Mr.Qソロインタビュー
いとうせいこう、Zeebra、浅野忠信、HAN-KUN、BLACK JAXXという多士済々なメンツを客演に迎えた、Mr.Qのニューアルバム「Let's Get !」。そこには、Qと彼が所属するクルー・THE MONEYによるいまだかつてない規模の企みが秘められていた。ここからはQのソロインタビューを行い、その野望の全貌と、THE MONEYというクルーについて語ってもらった。
活動できるありがたみや面白さを再確認した
──約12年ぶりとなる2ndソロアルバムが完成しました。
去年、8年ぶりにラッパ我リヤでアルバム「ULTRA HARD」をリリースしたんだけど、ひさしぶりにがっちり制作したら、俺自身が完全に制作モードに入ってしまって。我リヤのツアー中もメンバーにすら内緒で、平日はこっそりスタジオに入ってました(笑)。
──「ULTRA HARD」の存在は大きかった、と。
我リヤとしてもそうだけど、俺自身も作品をリリースしてない時間が長かった。だからひさしぶりにツアーをしたり、活動したりして、そのありがたみや面白さを再確認できたんですよね。去年から全然休んでないけど、今は本当に楽しい。
──ありがたみや面白さというのは具体的にどんなことですか?
まずステージに立てることのありがたさですよね。いろんな人たちが関わって、サポートしてくれたからその舞台に立ててるわけで。それをわかったうえでやるのと、知らないでやるのとでは全然違う。あと「フリースタイルダンジョン」に出て、いとうせいこうさんが俺のフリースタイルを聴いてワイプの中でガンガンに乗ってるのを見たときとか(笑)。そういうときに、自分が生きてるということを改めて実感できたんです。
まず曲単位で俺がヤバいと思えるものを作った
──「Let's Get !」はかなりバラエティに富んだアルバムになりました。
今回のアルバムはまず曲単位で俺がヤバいと思えるものを作っていったんですよ。俺の中にはラッパ我リヤとは違う表現がたくさんあるから、自然とこういう作品になっていきましたね。
──Qさんはヒップホップを軸にしていますが、さまざまなジャンルとクロスオーバーした活動をしてきたアーティストですしね。
そもそもジャンル分けという概念がナンセンスだと思うんですよ。だけどクロスオーバーした感覚が行き過ぎるとみんなにわかってもらえない。自分の中では2019年のサウンドを作るような意識でやってました。
──今の時代にラッパーがソロアルバムを出すとトラップのビートを使う人が多いと思いますが、今回はほとんどありません。
トラップももちろん好き。そういうビートもストックの中にはあるし全然作れちゃうけど、今回はあえて人と被らないことをしたかったんです。自分がアルバムを買う側になって考えたとき、手に取るのは今回のような作品かなって。音楽にはいろんなカッコよさがあると思う。俺はロックもレゲエもヒップホップも大好き。「ULTRA JAPAN」でもDJ KENSEIさんの横でMCしちゃったりとかね。遊びにも行ってるし。トラップの攻撃的な感じもいいけど、今回はみんながいろんな場面で楽しめる作品にしたかったんです。
東京の大人のヤバさ
──なぜみんなに楽しまれる作品にしようと思ったんですか?
それは単純にこのアルバムをめちゃくちゃ売りたいからですね。いろんなプロップスの勝ち取り方があると思うけど、俺はこの作品をめちゃくちゃ売ってプロップスを得たいんです。俺は過去に我リヤのアルバムを何十万枚も売ったけど、同じことがもうできないなんて思いたくない。そんなの夢がないと思いませんか? 俺は夢のあることをやりたい。それで同じような思いを持った仲間たちと、去年THE MONEYというクルーを結成したんです。
──THE MONEYとはどんなクルーですか?
