうでもなかったりするんですけど(笑)。
Jean-Ken カムデンは古きよきロンドンの場末な感じがあっていいよね。海外の都市って圧倒的にカルチャーが違うし、自分が読んでた記事の内容とかを直に体験できるのはうれしい瞬間で。特にイギリスなんかは音楽とカルチャーがものすごく密接に結び付いてて、みんな口には出さないけどそれにすごくプライドを持ってたりするから。
Yosh あー、間違いない。品がとてもありますよね。
──サバプロは9月に行った初のイギリス公演が大盛況だったそうですね(参照:Survive Said The Prophet、「俺たちの夢」初のイギリス公演で現地ファン魅了)。
Yosh こんなにサバプロの音楽を求めてもらえるなんて思わなかったです。やっぱり行ってみないとわからないことはたくさんありました。メンバーのIvan(G)が「お客さんが俺よりも歌詞知ってたぞ」って言ってきて(笑)。
Jean-Ken 海外のリスナーってすごく歌詞を覚えてくれるよね。僕らも9月に5年ぶりの北米ツアーをやったんですけど、楽しかったです。チームががんばってくれたおかげもあって、どこの会場もほぼ満員でライブができたし。メキシコが特にすごかった!
Yosh 「メキシコが熱い」ってみんな言いますよね!
Jean-Ken マジでエグかった。「U2でも来たのかよ!」ぐらい盛り上がってたから。怒号みたいだったよ。500~600人のハコなんですけどね。それこそ全曲の歌詞を知ってる状態だったし、みんな歌ってて「お前ら、本当に歌聴いてんのか?」って(笑)。
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日本語で歌うことになったきっかけ