ナタリー PowerPush - MONOBRIGHT

フロントマン桃野陽介が語る「バンドの覚悟」

僕の人生が中途半端なんですよ

──そこで再確認したMONOBRIGHTらしさって、どういうものでした?

僕らがデビューしたときに考えていたのは、MONOBRIGHTってもっとカッコいいニューウェイブバンドみたいなイメージだったんですよね。もちろんニューウェイブだから、へんてこな感じや気持ち悪さっていうのはあるけど、でもあくまで根っことしてカッコよさはあるんだろうなって。でもわかったのは、「自分たちが思っている以上にお前らイタいよ」ってことだった。

──ははははは!(笑)

「お前らイタいやつらなんだから、イタいなりに楽しめよ」っていう。カッコよさとかクールさとか、そういうのを求めてもしょうがないよっていう。イタいんだからイタいなりの歌詞を歌って曲を作るっていう。僕は小学校のときからお姉ちゃんっ子で、光GENJIみたいなアイドルに憧れながら育ってきて。女々しいところもあるけど、他人から見たらなんかバカバカしくて、それがすごく楽しいと思ってもらえるようなところがあると思ってるんです。そういうふうに、自分が好きだったアーティストのように強く残るものを作れればいいなと思ってて、そこを今は噛み砕いてバンドとしてデフォルメして表現してる感じです。

──なるほど。結局自分はこういう人間なんだっていうことに気付いた。

そうなんですよ。背伸びをしなくなったということですね。

──アルバムの「MONOBRIGHT three」に関してなんですけれど、これ、かなり一筋縄ではいかない曲順になってますよね。エモと変態が交互に訪れる感じというか。

あっはっは(笑)。まあ確かにそうですね。

──そういう曲順を意識していた?

それはそう、まさにその通り。奇数曲を歌モノにして、偶数曲に「うわ、MONOBRIGHTらしいな」とか「うるさいなあ」というのを入れましたね。1つの感想だけで納得して終わらせたくないというのがあって。「結局なんなんだよ、心揺さぶられるわ」みたいなところを意識しました。

──そうそう、どっちつかずで蛇行する感じっていう。

真剣なんだかフザけているんだかわからない中途半端感みたいな。それって、僕の人生そのものなんですよ。男前でもないけど、ブスすぎでもないとか、頭がいいわけでも、運動ができるわけでもない。そういうどっちつかずみたいな人生で、どっちかずの人間だったので。それが強烈に出る方法はないかみたいことを考えたし、「MONOBRIGHT three」には、そういう自分自身の人間性が出た感はありますね。

自分の憧れをちゃんと人に伝えたい

──アルバムのリリース時のコメントで、「あらゆる覚悟が出来た作品になりました」と言っていましたよね。その“覚悟”ってどういうものだったんでしょうか。

桃野陽介

それも30代になったということですね。その上で音楽をやりたいか、やりたくないかっていうところで。やっぱり「やりたい」っていう。

──この先も音楽人生が続いていくという覚悟。

ほかの仕事ではなく音楽を選ぶっていうことも悩んで、むしろ音楽しかできないんじゃないの?っていう自問自答があって。そこに対してのバンドの答えっていうのを1つ出した形だったので。

──音楽人生というテーマでいうと、MONOBRIGHTは北海道から出てきたバンドなわけで。そういう意味では、背中を見せてくれる同郷の先輩はたくさんいますよね。

そうですね。なおかつ自分の好きな音楽も多かったので。やっぱり北海道だと怒髪天、ブッチャーズ、eastern youthっていうのが僕らの世代がバンドをやるきっかけだったし、目指すところだった。そういうバンドが先にいて、バリバリ音楽をやっているという意味ではもちろん背中を押される気持ちもあって。そういう人たちへの憧れをちゃんと人に伝えたいという意味で「youth」って曲を作りましたし。

──ブッチャーズの吉村さんが亡くなったのは非常に残念なことですけれども、考えてみれば吉村さんって最後までずっと音楽を作り続けていた、人生の最後の一瞬までミュージシャンだったんだなって思いました。新作も素晴らしかったですからね。

すごくよかったですよね。すごく不思議な人だなっていうのはいまだに思います。亡くなった感じがしないっていうか。音楽の力が宿っている分、生き生きとしているというか。吉村さんが亡くなったあとに怒髪天の増子さんとしゃべる機会があったんですけれど、(彼は)こんなタイミングで死ぬと思ってないからずっと曲を書いていたんだなっていう感じだったのかなって話をして。死ぬことすら忘れているような人なんだろうなと。だからまさに最後の最後まで音楽の人だなって思いますね。そこに圧倒されるというか。人類のルールとか無視して「やっぱり生き返るわ」とか言いそうな人だし(笑)。そういう不思議さもありますね。

MONOBRIGHT ONE MAN LIVE 2014「BRIGHTEST ZEPP~飾りじゃないのよ眼鏡は~」

2014年3月2日(日)東京都 Zepp Tokyo
OPEN 16:30 / START 17:30
前売 3300円 / 当日 3800円(※ドリンク代別)
チケット一般発売中
<問い合わせ>
VINTAGE ROCK:03-3770-6900(平日12:00-17:00)

ニューアルバム「MONOBRIGHT three」 / 2013年11月13日発売 / 2500円 / アミューズ / ASCU-6100
ニューアルバム「MONOBRIGHT three」
収録曲
  1. 風街ロマンスパイダー
  2. OYOVIDENAI
  3. youth
  4. トライアングリー
  5. 色色
  6. アイドル
  7. 妄想難破奇譚
  8. 空中YOU WAY
  9. ブランニューウェーブ
MONOBRIGHT(ものぶらいと)

2006年に桃野陽介(ロック歌手)、松下省伍(G)、出口博之(B)、瀧谷翼(Dr)の4人で結成。2007年7月にシングル「未完成ライオット」でメジャーデビューする。2010年にはヒダカトオル(ex. BEAT CRUSADERS)を正式メンバーとして迎え、2012年には全新曲構成のアルバム「新造ライヴレーションズ」のライブレコーディングを敢行するなどさまざまな挑戦を展開。2012年11月にはアニメ「銀魂」のエンディングテーマ「ムーンウォーク」をシングルとしてリリースする。ヒダカ脱退後の2013年にはデビュー初期と同じ白ポロシャツと黒ブチメガネというユニフォームに戻り、同年11月にアルバム「MONOBRIGHT three」を発表。2014年3月2日にバンド初のZepp Tokyoワンマンライヴ「BRIGHTEST ZEPP~飾りじゃないのよ眼鏡は~」を控えている。