自分たちも楽しむし、お客さんも楽しませる

──今回、ツアー全体を通してのテーマみたいなものはありましたか？

川上つよし　なんか振り切っちゃってる感じでしたね、今回。自分たちも楽しんで、お客さんも目一杯楽しませるっていう。

──20年以上続いているベテランバンドなのに、スカパラはなぜ今こんなに振り切れたライブができているんでしょうか。

大森　いつも思ってるのは、やっぱり型にはまらないようにってことなんですよ。これだけ長くやっているとどうしてもスタイルが固まってしまいそうになるんですけど、それはイヤなので、どんどん囲いを外して、楽しいことを入れていこうって。そういう意識が、今こそ必要なんじゃないかと思って。

川上　20年以上やってると、やったことのないことが少なくなっていくんです。それでも「欣ちゃんがステージ前に出ていくシーンってあんまりないよね」「川上も前に出て弾くことってなかったよね」とか、そういうことを思いついたら、気軽な感じでやっちゃおうと。

茂木　確かにね。代々木のライブでも、花道のリフトで上昇したのは川上さんと俺だけだったし（笑）。

川上　ベースとドラムが唯一上昇してるっていう（笑）。

大森　普通だったらホーン隊がバーンと上がるはずなのに。

川上　なんというか、意表をつくのがいいんじゃないかと。例えば特効もあったんだけど。

──ああ、銀テープが飛んだり？

川上　それを今回は頭3曲で使い切りましたから（笑）。

茂木　普通は後半に取っておくだろうっていうのをね！

──あはは（笑）。確かに普通じゃないですよね。

大森　みんながやらないことをやろうって。

川上　これは面白いんじゃないかっていうことを真面目に、一生懸命にやる。中途半端なのが一番良くないんで。それなら攻めて攻めて攻めきりたいんです（笑）。

「安定感なんて知るか！」っていう精神

──今回は、やはりバンドの攻めの姿勢が強く表れたライブでしたね。

茂木　うん。たまに「スカパラのライブはいつも安定して盛り上がりますね」みたいなことを言われたりもするんだけど、そうじゃなくて。「安定感なんて知るか！」っていう、反骨精神みたいなものが自分の中にあったのは確かかな。

加藤　安定してたら盛り上がらないですよ。こっちが普通にやってたら、お客さんにはそういうのがすぐ伝わるし。こっち側が毎回120％の力を出しきって、ようやく「ああ、盛り上がったね」みたいな感じになるんです。だけどそれが毎回だから「安定しているよね」って言われたりする。

大森　いい意味で期待を裏切っていかないとね。それでこそ僕らも楽しいし、お客さんも楽しんでくれるんだろうし。

加藤　1人ひとりが切磋琢磨して「この曲は俺がもっていくぞ」とか「これをやってやるぞ」とか、ステージ上は戦いみたいな感じですからね。それがツアーを通してどんどん加速していったと思います。

お客さんが応援団みたいに思えてくる

──代々木第二体育館は周囲360度が全て客席になっていましたが、演奏していていかがでしたか？

沖　以前ハナレグミのライブに参加したときも思ったんですけど、あの形だとお客さんをすごく近く感じるんですよ。そのときに刺激を受けまくって、スカパラでもやりたいなってずっと思ってましたからね。

茂木　うん、ハナレグミにジェラシー感じたもん（笑）。「もう座席に座っている場合じゃないぞ」って。

川上　第一体育館だとドーンと広くて圧倒される感じがあるんだけど、第二体育館はライブハウスの大きいバージョンみたいな感じなんですよ。

──360度から常に観られているやりにくさはないですか？

大森　なんか不思議なんですけど、気付いたらお客さんが僕らの応援団みたいに思えてくるんですよね。ステージの後ろのお客さんと僕らで、前のお客さんを煽っている感じというか。サポーターを味方に付けて「よし行くぞ！」みたいな。そんな気持ちで演奏してました。

茂木　心強かったよね。だからお客さんも傍観してるんじゃなくて、一緒に演奏に加わっている感じで。

GAMO　頼もしいんですよ。スカパラは360度のステージって何回かやってるんです。日本武道館とか両国国技館とか。

谷中　僕ら360度は結構好きかもしれませんね。バンドの人数も多いからいろんな面を見せられるし。やっぱり楽しいしね。

NARGO　沖さんのピアノの手元が見えることって普通はまずないと思うんですけど、後ろの席に座った方はそれが見えるわけですから。神の手が（笑）。だからいろんな場所でいろんな角度で皆さんに楽しんでいただけたのは良かったと思いますね。