メンバーはDJ Panda、マツマイヤー、GAKU-O、KOOLIE a.k.a KUROKO.VVS、俺の5人。インターネット、音楽などそれぞれの畑は違うんですが、業界の垣根を超えてイノベイティブなことをやりたいと一致団結して結成しました。「Let's Get !」という曲は彼らに全面的にバックアップしてもらって誕生したんですよ。アルバム制作もそこからスタートしました。
──「Let's Get !」はMVも強烈ですね。
ランボルギーニ・アヴェンタドールの新型に箱乗りするラッパーなんか日本にいないでしょ? あれ、リースじゃないんですよ。あと札束が出てきますけど、あれも借り物じゃない。撮影現場に2億5000万円用意したんです。
──……えっ?
THE MONEYのクルーたちが持ち寄ったんです。みんな強烈ですよ。今回俺が一番騎として出たけど、今後はもっと強い奴らが出てくる。俺らしかできない勝ち上がり方を、ほかの奴らじゃ絶対できない規模でやっていきますよ。
──日本のヒップホップシーンにはジェイ・Zやドクター・ドレーのような商業的成功者がいませんが、Qさんはそれをやろうとしているんですか?
そうです。逆に、それができないって寂しいと思いませんか? 「Let's Get !」のリリックでも言ってるけど、まさに「限界超えてBET」ってことですよ。お金を生むためにお金を使うんです。渋谷駅前のビジョンも占拠するし、宣伝カーもバキバキ走らせる。MVで着けてる時計のダイヤの数もエグいですよ。本当に“一軒家を腕に着けて歩いてる”ようなもんなんですから。出てる女の子たちもゴージャスでしょ。リースなんか1個もしてないすからね。キャッシュ、車、たくさんのダイヤモンド、すべてリアル物っすよ。カッコつけて遊んで楽しんでる俺らの姿をみんなに見せて、「なんであんなことができるんだろう?」って夢を与えたい。ラップがめちゃめちゃうまければこれができるんだぜって。東京の大人のヤバさって言うか。
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夢のあることをやりたい
- Mr.Q「Let's Get !」
- 2018年2月14日発売 / MS Entertainment
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[CD+DVD]
3500円 / VCCM-2111~2 -
[CD]
3000円 / VCCM-2113
- CD収録曲
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- Let's Get ! feat. マツマイヤー & The Money
- Fly High
- MATSURI
- GEKIATSU feat. 浅野忠信
- アイノパノラマ feat. yooco
- WeArePartyMonster feat. BLACK JAXX(DJ DRAGON & 武田真治)
- Who Is the Best
- ブレてる暇なんか無ぇ feat. いとうせいこう
- I Like That
- 大人のおもちゃ
- Like A Sapphire
- 衝撃 feat. Zeebra
- I Just Wanna
- 手紙
- HOPE feat. HAN-KUN
- DVD収録内容
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- Let's Get ! feat. マツマイヤー & The Money(Music Video)
- アイノパノラマ feat. yooco(Music Video)
- WeArePartyMonster feat. BLACK JAXX(DJ DRAGON & 武田真治)(Music Video)
- ブレてる暇なんか無ぇfeat. いとうせいこう(Music Video)
- 手紙(Music Video)
- Mr.Q(ミスターキュー)
- 1993年にラッパーとして活動を開始。ラッパ我リヤやREAL STYLAのメンバーで、ヒップホップ集団・走馬党の党首を務める。ラッパ我リヤは1995年に発表された日本のヒップホップ史に残るコンピレーションアルバム「悪名」に「ヤバスギルスキル」を提供しデビュー。2000年3月にDragon Ashの「Deep Impact」に客演し、2000年4月にメジャーデビューシングル「Do the GARIYA thing」をリリースした。Mr.Qは2016年にテレビ朝日系「フリースタイルダンジョン」に“隠れモンスター”として登場し話題に。2017年3月にラッパ我リヤとして8年ぶりのアルバム「ULTRA HARD」を発表し、2018年2月に2ndソロアルバム「Let's Get !」をリリースした。