ナタリー PowerPush - クレイジーケンバンド

横山剣が語るライブ論 WOWOW連動インタビュー

「本物の音楽との出会い」をコンセプトに、毎月厳選したアーティストを紹介するWOWOWのライブプログラム「ミュージックスタイルJAPAN」。今月の放送では、クレイジーケンバンドが昨年11月22日・23日に東京・中野サンプラザで行ったライブの模様がオンエアされる。放送はWOWOWライブにて2月19日(日)23:00からで、3月15日(木)23:30からはリピート放送も予定されている。

このライブのオンエアを受けて、ナタリーでは「ミュージックスタイルJAPAN」と完全連動の特集コンテンツを企画し、横山剣(Vo)のインタビューを掲載する。なおWOWOWの番組オフィシャルページでは、インタビューの別バージョンが読めるので、そちらもあわせてチェックしてもらいたい。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 福岡諒祠

ネガティブな部分も全部欲しい

──昨年11月に行われた東京・中野サンプラザのライブがオンエアされます。このライブは剣さんにとってどういうものでしたか?

インタビュー風景

ツアーのタイトルが「NAKAYOSHI 2011」だったんですけど、これは個人的につるんで仲良くするとかそういうことではなくて、音の中でひとつになろうっていう意味ね。何も言わなくても通じ合うというかね。そういう感覚があるバンドがいいバンドだと思うわけですけど、その領域にだんだん近づいてきた感じがします。やっと入口くらいまでは来たかなという、そんな気分のライブでした。

──我々から見ると、クレイジーケンバンドのライブはいつも鉄板で盛り上がりますし、その感覚は常にあるのかと思っていたんですが。

いやー、なんかいい感じになれないまま終わっちゃうときっていうのも、やっぱり時にはありますよね。そういうときはもう打ち上げもしたくないくらい(笑)。その点、去年のツアーはすごくいい感じだったと思います。

──お客さんの反応はやはり気になりますか?

そうですね。気にしないようにしてますけど、内面は興奮したりビビったりしてて、まあそれを楽しんでるところもありますね。ジェットコースターに乗ってスリルを味わうのと一緒で、ネガティブな部分も全部欲しくてやってますんで、そこはもう思ったとおりになってます。「あれ、今日ちょっとお客さん大丈夫かな」みたいなね、そういうのも含めて、「よしライブが終わるまでになんとかしなきゃ!」とかいろんなこと思いながらやってますけどね。

ライブ会場の磁場

──今回、中野サンプラザで2日間の公演を行いましたが、もっと大きな会場を選ばないのは、このサイズのホールに愛着があるからなんですか?

あの、日本武道館ってありますね。僕はあそこでライブをやる前は、こんなでかいところで音が届くんだろうか、いろんなムードやバイブスが届くんだろうかと思っていて。それで試しに1回やってみたら、とんでもなくいい会場だったんです。あそこは渦がある。龍のような、なんだか得体のしれないパワーがあって、そのときに「日本武道館すごい」「すいませんでした」と思ったの(笑)。やっぱり大きさの問題じゃなくて、大事なのはその会場が持つ磁場なんですよね。

──磁場というのは具体的には?

フィラデルフィアソウルとかデトロイトソウルとかサザンソウルとかありますけど、そんなふうに、その土地土地の地縛霊が味方してくれると言いますかね。地縛霊って言うとちょっと怖いですけど、でもまあソウルって考えれば。なんかそういうソウルが背中を押してくれる。あともう一歩のところをグッとね、ターボかけてくれるみたいな。そういう意味ではサンプラザにも武道館にもそれがあるわけですね。あと東京だと渋谷公会堂も好きですね。

漢方薬みたいなライブがしたい

──ライブのセットリストを決めるときに心がけていることはありますか?

