Mr.Q|東京の本物のヤバさと意地

夢のあることをやりたい

──そんなアルバムにいとうせいこうさんやBLACK JAXXが参加しているのは面白いですね。

Mr.Q

あははは(笑)。俺、先輩たちといるのが好きなんですよ。冷静に考えてみて、今言ってくれた2組やZeebraさん、浅野忠信さん、HAN-KUNさんが参加してるアルバムってすごくないですか? ここまでいろんな層に刺さる客演がそろったアルバムなんてずるいと思う。でも俺はそういうことがしたかった。

──確かにこのメンバーをそろえるのは大変そうです。

俺じゃなきゃこのメンバーをそろえるのは無理ですよ。みんな本当に分刻みのスケジュールだから、ガラス細工のようなスケジュールを組みました。誰かがちょっとでも対応できなければポシャっちゃうくらいの。俺は裏方をやったこともあるから、そういうこともできる。

──ジェイ・Zやドレーはアーティストであると同時にビジネスマンでもありますからね。

ラップスターとはそうあるべきだと思う。ラップだけイケてりゃいいってことじゃなくてね。今回参加してくれた人たちはみんな超一流だった。限られた貴重な時間の中で最高の仕事をしてくれた。当然遅刻なんてあり得ない。みんなそういう人たち。同時に、カッコいいことをデカい規模でやるには金がいる。そういうのをわかってる奴じゃないと、こういうビジネスはできません。CDのブックレットに載ってるエグゼクティブプロデューサーのあたりを見てもらえばわかりますよ。大感謝ですね。もう十代じゃないし、のそのそ歩いてたらぽっくり逝っちまう。だから蹴っ飛ばして席を奪い取るんです。

──背水の陣で戦う、と。

うーん……背水の陣ってことは、これを外したら終わりってことですよね? そうじゃないんです。若い子みたいにヒリヒリした感じを出すんじゃなくて、もっと楽しみたい。もちろん生半可じゃない気合いでやってますけど、どっしり構えて余裕で楽しんでるのを見せつける感覚と言うか。それに42歳の俺がヒリヒリ感を全面に出したら気持ち悪いでしょ(笑)。

──「夢があることをしたい」というのが今作のキーワードなんですね。

そうですね。だからアルバムの最後をHAN-KUNとの曲「HOPE」で締められたのがすごくうれしかった。湘南乃風はすごいと思うんですよ。俺は彼らが売れる前から知ってるけど、若旦那もRED RICEもすごい男臭い。にも関わらず超人気がある。それって超すごいことだと思うんです。そんなグループで数々の名曲のサビを生んできたHAN-KUNと一緒に曲を作れたのは本当にデカい。生きてるとうれしいことがいっぱいあるなって思いましたね。

俺にしかないものを表現したかった

Mr.Q

──このアルバムにQさんのお母さんのことを歌った「手紙」を入れたのはなぜですか?

この曲は、自分の母が亡くなったときに書きました。去年の9月5日で……もう10年前ですね。ようやく気持ちの整理がついたので、今回入れることにしました。自分にとっては本当に特別な曲だし、これを聴くといまだに冷静ではいられなくなる。ライブでも絶対歌えないと思った。母の死はそれくらい強烈な経験でした。

──「手紙」にはQさんの気持ちが赤裸々に歌われています。

この曲では人と人との温もりを伝えたくて。音も柔らかさを出すために、この曲だけ真空管コンプを使ってマスタリングしました。母は癌だったんですが、還暦を迎えられなかったんですよ。本当に残念です。今の状況を見せたかった。だからやれるときにやれることをやんなきゃって。毎日ドロップキックしてでもチャンスを拾っていきたい。それくらい攻めの態勢にならないと。

──「Let's Get !」には並々ならぬ思いが込められているんですね。

そうですね。俺はこのアルバムで時代に爪痕を残したアーティストのような唯一無二のカッコよさを表現したいと思ったんです。氷室京介さん、甲本ヒロトさん、矢沢永吉さん、玉置浩二さん、桑田佳祐さん、浜田省吾さん、B'zさんのような。

──どういうことでしょうか?

俺の友達に超B-BOYなMISTA SHARRってDJがいるんですが、彼はカラオケに行くとほぼ浜省さんしか歌わないんですよ。それは浜省さんがほかの人にはない、強烈を魅力を持っているからだと思うんです。俺が歌うのは大概、安全地帯とか玉置浩二さんだし(笑)。桑田佳祐さんも常に素敵ですよね。俺も俺にしかないものを表現したかった。名曲を生んでから死にたいんですよ。さっきからデカいこと言ってますけど、別にイキがってるわけじゃないんですよ。けど日和っちゃったらダセえ。これが俺なりの意地なんです。

──熱くてまっすぐなQさんの人間性がそのままパッケージされたような作品だと思います。

Mr.Q

そう言ってもらえるとうれしいですね。音楽って衣食住と違って、なくて死ぬわけじゃない。だからみんなの人生の貴重な時間を、このアルバムのために使ってもらえたらそれは本当にうれしい。音楽ってパワーをもらえるものだと思う。「Let's Get !」というタイトルのあとには、いろんな言葉が続けられるんですよ。「Let's Get Money!」「Let's Get Peace!」「Let's Get Love!」……みたいに。聴いた人がそれぞれで好きな言葉をつなげてほしいですね。そして、みんながそこに向かう原動力になったらうれしいです。

Mr.Q「Let's Get !」
2018年2月14日発売 / MS Entertainment
Mr.Q「Let's Get !」[CD+DVD]

[CD+DVD]
3500円 / VCCM-2111~2

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Mr.Q「Let's Get !」[CD]

[CD]
3000円 / VCCM-2113

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CD収録曲
  1. Let's Get ! feat. マツマイヤー & The Money
  2. Fly High
  3. MATSURI
  4. GEKIATSU feat. 浅野忠信
  5. アイノパノラマ feat. yooco
  6. WeArePartyMonster feat. BLACK JAXX(DJ DRAGON & 武田真治)
  7. Who Is the Best
  8. ブレてる暇なんか無ぇ feat. いとうせいこう
  9. I Like That
  10. 大人のおもちゃ
  11. Like A Sapphire
  12. 衝撃 feat. Zeebra
  13. I Just Wanna
  14. 手紙
  15. HOPE feat. HAN-KUN
DVD収録内容
  • Let's Get ! feat. マツマイヤー & The Money(Music Video)
  • アイノパノラマ feat. yooco(Music Video)
  • WeArePartyMonster feat. BLACK JAXX(DJ DRAGON & 武田真治)(Music Video)
  • ブレてる暇なんか無ぇfeat. いとうせいこう(Music Video)
  • 手紙(Music Video)
Mr.Q(ミスターキュー)
Mr.Q
1993年にラッパーとして活動を開始。ラッパ我リヤやREAL STYLAのメンバーで、ヒップホップ集団・走馬党の党首を務める。ラッパ我リヤは1995年に発表された日本のヒップホップ史に残るコンピレーションアルバム「悪名」に「ヤバスギルスキル」を提供しデビュー。2000年3月にDragon Ashの「Deep Impact」に客演し、2000年4月にメジャーデビューシングル「Do the GARIYA thing」をリリースした。Mr.Qは2016年にテレビ朝日系「フリースタイルダンジョン」に“隠れモンスター”として登場し話題に。2017年3月にラッパ我リヤとして8年ぶりのアルバム「ULTRA HARD」を発表し、2018年2月に2ndソロアルバム「Let's Get !」をリリースした。