そうですね。ネガティブな楽曲も入れることですかね。まあスパイスですよ。甘辛も激辛も酸っぱいのも、なんでも入れて、それで最高のカレーだったりビビンバだったりになればいいやって感じね。そのへんの湯加減というかセンスみたいなものの波長がお客さんとうまく合ったときに、いいライブになるわけです。

──今回のツアーはそのあたりいかがでしたか?

どの会場もいい湯加減でしたね。単に熱狂すればいいとか盛り上がればいいとかじゃなくて、やっぱり感じるかどうかが一番大事で。すごく盛り上がっても、あとに残らないライブっていうのもありますからね。インパクトじゃなくて、2~3日後とか1週間後に思い出してなんか反芻したくなるような、そういうライブが最高のライブだと思います。そのときはそれほど盛り上がってないけど、あとからじわじわ来るっていう。そういう漢方薬みたいな、半身浴みたいなライブができたらいいですよね。

──なるほど。

インタビュー風景

もちろんすごく盛り上げてドヤ顔の場面もありますけど(笑)。でも全部が全部それだとね、ちょっと重い。熱狂だけで終わるんじゃなく、やっぱり最後にちょっとした気まずさっていうか後味の悪さを残してみたりね。まあ男女の駆け引きもそうですけど、最後に一抹の寂しさをわざと入れて「なんだったの、あれちょっと引っかかる」みたいなね。それを残すといいかなと。あ、これ言っちゃうと種明かしになっちゃうんですけど(笑)。

──ライブは恋愛の駆け引きと同じであると。

お客さんに我々のエンタテインメントを一方的に見せるだけじゃなくて、恋愛関係と同じように、ちょっと不安を与えるっていうか。僕らもお客さんの反応を見て不安になったりもするし。そこはお客さんと演者の間の勝負だったりするんですね。

「いいなあ」と思うライブはみんな長い

──クレイジーケンバンドのライブはいつもボリュームたっぷりですよね。それはやはりお客さんへのサービス精神なんですか?

いやあ、ファンサービスなら2時間でいいと思うんですけど、自分たちへのサービスというか、自己満足も含めての3時間ライブだったりするんです。ちょっとすいませんがお付き合いください、みたいな。それで自分たちへのサービス=お客さんへのサービスにもなってたら最高ですよね。

──自分たちが楽しみたくて、という部分もあるんですね。

そうですね(笑)。昔は働きながら休日にやってたことを、今は毎日できてるわけです。レコーディングだってそうだし、取材もツアーも、昔は全部休み取ってやってたことなんで、今それが毎日できるっていう。そういうことに感謝しながらやっていきたいですね。

──でもお客さんもクレイジーケンバンドのライブは、決して長いとは感じないと思います。

まあ、山下達郎さんとかPファンクの人とかもっと長いですよね。「いいなあ」と思う人はみんな長い。それにつまんないライブは1時間半でも長く感じて疲れるけど、最高のライブは何時間でも観ていたいですから。

MUSIC STYLE JAPAN

ミュージックスタイルJAPAN
クレイジーケンバンド

WOWOW
2012年2月19日(日)23:00~

クレイジーケンバンド

1997年、横浜本牧にて結成。翌1998年にアルバム「PUNCH! PUNCH! PUNCH!」にてデビューを果たし、以後横浜を拠点にライブ活動を行う。2002年発表の「GT」で大きな注目を集め、その後リリースしたシングル曲「クリスマスなんて大嫌い!! なんちゃって♥」「あ、やるときゃやらなきゃダメなのよ。」が立て続けにCM曲に起用。2005年には「タイガー&ドラゴン」が同名ドラマの主題歌に起用され、スマッシュヒットを記録する。ロック、歌謡曲、ソウルなどの要素を貪欲に取り入れた歌ものナンバーは、老若男女を問わず幅広く支持されている。2009年にはユニバーサルミュージックに新レーベル「ダブルジョイインターナショナル」を立ち上げる。2012年2月には13thアルバム「ITALIAN GARDEN」がリリースされる。